ブログ 起業家のための日本進出ガイド

起業家のための日本進出ガイド

以下の記事は、Adjustが発行した『LTV Magazine』(Issue 03 / 2020) の掲載記事 “An Enterpreneuer’s Guide to Japan” の日本語版です。オリジナルの英語版はこちらをご覧ください。

日本市場への参入を狙うなら、今がチャンスです。GDP世界第3位である日本は購買力が強い一方で、スタートアップが盛んな他の国々に比べてビジネスコストが低いことで知られています。ジャパンベンチャーリサーチの直近の調査によると、スタートアップへの投資は2012年の645億円から2018年は3,880億円にまで上り、日本のテック投資が急増しています。さらに、日本への参入を目指す外国企業を支援するJETROや、スタートアップを積極的に支援する政府主導のJ-Startupなど、起業をサポートする体制が整っています。その中で、メルカリSmartNewsなどの日本生まれのユニコーン企業がEコマースおよびニュースカテゴリーでそれぞれ大幅な成長を遂げています。

業界をリードしているひとつが、ゲームのライブ配信およびコミュニケーションアプリを提供するMirrativ(ミラティブ)です。同社は200万人を超えるユーザー数を誇り、その業績は業界で群を抜いています。今回『LTV Magazine』は、ミラティブのCEO兼創業者である赤川隼一氏にインタビューをしました。赤川氏はわずか2年間で50億円超の資金調達を行った実績を持ち、日本のスタートアップ業界をリードする起業家として活躍しています。この記事では、 赤川氏が考える成功のためのアプローチ、オフラインおよびオンラインでのネットワーキング方法、さらに従業員とのコミュニケーションやオフ時間の楽しみ方まで、さまざまなヒントをお届けします。

赤川隼一氏

CEO兼創業者,

ミラティブ

Twitterの活用

日本に限らず、どの国で起業するにあたっても、適切なスキルセット、ビジョン、経験、そして高い目標を目指す決意が必要です。しかし、日本で必要となるもうひとつの要素は、Twitterを活用してオーディエンスとつながるための取り組みです。実際に、Twitterは日本国内で最も人気の高いソーシャルプラットフォームのひとつで、2019年は、日本の全ソーシャルネットワークユーザーのうち64.1%がTwitterを利用しています。世界規模で見ると、Twitterにとって日本は米国に次いで世界第2位の市場です。2020年4月時点のユーザー数は4,850万人と、全人口の約38%を占めています。

Twitterが日本で人気なのは言語に関係があるかもしれません。Twitterが入力文字数を倍にする以前も、日本のユーザーは漢字を使って少ない文字数でも自由にツイートすることができました。思慮分別が尊重されるこの国では、匿名で投稿できることもユーザーにとってメリットであり、一人で複数のアカウントを持つ人もいます。赤川氏は次のように述べています。「日本でユニークなのは、Twitterユーザーがゲームごとにアカウントを複数持っていることです。よって、ユーザーが自分のサービス専用のアカウントを作るというというのも大いにありえることです」。ミラティブは創業当初から、Twitterで入手した貴重なユーザーデータを活用して成長してきました。

日本のTwitterは、ユーザーがインフルエンサーや企業と頻繁にやり取りを行う開かれたプラットフォームです。スタートアップを成功させるための赤川氏からのヒントは、Twitterを活用してオーディエンスや顧客とつながり、ユーザーが求めるものを自社の戦略に反映させることです。

信頼を築く

日本でスタートアップを始める際に念頭に置いておきたい点を、赤川氏は次のように説明しています。「日本のIT・スタートアップコミュニティは、他の大企業に比べて非常にオープンでカジュアルです。英語が得意ではない経営者もいますが、マインドはすごくオープンで常に新しいビジネスアイディアを探しています」。

しかし、日本に行ってすぐにビジネスを始められるわけではありません。まず必要なのは地盤を固めることです。日本において、仕事やプライベートの人間関係でもっとも重要なのは信頼です。これは、IP(知的財産)を保護することがスタートアップで非常に重要とされている点にも表れています。

赤川氏は、起業の足掛かりを掴むヒントについて次のように話しています。「スタートアップコミュニティで信頼できる人を探し、その人から紹介してもらうことがすごく助けになると思います」。さらに赤川氏は、実際にミーティングをする前にオンラインでコネクションを作ることを勧めています。「日本は圧倒的に『紹介文化』の国なので、元同僚など共通の知人からの紹介や推薦も重要です」。スタートアップコミュニティで一般的なのはFacebookメッセンジャーによる紹介です。

日本での人材採用および資金調達

人材または投資家を探す場合も、Twitterの活用は欠かせません。赤川氏は次のように説明します。「日本のスタートアップにおける最新トレンドは、ソーシャルメディアで直接採用候補者とつながることです。採用においてもTwitterは非常に有効な手段で、志願者が企業のツイートを見て面接を申し込むという逆の場合もあります」。

ソーシャルメディア以外の採用方法として、赤川氏は、日本でそれほど普及していないLinkedInではなく、WantedlyBizReachYOUTRUSTなどの日本固有のプラットフォームおよびスタートアップのサービスを利用することを勧めています。Wantedlyは主に若い世代に焦点を当て、共通のバリューをもとに候補者と企業をマッチングします。YOUTRUSTは共通のコネクションをもとに仕事を紹介し、BizReachは主に幹部級の役職を取り扱っています。

ネットワーキングや投資家を探す場合、赤川氏が勧めるのはIndustry Co-Creation (ICC) Infinity Ventures Summit (IVS) などのカンファレンスです。IVSはもっとも歴史のある招待制のカンファレンスで、テック/SaaS業界の幹部や投資家のコミュニティから多くの人が参加します。新型コロナウイルスの影響で、次回はオンラインでの開催が予定されています。日本のベンチャーキャピタルにアプローチするには、ここでも紹介が重要です。赤川氏は次のように話します。「日本のベンチャーキャピタルシーンは米国に比べて規模が小さいので、すでに資金提供を受けている日本人経営者からの紹介が一番の近道でしょう」。こうしたイベントに参加する場合は、事前リサーチを欠かさないようにしましょう。日本市場について詳しく知ることが、資金調達を成功させるための鍵です。

食事を通したつながり

約16万軒のレストランがあり、その中の230軒(2019年)がミシュランの星を受賞している東京は、グルメな人にとって天国と言えるでしょう。東京の外食シーンは世界的に評価が高く、『二郎は鮨の夢を見る』、『深夜食堂 -Tokyo Stories-』、『海街diary』など、多くの映画やTVドラマのモチーフになっています。

日本を初めて訪れるのであれば、伝説の寿司職人、小野二郎氏が銀座に構える寿司店「すきやばし次郎」の特別な空間の中でビジネスネットワーキングをする、というのもアイディアです。しかし、赤川氏はよりカジュアルな飲食店にこそ日本食を楽しめるチャンスが広がっていると話します。日本の魚介類はどれも新鮮で、一般的な回転寿司店でも手頃な値段で美味しい寿司が味わえます。赤川氏のお勧めする回転寿司店は、渋谷の「美登利」、「三崎港」などです。

前述のとおり、日本のスタートアップシーンは伝統的な企業でよく見られる堅苦しい礼儀のルールなどが少なく、よりカジュアルです。そこで、赤川氏は居酒屋での飲食も日本ならではのビジネスコミュニケーションの形態として挙げています。居酒屋とはお酒やおつまみを提供する庶民的な飲食店で、例えるならスペインのタパスバーの日本版といったところです。赤川氏は、日本人はこうした気軽に入れる居酒屋で「飲みニケーション」を通して仕事上の関係を築くのだと話します。「日本の文化では、一緒に食事をすることやお酒を飲み交わすことがお互いを知る上で大切だと考えられています。私が米国にいた時も、『飲み二ケーション』という単語は米国オフィス内で浸透して、これは世界共通だということを学びました」。

「日本に行ったら必ず食べたいものは?」と聞かれ、広島県出身の赤川氏が何よりもおすすめするのがお好み焼きです。広島名物のお好み焼きは、キャベツ、ネギ、豚バラ肉や魚介類を混ぜてパンケーキ状に焼いたもので焼きソバが入っています。マヨネーズと秘伝のタレに青のり、かつお節をトッピングしていただきます。赤川氏は誇らしげにこう話します。「日本では、お好み焼きは広島風と大阪風の2大宗派に分かれています。どちらにも根強いファンがいて、昔からこの2つはライバル関係にあります」。広島風お好み焼きは東京のどこでも味わえるというわけではありませんが、渋谷の「じゃけんnou」や旗の台「秀」などでは本場の広島焼きが味わえます。大阪風お好み焼きでおすすめは、大阪の人気店の味が楽しめる品川の「きじ」です。

日本最大の野外音楽イベント

日本の魅力は、一年を通して四季折々の美しい自然が楽しめることです。冬に東京に行く予定があり、ウインタースポーツを楽しみたいのであれば、長野まで足を伸ばして極上のパウダースノーと温泉を堪能し、歴史情緒あふれる町を探索するのがおすすめです。春は言うまでもなく桜の季節で、特に大阪の東にある吉野山は桜の名所として知られています。

赤川氏が音楽ファンにおすすめするのは、毎年夏に開催される日本最大の野外音楽イベント「フジロックフェスティバル」です。大の音楽ファンである同氏は、初開催の1997年以降、20回もこのイベントに参加してきました。彼のTシャツコレクションがその歴史を物語っています。フジロックフェスティバルは毎年世界中から人気アーティストが参加しています。ロック界からはボブ・ディラン、イギー・ポップ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、エレクトロ・ポップからはシーア、ロード、ビョーク、R&BやヒップホップではNERDやケンドリック・ラマー、そして日本のアーティストではスガシカオやエレファントカシマシなどが過去にステージを飾っています。雄大な山々に抱かれた自然の中で聴く最高の音楽は、何にも変えられない体験です。

フジロックが開催されるのは新潟県の湯沢町にある苗場スキー場で、東京から新幹線で約90分と都心からのアクセスも良好です。このフェスが有名なのは、イギリスのグラストンベリー・フェスティバルなどで見られるワイルドさとはかけ離れた清潔さと安全さです。開催者、出演者、参加者の誰もがリスペクトの精神を持ってイベントを盛り上げ、その魅力は世界中の音楽ファンを惹きつけています。フェスで盛り上がった後にキャンプではなく宿泊施設でゆっくりと休みたい場合は、湯沢・みつまたエリアのロッジやゲストハウスに宿泊できます。ただし、すぐに満室になるので余裕を持って予約するようにしましょう。また、フジロックは食べ物とお酒が好きな方にもおすすめです。会場にはおいしいメニューを揃えた屋台が立ち並ぶほか、辛口淡麗で知られる新潟のとっておきの地酒も楽しめます。

新型コロナウイルスの影響で、日本を訪れられるようになるのはもう少し先になるかもしれません。しかし、今こそ日本市場のリサーチを進め、ネットワーキングを始めるチャンスです。まずはオンラインでコンタクトを取り、いずれは居酒屋の飲みニケーション、という赤川氏からのヒントを参考に、日本市場への参入を計画していきましょう。

日本での基本的なビジネスエチケット

「日本のスタートアップシーンでは特段大きな気を遣う必要はない」(赤川氏)と言われてはいるものの、日本を初めて訪れる人が知っておきたい基本的なエチケットを紹介します。

挨拶

おじぎは日本文化の中心となるもので、ビジネスシーンでの挨拶として非常によく行われます。ソーシャルディスタンスが求められる今、これは特に顕著に現れているでしょう。おじぎにはいくつかの種類がありますが、足を揃えて腰から体を曲げる形が一般的です。男性の場合は両手を体の横に、女性は体の前に重ねて置きます。おじぎをする時は目線を下げるようにしましょう。

靴を脱ぐ

伝統的な日本食店はもちろん、多くの飲食店で床に敷いた座布団の上に座るスタイルがとられています。お店の入り口で靴を脱ぎ、人の座布団は足で踏まないようにしましょう。脱ぎやすい靴ときれいな靴下をお忘れなく!

食事の席で

全員の食事が揃ってから食べ始めるのがマナーです。食べる時は「いただきます」と言って感謝の気持ちを表しましょう。箸を使う時は、人の方に向かって指したり空中で振ったりしてはいけません。数人で1皿をシェアする場合は、箸の口につける方の反対側で自分の分を取り、皿のあちこちに手を伸ばすのは控えましょう。

乾杯

1本のお酒を皆でシェアする場合、お互いのグラスに注ぎ合うのが日本の文化です。全員のグラスにお酒が注がれたら乾杯をします。

会計

誰か一人が全員の会費を集めてまとめて支払いをするのが一般的です。接待の際は、招待した側が支払いをします。支払いの際は、レジの人にに直接お金を渡すのではなく、用意されたトレイに現金またはカードを置いて店員に渡します。日本ではチップの習慣がないため、混乱を防ぐためにもチップはしないようにしましょう。専任のツアーガイドを雇っている場合は、サービスに満足したらガイドにチップを渡すと喜ばれます。

名刺

人と会う場合は必ず名刺を用意しましょう。英語・日本語併記の名刺だとなお良いです。小規模なミーティングでは5〜10枚、大規模な場合は10〜20枚、カンファレンスやトレードショーに参加するなら1日50〜100枚は必要となることを想定しておきましょう。名刺を渡す時は相手の方向に向けて真っ直ぐ、両手を添えて渡します。テーブル上でスライドするように渡してはいけません。名刺を受け取る時は、軽くおじぎをしながら「ありがとうございます」と言いましょう。

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