Prepare for Impact:機械知能 (MI) とマーケティングの未来

Peggy Anne Salz

2020年3月20日

以下の記事は、Adjustが発行した『LTV Magazine』(Issue 02 / 2020) の掲載記事”Prepare for Impact: Three Marketing Experts Advise on Strategies to Collaborate with Machine Intelligence” を翻訳したものです。このマガジンは無料で公開していますので、ご興味のある方はお気軽にダウンロードしてご一読ください。

ユーザーとの接触が全く行われていない広告が、1時間あたり何百万も存在します。この現状は、消費者が単なる宣伝文ではない、意味のある広告を求めていることの証拠かもしれません。しかし、広告のパーソナライゼーションを大規模に実施するには、数十億ものデータポイント(IoTを構成するセンサーネットワークからのインプットを含めると数兆にも及ぶ)を選別する必要があるため、その作業を人間が行うことは不可能です。

この傾向が、マーケティング業界のありかたに大きな転換をもたらし、マーケティングオートメーション(自動化)に大きな関心が集まっている理由です。IT・コンサルティング会社Cognizantの代表取締役副社長であり、『What To Do When Machines Do Everything: How to Get Ahead in a World of AI, Algorithms, Bots and Big Data』の共著者であるマルコム・フランク (Malcolm Frank)氏は、マーケティングが将来大きく変化していくことを確信しています。「5年後には、人工知能を使用しないマーケティングは、マーケティングと呼べなくなるでしょう」

フランク氏の所見は、今後、自動化がどのようにマーケティングを変えていくかについて物語っています。しかし、そこには同時に疑問も存在します。マーケターの仕事はどうなるのでしょうか?そして、今からどんな準備をしておいたらよいでしょうか?

世界のインターネット、テクノロジー企業のインキュベーターおよび投資家のRocket Internetのマーケティング責任者、エカテリーナ・ペトラコヴァ (Ekaterina Petrakova) 氏にとって、マーケティングの自動化は、業界にとっての「歴史的瞬間」です。

ペトラコヴァ氏は、モバイルアプリの革命とマルチ チャネル マーケティングの進化に牽引されることにより、喜ばれるユーザー体験の創出やデザイン、提供する方法も進化していると説明します。「マーケティングはモバイルのはるか先を行っており、当社の製品には、ユーザーのコンバージョン前にさらに多くのタッチポイントがあります」

エカテリーナ・ペトラコヴァ (Ekaterina Petrakova) 氏

Marketing Lead,

Rocket Internet

マーケターとしてのキャリアをスタートさせた頃、ペトラコヴァ氏はASO(アプリストア最適化)に重点を置き、ネットワーク内でこれらのプロセスとファネルの構築に取り組みました。そして、マーケティングが継続的に良い結果を出すには、他のチャネルとそれが機能する仕組みを深く学ぶ必要があることに気付きました。現在ペトラコヴァ氏はRocketでオペレーショナル マーケティング サポートを率いており、現在の需要と未来のトレンドに深いインサイトを持ちあわせています。

ペトラコヴァ氏によると、消費者は、広告をオンラインやアプリ内、ビルボード、ソーシャルネットワーク全体で見ていると説明します。その膨大な数のクリエイティブやチャネルが存在する中、マーケターは自らの仕事を見直さざるを得ません。ペトラコヴァ氏はこうアドバイスします。「未来のユーザー獲得戦略は、過去のものとは全く異なるでしょう。オンラインかオフラインかによってコンテクストを広告に適合させるだけではなく、ブランドを構築し、顧客が自社の製品を気に入って何度も繰り返しインタラクションが行われるようにすることが重要です」。ユーザーを獲得し、継続させるというこの複雑な目標を達成するには、カスタマージャーニー全体を理解し、編成できる「新しいかたちのマーケター」になることが求められます。「一人ひとりのマーケターがジェネラリストとスペシャリストの両方を兼ね備え、自分が担当するカスタマージャーニーの一部を見つつ、それが全体にどう関係するのかを理解できるようにならなくてはなりません」

未来のマーケターにとってさらに重要なのは、そのカスタマージャーニーを通じて顧客をとらえるだけではなく、データに対してよりオープンになることです。つまり、データ分析の新しいメソッドとモデルを採用して、チーム全員が同じデータとレポートにアクセスできるようにすることが重要です。

中には、チームのデータをあまり社内共有したくないと思う人もいるかもしれませんが、そのアプローチは今後見直していく必要がある、とペトラコヴァ氏は説明します。「マーケターが自力でデータを分析し、ビジネスを成長させられる時代は終わりに近づいています」。未来のマーケターはデータ主導でマーケティングを実施しつつ、広範でかつ戦略的な視野を養う必要があります。

「すでに多くのマーケティングツールが機械学習やAIを取り入れている中、私たちもそれらを必ずしも否定しません」と彼女が述べる一方、マーケターが機械をどのように使って活動したらよいか、という点も議論しなければなりません。まずは「AIが計算できるものは何でも、人間よりはるかに速く処理できるという事実を受け入れる」ことから始まります。同時に、人間らしさが求められる部分は、マーケターの出番です。

幸いなことに、その人間らしさはマーケティングのあらゆる部分で求められています。

優れたブランドやキャンペーンを作り上げる上で核となるのが人間らしさです。ペトラコヴァ氏は次のように述べています。「機械が人間の仕事を奪うというようなシナリオは描くべきではありません。そんなはずはありませんから」。それどころか、未来のマーケターは自動化の進歩の恩恵を受け、自らの仕事を定義し、進む道筋を決めることができます。今日の企業に存在する高い壁によってその仕事が分担されたり、制限されたりすることはありません。なぜなら、カスタマージャーニーを区分して獲得や継続につなげるアプローチは、時代遅れになるからです。「こうした限界が取り払われることにより、未来のマーケターは自らの仕事を定義し、インスピレーションを受けて実験的な取り組みができるようになります。そこからマーケティングの可能性がさらに広がっていくのです」

製品とマーケティングをマスターする

ブラジル最大のカジュアルゲームとソーシャルゲームの開発会社Gazeus Gamesのユーザー獲得責任者、エティエンヌ・デ・ゲブリアン (Etienne De Guébriant) 氏によると、自動化が取り入れられた業界では不満が減少し、より多くのインスピレーションがもたらされます。「今日、我々のUAの手法は少し行き過ぎなところがあります。考えて、表現し、内なるクリエイティビティと判断力を使う機会がなければ、マーケターは疲れ果ててしまうでしょう。オーディエンスの獲得競争がさらに激化する中、未来のマーケターはそれらの要素を養っていくことが求められます」

エティエンヌ・デ・ゲブリアン (Etienne De Guébriant) 氏

Head of User Acquisition,

Gazeus Games

マーケティングが「科学的」になった今、未来のマーケターは、マーケティングの最新技術をマスターすることで、業界で際立った存在になれるだろうとゲブリアン氏は述べています。マーケティングの科学的な部分は今後自動化されていきます。「残りの部分、つまりユーザーにアプリを気に入ってもらうためのクリエイティブや機能の選定に必要な業務は、未来のマーケターが担当します」。しかし、それらの業務をマーケターが単独で行うことはありません。オーケストラの指揮者となるのはマーケターであり、曲と演奏者を選定するのです。「マーケターの業務は収益化、UA、製品、BIを統合したものとなり、それを効率的に行うにはビジョンが必要です」と彼は説明します。「これが、未来のマーケターがAIの力を借りて能力を発揮する部分です」

現在、キャンペーンの最適化と優良チャネルの特定における面倒な作業の多くは、AIが実行できます。自動化を活用して競争力を高めようとする企業が増加すればするほど、自動化による競争上の優位性は低くなるだろうと、ゲブリアン氏は警告しています。そこで未来のマーケターの仕事が鍵となるのです。彼は次のように説明します。「予算の割り当てや、特定のゲームを宣伝するためのパートナーの選択など、多くの決定が自動化できます。しかし、AIがユーザーを動かすような機能が何かを決定することはできません。ゲームプレイヤーの心理学や人の感情の動きに関する深い理解が求められるからです」

人気のあるゲームのユーザーにうまくリーチすれば、つながることができます。未来のマーケターは、製品とマーケティングを組み合わせてユーザーの記憶に残るインプレッションを作り出すのが重要だとゲブリアン氏は言います。「アルゴリズムは優れていますが、マーケターほどそこまで大きな影響はもたらしません」。重宝されるのは「それぞれの優れた部分を組み合わせる」マーケターです。ゲブリアン氏は、人間の理解、感情、心理および常識は全て、全体像の一部であると考えています。「アルゴリズムはこれらの要因の全てを考慮して処理することができません」。実際に、アルゴリズムは時に創造性を阻害し、パターンや予測インテリジェンス、さらには偏見に基づいてユーザーを分類してしまうことがあります。

結果を達成するためのトレーニングと計測

真実のソース(アプローチと結果の証明や反証)とクリエイティビティの両方に大きく貢献するアトリビューションデータの助けを借りてどのように舵取りをするかは、マーケターにかかっています。今年の初め、ゲブリアン氏と彼のチームがBuraco(ブラジルとイタリアで特に人気があるラミーのようなカードゲーム)のマーケティング活動を実施した際は、後者のケースでした。チームはゲームの指標の全てを分析し、「価値の高いユーザー獲得に関連のある1つのイベント」を識別する作業を行いました。

そのチームはいくつものExcelシートをふるいにかける手間のかかる作業により、全てのアプリ内イベントを7つのイベントに絞り込むことができました。チーム自らがテストを行って1つのイベントに決定することもできましたが、実際にはアルゴリズムが使われました。彼は次のように回想しています。「AIの助けを借りて、特定のゲームと地域、OSに合わせて、最も価値の高いユーザーをもたらすイベントを選択することができました。さらに、イベントに対してパートナーのアルゴリズムを使うことで、我々のキャンペーンを最適化しました」

作業は合理化され、結果は並外れたものとなりました。CPIは高くなりましたが(「通常支払う価格の約5倍」)、Gazeusが60日間で投資を回収できることをアルゴリズムが示しました。このゲームの平均ペイアウト期間である120日間の半分です。ゲブリアン氏は次のように説明します。「我々が提供するゲームの中には継続曲線が長いものがあるため、計算により、60日間のアーンアウト期間が極めて優れていることがわかりました。我々は今もそのキャンペーンを実施中で、私のキャリアの中でも最高のパフォーマンスを誇るキャンペーンの1つとなりました」。しかしここでの本当の成果は、マーケターがアルゴリズムを支援することで得られるポジティブな結果です。「アルゴリズムは、適切にトレーニングすれば非常に優れたチームの一員になるのです」

マーケターと彼らが「トレーニング」するアルゴリズムの両方を合わせても、収集するデータとインサイトを合わせたもの以上にはなりません。「ですから、信頼できるデータを提供するアプリ計測ツールと連携することが、今後もマーケティングにとって重要なのです」とゲブリアン氏は語ります。ペトラコヴァ氏も同様に、アルゴリズムが十分に力を発揮し、マーケターが適切に業務を行うための核になるのがデータ計測だと確信しています。「製品をどのように改善するのか?体験をどのように向上させるのか?計測しなければ、これらの質問への答えは導き出せません」。マーケターは、計測データと顧客管理データと組み合わせてキャンペーンとチャネルを編成することで、顧客を呼び込むための包括的かつ戦略的な視野を手にすることができます。しかし、最も優れている答えでさえ常に正しいとは限りません。「人々の関心は常に変化しています。興味を持てば、反対に失うこともあります。未来のマーケターが必要とするのは、人間らしさと、新たな方法を見つけて前例のないことを試みる勇気です」

カルチャーグループに対するマーケティング

人間と機械、アートとサイエンスによって形成される相乗効果は、コミュニティの大規模なアウトリーチを可能にし、マーケターがコミュニティでキャンペーンを主導する能力を拡大、向上させます。ここでのコミュニティとは、(デモグラフィックや居住地ではなく)共通した興味関心によって定義されたユーザーグループを指します。これは、月間4億3,000万人のアクティブユーザーと10万以上のオンラインコミュニティ(サブレディット)を抱える巨大ネットワーク、Reddit, Inc.のブランド戦略責任者であるウィル・キャディ (Will Cady)氏の見解です。

「こうした環境において、未来のマーケターは『人間らしさ』を理解し、認識する必要があります」と彼は説明します。「しかし、人間らしさを生む要因がこの先どのようにコミュニティやカルチャーを形作っていくかについて、規律を形成する必要があります。あるカルチャーを持った対象に訴えかけたいのであれば、相手の言語で話し、その慣例を取り入れなければなりません。そうでなければ部外者として見られ、信用を失ってしまいます」

ウィル・キャディ (Will Cady) 氏

Head of Brand Strategy,

Reddit, Inc.

幸いなことに、Redditのコミュニティは彼らの話を聞き、関わり合い、同じ言葉で話す努力をする運営側に対して、オープンな態度を示しています。Redditのオンラインコミュニティは、共通の関心を持つ人々によって成り立っています。これは、74%のユーザーが、自分が最も好きなトピックに関する情報を得るためにRadditを利用していると回答したことをみれば明らかです。ブランドが成功するためには、ユーザーについてよく理解し、深いつながりを持つことが重要なのです。

「コレクティブな体験を促進するカルチャーにマーケティングが貢献することで、ユーザーとのつながりが深まり、信用が築けます。Redditでは、ツールやターゲティングの手法よりも、コミュニティが最優先されます」とキャディ氏は言います。この一例として、Redditがチャールズ・シュワブと共同で実施したマーケティング活動があります。特定のコミュニティを対象とし、ユーザーとしっかり関わり合い、話を聞くことの重要性を示しました。

キャディ氏は次のように説明します。「チャールズ・シュワブは、Redditのパーソナルファイナンスコミュニティに『明日の成功のために、今日どんなことをしていますか?』という簡単な質問をしました。ユーザーが回答したり他の質問をしたりするとともに、チャールズ・シュワブもまた回答をしてコミュニティに貢献し、つながりと信用を築いていったのです。さらに、広告に関わったユーザーの多くが、ウェブサイトを訪れるという1歩踏み込んだ行動を取っていることがわかりました。ユーザーの興味を引く、関連性のある話題でRedditにアプローチすることで、チャールズ・シュワブは成功を収めたのです」

カルチャーグループに対してマーケティングを実施し、グループの価値観を反映するアクションや広告を展開する企業は、非常に優れた結果を出しています。キャディ氏は次のように述べています。「これの例が、ウェルチのRedditでの動画広告キャンペーンです。我々は、ターゲットオーディエンスをX世代の男性にシフトするために、プロンプトを含む6秒、15秒、30秒の動画広告を使ったエンゲージメントキャンペーンを共同で行いました。プロンプトの質問内容には、『現在の役職名をすごくかっこいいものに変えられるとしたら、何にしますか?』などがありました。X世代の男性に合った特定の関心グループやコミュニティをターゲットにすることで、ブランドの認知度を高めることができました。Redditのユーザーはウィットに富んだ面白い回答で対応し、ウェルチブランドは高く評価され、多くの『いいね』とReddit Goldを受け取りました。カルチャーグループに効果的なマーケティングを実施したことで、最終的に男性のブランド好感度は35%上昇し、ウェルチへの肯定的な感情が94%もアップしました。

自社のブランドと高い関連性があり、勢いがあるカルチャーグループを見つけ出すのに役立つツールは多く存在します。未来のマーケターがまず最初に行うべきことは、コミュニティの規模(メンバーの情熱や関心の高さで定義する)を把握し、その中でアイディアやバリューが広がるスピードを測定することです。キャディ氏は次のように説明します。「アイディアは均等に広まるものではありません。他の目に留まる前にあるカルチャーグループに注目されたりします。アクションを起こせばそこにはチャンスが生まれます。その合図に気づけるマーケターが未来を先取りできるのです」

今後何が注目されるかを見分けられるマーケターには、多くのチャンスが待っています。「コミュニティに合わせてクリエイティブを調整し、興味を引くメッセージを伝えることで、メインストリームになる前にそのコミュニティ内で意見やアイディアが生まれるプロセスに参加することができます」とキャディ氏は語ります。こうしたコミュニティはRedditに多数存在しており、小規模なオーディエンスと信頼を築くことで、大きな結果につながることがあります。「コミュニティへのマーケティングを正しく実施すれば、ブランドが理解・支持され、その規模が大きくなった時に非常に有利になります」

マーケターは、カルチャーの構成要素を初期段階で特定し、それがどう進化するかを予測することができます。キャディ氏は私たちに「最初のステップとして、言語に注目しましょう」とアドバイスします。コミュニティ内でよく使われている言葉やフレーズは何ですか?そうした会話はいつ行われ、そこからコミュニティメンバーの感情がどう変化していますか?人間の直感とマーケティングツールの助けを借りれば、こうした質問を投げかけ、その答えを得ることができます。「未来のマーケターは数百、数千のさまざまなコミュニティのパターンを一度に特定し、ブランドが本当に受け入れられる場所、コンテクストおよびカルチャーを見つけることができるのです」

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