Adjustが「ピープル ベースド アトリビューション」を提供しない理由

Paul H. Müller

2019年9月9日

最近、複数のモバイルアトリビューション企業が、アプリやモバイルWebを横断するユーザーの行動経路を計測する仕組みを「ピープル ベースド アトリビューション」(人をベースにしたアトリビューション分析)として推し進めています。その結果一部のお客様より、Adjustも同様の機能をリリースする予定があるのかどうかとお問い合わせを受けるようになりました。

私たちの答えは明確です。現在提供されている「ピープル ベースド アトリビューション」ソリューションのように、ユーザーデータの販売に依存する機能をAdjustがリリースすることはありません。

以下にその理由を詳しく説明します。

ピープル ベースド アトリビューションの仕組み

まず「ピープル ベースド アトリビューション」の意味とその仕組みについてお話しします。

「ピープル ベースド アトリビューション」の特長は、モバイル端末上で利用されたWebブラウザとインストールされたアプリを紐付けることです。

ブラウザ上では、アプリのようにデバイスID(IDFAまたはGoogle広告ID)が生成されません。そのため、ブラウザにおけるユーザー行動とアプリを横断的に計測するには、ブラウザにCookieが保存され、何らかの方法でデバイスのIDFAと紐付けられる必要があります。

その最も一般的な方法はディープリンクです。

ユーザーがブラウザを介してアプリにディープリンクされる時、そのブラウザにはCookieが渡され、ディープリンクに同一のCookieを付与します。ユーザーがアプリを開くと、アプリはURLからCookie IDを読み、IDFAに紐付けます。

次にユーザーがモバイルブラウザでWebサイトを開いた時は、この保存されたCookieを読んでユーザー行動をIDFAに紐づけることができます。

しかしこの一見簡単な方法も、実際に機能させるにはいくつかの疑わしい選択が必要となります。

まず、Cookieを利用してWeb上でユーザー行動を追跡するのをGoogleとAppleが認めていないのは明らかです。サイトトラッキングの抑止機能であるAppleのITP (Intelligent Tracking Prevention) がバージョンアップされるたびに、ユーザー行動を計測する目的でCookieを用いるのが難しくなっています。さらにAppleとGoogleは、一般的なウェブ計測ツールが分析に必要な仕組みである、サードパーティのドメインにCookieを渡す行為を不可能にしました。

つまり、Cookieを渡すためにはユーザーのアドレスバーのドメインとCookieを送信するドメインが同じでなければならないことを意味します。ユーザーがアプリに遷移する前に、特別なランディングページを通らなければなりません。

あるサイトからアプリにリダイレクトされる前に、数秒待たされるのはどうしてなのか疑問に思ったことはありませんか?

AppleのITPを回避してCookieを渡す仕組みが設定されているからです。

結局のところ、AppleとGoogleは機能的な目的を果たさないCookieを引き続き取り締まっています。ITP 2.2では、AppleはこのようなCookieの保存期間を24時間に短縮しました。

これが2つ目の問題につながります。

もしこのアプリ計測ソリューションが自社アプリにより生成されたデータのみを使用した場合、過去にアプリへとディープリンクされたユーザーを自社のWebサイト上で識別することしかできません。これでは計測できるユーザー数はごく少数です。言い換えると、人をベースにしたアトリビューション計測は、自社のデータのみを使用する場合のほとんどにおいて機能しません。

このソリューションが、モバイルアトリビューション企業が販売する製品であることを考えてみてください。ごく一部のユーザーにしか対応しないツールに、サービス料を支払いたいと思うでしょうか?答えはおそらく「No」です。そこで、より多くのユーザーに対してピープル ベースド アトリビューションが機能するためCookieが必要となるのです。

では、それらのCookieはどこから集めるのでしょうか。

ユーザーデータの活用

ピープル ベースド アトリビューションを提供するモバイル市場の特定の企業は、十分な網羅性(カバレッジ)を確保するために全てのクライアントのデータを活用する必要があることを認識しています。

これは、計測するアプリユーザーがディープリンクをクリックする度にCookieがユーザーに渡され、端末IDとのつながりをデバイスグラフ(モバイルWebとアプリをまたがっても、それを利用するユーザーを識別するデータベース)に保存することを意味します。

そして、ここで問題が発生します。

ユーザープロファイルは単一アプリの情報としては保存されず、代わりにアトリビューションプロバイダーが所有および操作するデバイスグラフの一部になります。

ユーザーがアプリをアンインストールした場合、またはユーザーがアプリのデータ共有規約に同意しない場合も、このグラフに保存されたデータは残されたままです。

GDPR(一般データ保護規則)では、データプロセッサーコントローラーを厳密に区別しています。プロセッサーは、アプリパブリッシャー自身のサービスの拡張であるかのようにユーザーデータを取り扱います。複数のパブリッシャー間でデータを使用したり、第三者にデータを販売したりすることはできません。コントローラーはエンドユーザーと独自の関係を持つ必要があり、ユーザープロファイルの構築など、いわゆる「正当な利益」に該当しないアクションについてはユーザーの同意を得る必要があります。

もし、アトリビューション企業がユーザーグラフにユーザー情報を追加して顧客に販売するなら、ユーザーがそれに同意していることが大原則です。

ここで、あなたがユーザーとして広告をクリックし、アプリにディープリンクされることを想像してみてください。すると、聞いたことのないアトリビューションプロバイダーのポップアップが表示され、あなたのプロファイルを作成してユーザー行動を計測することに対する許可を求められました。

このような表示が出たら、コンバージョン率に壊滅的な影響を与えるだけでなく、カバレッジを生成するのに十分な同意率を得ることは困難を極めます。特に、ユーザープライバシーやユーザー行動の計測に関する話題が最近注目されていることを考慮すると、アプリはユーザーに悪い影響しか与えません。

知らない間に収集されるユーザーデータ

では、ユーザーデータを販売する企業は、このジレンマをどう解決するのでしょうか?

答えを言うと、このジレンマは解決できません。これらの企業は、ユーザーデータを収集する許可をユーザーに求めていないのです。それどころか、行動を計測していることすらユーザーに知らせていません。

一部の企業にとってGDPRを無視したり、見て見ぬ振りをするのは簡単ですが、今後CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)が施行されるとなると、そうはいきません。ここで合法性は一旦置いておいて、消費者の観点から少し考えてみましょう。

あなたは、ユーザーへの通知や同意なしに、未知数の第三者にユーザーデータを販売する計測ツールを使っているとします。その件について例えばワシントン・ポストから取材の電話があった場合、法律上の細かい規定について本当に議論できるでしょうか?

誰も知らなければ問題ないと思うかもしれません。しかし、ピープル ベースド アトリビューションを提供するプロバイダーの中には、営業プレゼンにおいて、デバイスグラフに最も多くのデータをもたらすアプリのアイコンを誇らしげに掲げるところもあります。

結局のところ、データはどこからか収集しなければならないのです。

全ての問題解決にはならない

ここまでさまざまな問題点をあげてきましたが、ピープル ベースド アトリビューションの背後にあるテクノロジーには闇の部分があるという事実をひとまず置いておきましょう。

マーケターは、ピープル ベースド アトリビューションにより、ユーザージャーニーのインサイトが得られるかもしれませんが、各企業のニーズに対応する機能となりうるでしょうか。

例えば、アプリに付随するモバイルWebサイトを運営していない場合、またはWebベースの広告インベントリーを大規模に運営している場合には、機能のメリットが全くありません。しかし、それから取得されるユーザーデータはグラフに追加されています。

Webをベースにした施策が多いモバイルアプリの場合には、真の用途があります。しかし、現時点では、ピープル ベースド アトリビューションを提供する企業のほとんどは、本格的で実用的な分析ではなく、アプリからWebへ、またその逆に流れるユーザーの簡略化された図式を提供するだけです。

ピープル ベースド アトリビューションは、これが全てのマーケターが抱える問いに対する最終的な答えであるかのようにもてはやされています。しかし実際には、同じデバイス上でユーザーがWebからアプリに切り替える際に発生する小さな問題のいくつかを解決するに過ぎません。例えば、IDFAとCookie情報を紐づけるピープル ベースド アトリビューションはクロスプラットフォーム間の計測に利用可能ですが、デバイス間の計測はできないのです。

また、それをより便利に活用できたとしても、依然として非常に大きな核心的問題が残ります。

偉大な力に伴う責任

アトリビューション企業がユーザーの個人データを販売することはあってはなりません。

Adjustにとって、これは当たり前のことであるとともに、会社の事業理念の一つでもあります。

Adjustは、アトリビューション計測は法律に遵守するだけではなく、ユーザーのプライバシーを最大限に尊重して行われるべきだと考えます。

ピープル ベースド アトリビューションに使用される現在のテクノロジーはこれらの条件をクリアしないため、今後のAdjustの事業計画の一つとして策定されることはないでしょう。

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