「競り勝ち、突破し、そして新世界へ〜アプリ競争時代のスケーリング戦略〜」と題されたAdjust Ignite Tokyo 2025でのパネルディスカッションは、競争の激しいアプリ市場におけるグロース戦略に焦点を当て、各業界のトップリーダーがその知見を共有しました。
パネリストとして登壇したのは、マッチングアプリ業界で10年以上の経験を持つベテラン。toC課金ビジネスにおいてLTVとCPA最適化を追求してきた実績を持つ、株式会社タップル 代表取締役社長 平松 繁和氏。美容医療プラットフォームを約8年間運営し、シリーズCで累計40億円を調達したスタートアップの代表。プロダクト立ち上げからマーケティングまで幅広く手掛ける、株式会社トリビュー 代表取締役 毛 迪 氏。リクルート、広告代理店、事業会社を経て、現職ではマーケティングと広報を統括。スキマバイト市場の開拓に尽力するシェアフル株式会社 CMO 浜野 善輝 氏の三名でした。MCはAdjust General Managerの佐々直紀が務めました。
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各社のサービスが、ユーザーに選ばれる理由
平松氏が率いる国内最大級のマッチングアプリ「タップル」は、サービス開始10周年を迎え、会員数は累計2,000万人を突破。特に20代の若年層に多く利用されており、気軽な出会いを求めるユーザーに支持されています。同氏は、「タップル」の開発・運営について紹介しました。
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株式会社トリビューの毛氏は、美容整形から美容皮膚科、審美歯科まで多岐にわたる美容医療の分野で、日本は世界で4番目に大きな市場規模を持つことに言及。「トリビュー」が、この大きな市場で、月間40万人に利用されNo.1の美容医療プラットフォームの地位を獲得している理由として、リアルな施術経過やドクター別のレビューなど、他では得られない情報の提供にあると述べました。
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シェアフル株式会社 浜野氏は、登録ユーザー数は1,000万人規模で、主に30代以下の若年層が利用するというスキマバイトのマッチングサービス「シェアフル」を紹介。単発アルバイトだけでなく、長期就業の採用前の見極めとしても活用されているなど、新たな動きについても紹介しました。
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ゼロイチの突破口。苦しい時代の立ち上げ戦略
MCの佐々は、三社のリーダーに、立ち上げ期の苦難と、それを突破するために取った戦略について質問しました。
タップルの平松氏は、競合がブラウザベースだった時代に、スマートフォンアプリに特化し、フリック・スワイプといったスマートフォンならではのUXをいち早く導入したことを回想。また、当時「出会い系」と誤解されがちだったマッチングアプリが、安全性の担保のために採用していたFacebookログインの縛りを廃止。安全性を別の方法で担保することで、これまで利用できなかった層を取り込めたこと。これにより、スマートフォンの普及と相まって、時代がマッチングアプリへの安心感を後押したと加えました。
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トリビューの毛氏は、マネタイズ前の初期段階で、ユーザーが本当に知りたい「施術の経過情報」や「ドクター別のレビュー」に特化して口コミを集め、差別化を図ったといいます。当時はSNSの匿名アカウント界隈に入り込み、オフラインイベントでファンを作り、ユーザーに共感していただきながらコンテンツを増やしていくという地道な人海戦術でファンを作り、コンテンツを充実させたといいます。その後、情報収集だけでなく「予約する場所」へのサービス転換でマネタイズを確立し、ユーザー層をライトな皮膚科カテゴリーへ拡大しました。
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シェアフルの浜野氏は、応募から面接、給料支払いまでの長いリードタイムを数日に短縮する「スキマバイト」という新市場を開拓。具体的には、手動から自動マッチングへの移行、給料即払い機能などを導入し、レガシーな体制からの脱却を図りました。マーケティングはマス以外をインハウス運用し、ノウハウ蓄積と低CPIを実現。競合であるタイミーの成功事例を参考に、時には差別化だけでなく同質化の判断も必要であったと述べました。
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競合との戦い方とスケーリング戦略
タップルの平松氏は、プロダクトを主軸に、コアターゲットの20代から大きくずらさずに「モア層」の獲得を目指しています。学生証認証機能やシングルペアレント向け表示最適化、独身証明機能など、特定の層に向けたプロダクト改善とプロモーションを展開。ROIやCPIを重視し、常に新しいプロダクトアイデアと媒体を試しています。
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トリビューの毛氏は、競合をGoogle検索やSNSと捉え、「迷わない」「お得」「簡単」「安心」の4つのバリューを定義し、プロダクトをアップデート。ユーザーインタビューや定量調査に基づき、ユーザーが求める情報を提供しています。マーケティングでは、ユーザーセグメントごとにCPAを設定し、ポートフォリオ運用することで大幅な利益改善を実現しました。
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シェアフルの浜野氏は、「コンパウンド型プロダクト」として、ポイ活機能やクーポン機能、クライアント向けサービスを統合。スキマバイトをユーザー獲得チャネルとし、パーソルホールディングス内の他サービスとの連携でLTV向上と実質CPA改善を目指しています。また、ポイ活機能や「超バイト」のようなPR企画がアクティブユーザー増加に貢献しているとも述べました。
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今後のスケーリングとチャレンジ
タップルの平松氏は、「両利きの経営」を実践し、LGBTQ対応アプリやAIキャラクターとの恋愛アプリを既にリリース、今後はAIを活用した仲人のような機能(プロフィール改善提案、アドバイスなど)、海外展開も視野に入れているといいます。
トリビューの毛氏は、短期的には予約プラットフォームとしてのシェア拡大、中長期的には美容医療の総合プラットフォームを目指しています。ウェルビーイング全般(レーシック、再生医療など)へのカテゴリー拡大を計画。マーケティングではAIによる半自動化を目指し、定型業務はAIに任せつつ、クリエイティブ分析などは人が担うハイブリッド運用を構築したいと話しました。
シェアフルの浜野氏は、アクティブユーザーの維持・増加が課題であるとしつつ、ポイ活やクーポン機能など、自身を起点としたコンパウンド型(統合型)サービスによりLTV向上を狙っている。広告運用などではAIを活用し、クリエイティブ改善など人間的な判断が必要な部分に注力し、スキマバイトを超えた新たなプロダクトを推進していくと述べました。
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MCの佐々は、今回の議論を通じて、マーケティングとプロダクトが密接に連携することの重要性が示されたと総括。マーケターが市場の反応からプロダクトのアイデアを生み出し、プロダクト担当者と密に連携することで、競争を勝ち抜くきっかけになると強調しました。
Adjustのアップデートまたは製品についてのお問い合わせは、Adjustの担当者またはjapan-sales@adjust.comまでお問い合わせください。取材のお問い合わせはmarketing@adjust.com までお問い合わせください。
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