ブログ スーパーアプリがもたらすモバイルマーケティング市場の変化

スーパーアプリがもたらすモバイルマーケティング市場の変化

スーパーアプリの代表ともいえるWeChat。WhatsAppのようなコミュニケーションアプリとしてローンチされたこのアプリは、その後、ソーシャルネットワーキングや配車サービス、フードデリバリー、レストラン予約、スマホ決済、ゲームなどの機能を備えた統合プラットフォームへと進化を遂げ、スーパーアプリの原型を形作りました。

WeChatのユーザーベースは、見込み顧客の発掘を狙うビジネスパーソンや友人と会話をする十代の若者、スマホ決済やレビュー機能を利用するレストランオーナーまで多岐に渡ります。

過去10年にわたって市場を独占していた専用アプリとは違い、スーパーアプリのサービスは、複数のアプリカテゴリーを網羅しています。ほとんどの場合、はじめは一つの目的を達成するアプリとして一般に広く普及させ、その後日常生活のあらゆる場面に対応するアプリへと発展させる形をとっています。

WeChatや中国の競合アプリ Alipay、インドのスーパーアプリ Paytmはいずれも高度に設計されており、アプリ内でサードパーティのミニプログラムまたは「アプレット」を提供しています。L'OréalやNikeなどのブランドがこうしたミニプログラムを作成し、スーパーアプリの大規模なユーザーベースに対して直接製品をマーケティングしています。ゲーム会社も軽量バージョンのタイトルを展開し始め、中国では、個人商店がミニプログラムを使用することが一般的になっています。

多くの機能を備えたスーパーアプリならではの売り込みポイントは、1つのツールで複数のタスクやアクションが実行できることです。日常生活のさまざまな用事を済ませるのに、いくつものアプリを使い分ける必要がありません。ユーザー登録や支払情報の入力回数も少なくて済み、ユーザーの手間が省けます。例えば、髪を切りたいと思ったら、サロンの検索・予約・支払いがすべて同じアプリでできてしまいます。その他に、配管工事業者やヨガ講師、スーツの仕立てサービスから家庭教師の検索まで、あらゆることが1つのアプリで完了できるのです。

市場をリードするスーパーアプリ

上記のWeChat、Alipay、Paytmなどの他に、東南アジアには勢いのあるスーパーアプリが多く存在します。GojekとGrabは配車アプリからオールインワンサービスへと進化し、家事から保険まであらゆる機能を提供しています。ベトナムのスーパーアプリZaloは、ビザやその他の公式書類の申請に利用できます。日本のLINEと韓国のKakaoTalkはインターコネクション(相互接続)モデルを採用していますが、スーパーアプリとして位置付けられています。これらのアプリはすべて大きな成功を収めています。WeChatAlipay10億人のユーザーを有しており、Zaloのユーザー数も1億人を突破しました。また、GrabGojekPaytmはそれぞれ90億ドル、40億ドルおよび30億ドルの資金調達を達成し、市場における大きな成長の可能性を示しました。

スーパーアプリはアジア特有の現象?

Google、Facebook、Amazonなどの大手企業は、アジアでそこまでの独占率を見せておらず、中国にはまったく進出していません。そのため、他の地域と比較して、スーパーアプリの開発者が市場リーダーとして台頭できる可能性が高いと言えます。さらに、アジア市場は一般的にモバイルファーストであるため、スーパーアプリが既存のデスクトップのアプリケーションと競合する必要はほぼありません。例えば、銀行のインフラが十分に整備されていないカンボジアとベトナムでは、現金利用からスマホ決済へと直接移行しています。スーパーアプリは、これらの市場に元々存在する非公式経済の「Disruptors(破壊者)」となり、露店や屋台ビジネス、バイクタクシーサービスなどのデジタル化を可能にしました。

投資家は現在アフリカ市場に目を向けており、スマホ決済と配車サービスを組み合わせた新たなスーパーアプリを展開するインフラとユーザーベースを構築しようとしています。ナイジェリアのOpay/ORideやQuickteller、ケニアのSafeBodaやTingg、MTN主導の南アフリカのAyobaなどがそれにあたります。

南アメリカでは、デリバリーサービスとして始まったRappiがスーパーアプリに非常に近い存在です。

欧米におけるスーパーアプリの位置付け

欧米の大手デジタル企業は、スーパーアプリのコンセプトから少し形を変えた戦略を展開しています。Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏は、Facebook、Instagram、WhatsAppをプライベートサービスの相互接続型プラットフォームとして機能させたい、と述べています。インドでは、FacebookとReliance Industries Limitedが連携し、同社が提供する決済機能をWhatsAppに実装しました。また、最近Uberが中東でスーパーアプリの地位を狙うCareemを買収したことで、スーパーアプリとなることを目指していることが推測されます。AmazonとAirbnbも同様の展望を掲げていることを明らかにしました。このようなスーパーアプリ化が進む中、ひとつの興味深い見解が浮かび上がります。デジタルエコノミーにおいて初めて、欧米がアジアを追う構図ができているのです。

Adjustにとってのスーパーアプリとは

スーパーアプリは、モバイルマーケティング市場を変化させる可能性を秘めています。その一方で、専用アプリが競争する場が狭まるのも事実であり、既存の大手企業や専門アプリはユーザーベースを失う可能性があります。しかし、スーパーアプリの台頭により、中小企業は簡単かつ低コストで開発できるミニプログラムやアプレットでモバイル市場に参入する機会を得られます。

ゲーム会社では、限定バージョンのゲームをスーパーアプリ内のミニプログラムとして公開し始めており、ミニプログラムのユーザーはやがてフルアプリへコンバージョンし、新規ユーザー獲得の流れができます。

また、スーパーアプリはユーザー獲得の性質をより広義的に変化させます。多くの会社にとって、「初回のコンバージョン = アプリインストール」ではなくなるでしょう。ユーザーは、スーパーアプリ内にあるミニプログラムかアプレットでアプリを使い始めています。この場合、ユーザー情報はスーパーアプリを介してすでに取得済みのため、ユーザー登録のイベントも現在と同様の意味を持たなくなります。また、スーパーアプリ内ではアンインストールという概念もないため、離脱に関しても新たな定義を設ける必要があります。

さらに、スーパーアプリがどの程度広告インベントリを提供するかは今のところ不明です。WeChatとAlipayでは広告主がプロフィールを作成できますが、マーケティングされる製品は外部アプリを介さず、スーパーアプリ内でのみ販売されています。

いずれにせよ、スーパーアプリはビジネスの点からもコンセプトの点からも無視できない存在です。ユーザーの生活を便利にする機能を集約したアプリモデルに対して、欧米市場がアジアと同様の、またはそれ以上の道のりをたどるとしたら、モバイル市場の新しい形が生まれることとなるでしょう。

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