ブログ スーパーアプリの現状:2022年の統計データとトレンド

スーパーアプリの現状:2022年の統計データとトレンド

スーパーアプリは、西欧諸国では依然として新しいトレンドであるものの、アジアやアフリカではすでに主流となっており、欧米においてはさまざまな機能を備えた自己完結型のWeb・モバイルアプリが注目されています。中国のWeChatから中南米を中心としたRappiまで、スーパーアプリは多くの国で人々の生活に深く根付いた存在へと成長し、デジタル金融サービスやオンラインマーケットプレイスなど、あらゆる分野に革新的な影響を与えてきました。この記事では、スーパーアプリに関する最新の統計データを紹介するとともに、2022年以降の展望を分析します。

振り返り:スーパーアプリとは

スーパーアプリは、メインアプリの内部で動作するサイズの小さいアプリ(ミニプログラムまたはアプレットと呼ばれる)で構成されています。ミニプログラムはアプリストアからダウンロードする必要がないため、1つのスーパーアプリで複数のサービスを提供できるのです。ユーザーは個別のアプリをいくつも起動することなく、1つのスーパーアプリでさまざまなタスクをこなせることから、スマートフォンのストレージ容量を節約できるというメリットがあります。

ほとんどのスーパーアプリには、ソーシャル(SNS)機能、Eコマースのマーケットプレイス、金融サービス、交通サービス、メッセージ機能、デリバリーサービスなどが備わっています。スタンドアロンアプリの開発者の多くは、アクセシビリティを確保するためにスーパーアプリ用のアプレットも制作しています。 さらに、ミニプログラムを搭載したアプリの数は増え続けており、離婚の申請、病院の予約、ビザの申請といった多岐にわたるサービスが利用可能です。これらのサービスを1つのプラットフォームで提供することで、ユーザーは違うアクティビティを行うときにスーパーアプリのエコシステムを離れる必要がなくなり、煩わしさが解消された体験が実現します。

スーパーアプリのテクノロジーは今後さらに発展し、IoT技術、チャットボット、没入型体験がますます強化されると予測されています。スーパーアプリの仕組みに関する詳細については、Adjustのブログ記事「スーパーアプリがもたらすモバイルマーケティング市場の変化」をご覧ください。

スーパーアプリの最新統計データ

世界各国の最新レポートを基に、スーパーアプリの注目データを以下にまとめました。

  • 世界人口の3人に1人がスーパーアプリを利用しています。

  • 英国、ドイツ、米国、オーストラリアでは、消費者の72%がスーパーアプリに関心を持っています。

    内訳は以下のグラフをご覧ください。

  • 上記の調査対象者の90%が「スーパーアプリを利用する理由はその利便性だ」と回答しています。

  • 米国では、ミレニアル世代が最もスーパーアプリに関心を持っています。

  • 英国の顧客は、バンキングアプリよりもPayPalのスーパーアプリを信頼しています。

  • 消費者がスーパーアプリで最も利用したいサービスは、旅行、エンターテイメント、ショッピングです。

  • スーパーアプリに関心を持っている人の最大の懸念事項はデータセキュリティです。

  • ロシアのスーパーアプリ市場は、2025年までに1,340億ドルに達すると予測されています。

  • 最もユーザー数が多いスーパーアプリはWeChatで、12.4億人のユーザーを有しています。

  • シンガポール発のスーパーアプリGrabは、東南アジアのフードデリバリー市場の過半数を占めています。

今後の動向に関する4つの予測

1. スーパーアプリの普及率がアフリカと中東で上昇

World Economic Forumによると、昨年アフリカ向けに出荷されたスマートフォンの85%が低価格帯モデルであり、スーパーアプリは通信回線の利用と容量を節約するための有効な選択肢となっています。新しいテクノロジーを抵抗なく受け入れる、デジタルに精通した若い世代がスマートフォンを持つようになってきたこともあり、アフリカはスーパーアプリにとってチャンスのある市場だと言えます。

アフリカではすでに5つのスーパーアプリが利用可能で、マイクロファイナンス(小口金融)、交通、商業、モビリティ、コミュニケーション、各種決済などのサービスを提供しています。直近だと今月、ケニアのスタートアップであるArakaがドライバー向けのスーパーアプリをリリースしました。このアプリを使うと、タクシーやデリバリーのドライバーは短期融資やファイナンシャルツールを利用できるほか、顧客とつながって売上を上げることができます。

同様に、中東では若い世代の人口が急増しており、プライバシーに関する規制もますます緩和されているため、スーパーアプリの重要な新興市場としての存在感が増しています。結果的としてスーパーアプリへの投資が増加すると同時に、ユーザーの関心も高まっています。たとえば、アルジェリアのタクシー配車アプリのTemtemは最近、Eコマース、デリバリー、交通サービスが1つになったスーパーアプリ Temtem ONEを公開しました。

2. バンキングアプリとのパートナー連携

スーパーアプリの普及率が高まっている地域において、バンキングアプリはこの先厳しい決断を迫られることになります。

金融サービスはスーパーアプリのプラットフォームの一部であることから、ユーザーはスタンドアロンのバンキングアプリよりもスーパーアプリを選ぶ可能性があるからです。たとえば、AlipayやWeChatなどのスーパーアプリは、基本的な預金、バンキング、投資商品を提供しています。また、デジタルウォレット機能を搭載するスーパーアプリが増えており、ユーザーはアプリのエコシステム内で支払いを済ませられるため、現金、クレジットカード、ひいてはバンキングアプリを利用する必要がなくなります。

これに対抗し、一部の銀行はスーパーアプリとの戦略的パートナーシップを結び、スーパーアプリにシームレスに統合された「BaaS」(Banking-as-a-serviceの略で、銀行の機能やサービスをモジュール化し、さまざまな企業が自社のサービスに組み込んで利用できるようにする仕組み)機能を提供することを決定しました。多くの場合、スーパーアプリは各市場の金融規制への対応を避けるため、こうした業務提携に前向きな態度を示しています。

3. 中小企業への導入が好調

中・小規模事業者(SME)は、依然として多くの国の経済基盤であり、特に、金融包摂(誰もが金融サービスを利用する機会があり、かつ平等であること)や若年層の増加など、スーパーアプリが発展する機会が豊富な国々ではこれが顕著です。スーパーアプリは、自身のプラットフォームにより多くのSMEを抱えれば抱えるほど、ユーザーはアプリ内で必要なものすべてにアクセスできることから、アプリの利用を止める可能性が低くなります。

SME側にとってもメリットがあり、多くの企業が経営管理にスーパーアプリを活用し始めています。東南アジア初のSME向けスーパーアプリとして登場したEnstackは、会計、レポート、在庫管理ツール、オンラインWebストア制作、オフラインキャッシュレス決済オプションなどを提供しています。SMEは、スマートフォンでこれらの機能にすべてアクセスし、ビジネスの完全なデジタル化を実現できます。

4. Eコマースとフィンテックへのメリット

フィンテック企業やEコマース企業はすでに、スーパーアプリエコノミーへの参入を始めています。この2つのカテゴリーでは、多くの企業がスーパーアプリと統合してギグエコノミー(短期の仕事を請け負う働き方)プラットフォームやマーケットプレイスを提供しています。地域や国を越えた決済方法のおかげで、ユーザーは好きな方法で支払いをしたり、支払いを受け取ったりできるようになるのです。

たとえば、Walmartの会員制サブスクリプションアプリのWalmart+は、アプリ内のオプションとして同社の宅配サービスを追加しました。これにより、Walmart+に登録した顧客は、注文した食料品を自宅まで配達してもらうことができます。しかし、Walmartは最近、複数のフィンテック企業を買収して提携し、さまざなサービスが1つのプラットフォームで完結するスーパーアプリを構築する動きを見せていることから、これは恐らく始まりに過ぎないでしょう。同社はShopifyとも提携しており、Shopifyの販売者がWalmart Marketplace内で商品を販売できるようにすることで、バーチャルヘルスケア分野におけるスーパーアプリのアドオンであるWalmart Healthを展開しています。

さらに、「グローバルなフィナンシャルスーパーアプリ」を自称しているのがRevolutです。ロンドン発の同社は、口座、貯蓄、家計管理ツールにとどまらないさまざまなサービスを提供しており、ATMの利用も無料です。Revolutのスーパーアプリは拡大を続け、現在ではビジネスバンキング、小売サービス、旅行保険・デバイス保険、仮想通貨サービス、投資機能に加え、直近でマーチャント向けのサービスも開始しました。

モバイルアプリの統計データについての詳細は、フィンテック、ゲーム、Eコマースの業界分析とベンチマークをまとめた「モバイルアプリトレンドレポート2022」をご覧ください。

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