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ケーススタディ - DeNA

DeNA

DeNAは2006年からモバイル端末向けにゲームを提供しており、その開発・運営・集客のノウハウを蓄積してきました。現在は自社で開発・運営するゲームだけでなく、他社との協業によるゲームや開発パートナー企業による多様なジャンルのゲームを配信しています。

今回は、DeNAの広告データ環境整備を長年リードしてきた深田氏より、DeNAがAdjustを導入されたきっかけやデータ管理の仕組み、またAdjust機能の興味深い活用方法などを詳しく伺いました。

Adjustを導入したきっかけ

以前、DeNAのゲーム事業部では自社のゲームプラットフォームである『Mobage』のSDKと他社のSDKを併用してアプリ計測を行っていました。その後、海外へのアプリプロモーションを開始することになったタイミングで、Adjust SDKを利用した効果計測を導入することにしました。Adjustはグローバルの代理店での利用実績が豊富で、DeNAのアメリカ拠点がすでにAdjustを導入していた実績もあったため、移行はスムーズにできたと深田氏は振り返ります。

SDKが違えば広告運用のプロセスも異なります。複数のアプリを展開している場合は、SDKを統一することで運用がよりスムーズになります。DeNAでも複数のアプリで利用するSDKを統一させるのは難しかったそうですが、その頃からCookieを使った計測が禁止されたこともあり、Adjustによる計測データをより重視するようになりました。

深田氏は、事業部の枠を越えて、エンタメ、スポーツ、オートモーティブなどの他の事業部からもサポートを依頼されることがあります。「デジタルマーケティングのデータ環境や運営のインフラを整える上でも、同じツールを利用しているとサポートしやすい」という点は、データ管理者にとっても大きなメリットと言えます。

最新データを社内全体で共有

DeNAでは、Adjustで取得したローデータをデータベースに転送し、分析に利用しています。データ分析を専門とする部署の協力により日々最新のデータが自動集計され、BIツールを通じて社内で共有されています。

実際のデータ分析は、Adjust以外から取得したデータも利用しています。例えば、コストデータは代理店から取得し、メディアへのコストやマージンを含めた集計額も確認することで、実際に発生するコストに近い金額を分析に利用できるようにしています。

また、DeNAでは、国内・海外のチームが代理店を利用したりインハウスで運用したりと、それぞれのチームが最も効率的と考えるプロセスで運用を行っています。一つのアプリを複数のチームで運用する場合、すべてのチームに同じ粒度・精度でのデータ作成を求めるのではなく、Adjustのコスト連携で取得したデータも利用し、加工したデータを他の部署に共有しています。

クリエイティブの分析フロー

DeNAの広告分析で特筆したいのは、クリエイティブの分析フローです。深田氏によると、実際に広告で利用された画像や動画と集計されたデータを同時に確認できるレポートを作成し、どのクリエイティブがなぜ良かったのかをマーケターやクリエイターが簡単に確認できるようにしています。

広告を計測するために作成したAdjustの入稿URLと広告で利用するクリエイティブデータ、ネットワーク、キャンペーンなどのデータ階層を社内で保存し、配信後にAdjustから取得するローデータと併せて集計することで、広告効果がどの画像に由来したかを特定しやすいようにしているのです。

このフローに関わっているのはマーケターやアナリストだけではなく、クリエイターや入稿を担当するスタッフなど多岐にわたります。複数人が関わるオペレーションでデータの精度を維持するには、その作業を簡単に誰でも行えることが重要です。

Adjustのアプリ計測は、管理画面でネットワークの粒度を登録さえすれば、スプレットシートで計測用のURLを発行したり、パラメーターの割り振りを設定したりすることができます。機能をシンプルに利用できることも、AdjustがDeNAのデータ分析環境に貢献している大きなポイントです。

目的に合わせて見方を変える

深田氏は、データは「どの指標を基準にして運用を行うか」が重要だと強調します。デバイスの数やプラットフォームのアカウント数、ゲームの場合はリセマラを含めたユーザー数など様々な定義があるため、どのタイミングでどのような目的のために分析するかによっても基準となる指標は変化します。

例えば、リセマラに関わる計測については、リセマラが発生したとしてもオーガニックとして計上しないよう、Adjustのようにアトリビューションの正確性を保てるSDKを使用することが前提となります。その上で、DeNAはAdjustから取得したセッションデータを独自集計する事でインストールやリアトリビューションを独自定義で再判断できるようにしています。リアトリビューションウィンドウは実際の評価期間よりも長めに設定してデータを取得し、メディアにポストバックする期間はAdjustで設定した期間としても、内部で広告効果を評価する際のアトリビューション期間は集計によって見直しを行えるようにしています。

「アンインストール、再インストール計測」機能で効果を予測

Adjustの「アンインストール、再インストール計測」は、アプリをアンインストールしたユーザーに再インストールしてもらうきっかけを作り、ユーザーライフサイクルとLTVを向上させるための機能です。深田氏は、DeNAが当機能を導入してから、LTVを予測する精度が大きく改善されたと述べます。例えば、再インストールしたユーザーを見ればそのCPIは良いが、そうではないユーザーだけだとCPIが目標値より悪い、というような場合がみられました。DeNAでは、この計測データを基に、キャンペーンの評価や予算の調整をしています。

さらに深田氏は、「アンインストール、再インストール計測」機能を導入したことで興味深いインサイトが得られたと語ります。それは、ユーザーがどのようにゲームに復帰したかによって、LTVが予測できるのではないかという仮説です。深田氏のチームは、「通常のリアトリビューションよりも再インストール後のリアトリビューションのほうがLTVが高い場合がある」ことを発見しました。

ゲームを途中まで進んでから一度ゲームを離れてしまった後に、時間が経ってもう一度最初からやりなおしてくれるユーザーの存在がその一例です。リリースしてから数年経過しているタイトルのアトリビューション期間をみると、リセマラのようにすぐ再インストールするのではなく、しばらく期間をあけてから再インストールをする場合が多いことがわかりました。

DeNAのゲームの広告運用は、ゲーム内でイベントが開催されている1~2週間に集中しています。特に最初の数日が重要のため、早いタイミングでどのように予算を組むかなどの判断が必要になります。その精度を上げるためにも、流入種別毎の過去のLTVの実績から広告効果を予測しています。

Adjustのアンインストール、再インストール機能を導入してから、LTVを予測する精度が大きく改善されました。

株式会社ディー・エヌ・エー

深田 裕一氏 ゲーム事業部マーケティング統括部

プライバシーに配慮したプロモーションを

アプリ業界では、ユーザーのプライバシー保護への対策がますます重要になっています。DeNAも今後どのようにプライバシーに配慮しながらプロモーションを計画し、展開していくかを模索中だそうです。深田氏は、「プラットフォームのデータやSDKから取得するデータなど、粒度や意味が異なるデータを組み合わせて多角的に分析する事が今後の課題だが、それらのデータを利用しやすく集約してくれるツールが重要になってくる」と語ります。

Adjustの管理画面は、管理者の権限を持つ特定のユーザーしかローデータを取得ができないように構築されています。つまり、第三者がデバイス情報などを管理画面からダウンロードできないような仕組みです。SDK導入を検討している企業は、計測ツールの構造が原因でユーザー情報が外部に漏洩することがないよう、アプリ計測ツールをセキュリティやユーザープライバシーの面からも十分に検討することをおすすめします。

Adjustのサポートと今後の展望

深田氏は、Adjustのサポートチームは「とても詳しく回答してくださるので、本当にありがたい」と述べ、こう続けました。「導入時の動作検証についてはAdjust SDKに詳しくなくても検証できるプロセスがあるとよりスムーズになると感じますが、技術的な内容も的確にサポートしていただけるので助かっています」。

DeNAでは、現在Adjustのマーケティングオートメーションソリューション「Automate」をトライアル中です。「代理店に依頼している広告運用と、インハウスでの運用をどちらも行っている状態なので、Automateなどの新しい機能は積極的に検討し、どちらの運用パターンでも効率化できるように力を入れていきたい」と今後の展望を述べて締めくくりました。