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Kファクターが評価基準になる未来:オーガニックインストールにおける有料UAの効果を検証

モバイルの世界において、広告経由のインストールとオーガニックインストールには、明確な関係性があると考えられています。広告経由のトラフィックが多いほど、オーガニックトラフィックも多くなるという考えです。この概念は、Kファクターと呼ばれています。

Kファクターとは、当初ソーシャルシェアリングの計測値を定義するための単語として使われており、インストールとシェアとの関係を示していました。しかし、このフレーズは時間の経過とともに変化し、今ではマーケティングの様々な関係性のつながりに、より近い意味を持つようになりました。ここでは、広告経由のインストールに起因するオーガニックインストールが、どれほどあるのかご説明します。

この事実が共通認識であるにも関わらず、Kファクターが存在するか否か、存在する場合はその規模についての根拠を証明できる研究が存在していないという事実はあまり知られていません。

そこでこの記事ではこの点を証明し、数千ものアプリを分析した上で、広告経由のインストールはオーガニックインストールに影響を与えるのか? 与える場合、どのくらい強い関係があるのか? の2つの疑問にもお答えしていきます。

Kファクターとは?

Kファクターとは、オーガニックイントールが広告経由のインストールに影響を受けているかどうかを判断する基本的な評価を指しています。そのため、広告に多くの費用を支払った場合、インプレッション、アプリストアのランキング、そして拡散力などの要素に基づき、オーガニックユーザーも自然と増加するはずだ、という理論が成り立ちます。

では、Kファクターが本当に存在するのか、そして存在する場合には、どれぐらいの影響力があるのかをテストしました。

Kファクターの理論

Adjustのデータサイエンティストであるローマンは、まずこの議題を下記のような方程式に書き出しました。

Y = F(X)
Y=オーガニックインストール、X=広告経由のインストール、F(X)=Xの関数

そして私たちはXとYの間に線形依存性を仮定してみました。つまり、オーガニックインストールと広告経由のインストールの関係は広告経由のインストールボリュームに従って一定となる、という仮説です。これにより、更に発展させたモデルをテストすることができます。この仮説を特定のアプリに当てはめた場合、インストール数が増加または減少すれば、そのKファクターは一定になるはずです。したがって、先ほどの関数は次のように再定義できます。

Y = b*X
b=推定したい係数

週単位の時系列データを分析している為、いくつか限界があります。モデルに含めるには、YとXの時系列は定常(変動と自己相関)である必要があります。

XとYは変動するため、これらの時系列の最初の相違を取り上げました。このアプローチの良い点は、絶対的な変化を追い続ける事ができるところです。

モデルは次のようになります。

Y* = b*X*</p>
Y*=オーガニックインストールの初期相違(絶対的な成長値)
X*=広告経由のインストールの週単位の初期相違(絶対的な成長値)
b=Kファクター値

もし今週、有料インストールの値を先週に比べて1単位変更した場合、オーガニックインストールの値も先週に比べてb単位だけ変化すると推測できます。

サンプル

ローマンは1年分のインストールからサンプルをとり、各アプリの週ごとのデータを見ながら、2016年11月21日から2017年11月26日までテストを実施しました。使用したアプリは下記3つの基準を満たしています。

  1. アプリは上記の期間中の50週以上にわたって、有料広告およびオーガニックの両ソースからも常にインストールされ続けている。
  2. アプリは各週平均して500回以上インストールされている。
  3. 広告経由のインストールとオーガニックインストールにおける初期相違(絶対的な成長値)はこの間一定である。つまり、数値は季節性やその他のトレンドの要因に影響を受けていない。

この基準に従い、総計1,345のアプリを分析しました。OS別では、1,345のうち、711がAndroid、 634がiOSでした。

調査結果

最終的に発見した事実として、Kファクターは確かに存在はしますが、市場の大部分のアプリには適応しないということが分かりました。

サンプルの30%にはKファクターが認められました。この30%に関し、我々のデータチームは中央値を.45と設定しました。つまり、サンプルの中で平均的なパフォーマンスをするアプリを観察すると、100回の広告経由のインストールごとに45回のオーガニックインストールを追加で獲得しうるという事です。しかしこれは中央値にすぎません。サンプルの中には、数百、数千ものインストールを追加で得たものもありました。

Kファクターはどこに存在するのか?

広告経由のインストールがオーガニックインストールに影響を与えているのかどうかを確認するためには、広告経由のインストールの量に着目するとわかります。広告経由のインストールがオーガニックインストールの総数よりも極端に少ないはずはありません。Kファクターの影響を受けるには、この2つを比較し、広告経由のインストールはオーガニックインストール全体の65%程度を必要とします。つまり、Kファクターが引き起こされるには、100のオーガニックインストールを得る場合、少なくとも65の広告経由のインストールが必要になるということです。

これを説明する一説として、すでに多くのオーガニックインストールがある場合、新たなオーガニックユーザーを得ることが難しいということがあります。

アプリにもトレンドがあり、全体的に低いダウンロード数のものも存在します。これらには広告経由のインストール数からオーガニックインストール数への影響はあまり見られません。実際に、最大のユーザーベースを持っているアプリには、同時に最大のKファクターが存在しており、広告においてもオーガニックインストールの数値が大きく増加するほどの影響力があります。

iOSやAndroidのプラットフォーム別で見た際にも顕著な違いはなく、上記の事実は実質的には同じでした。

またKファクターがアプリの種別でどのような違いをもつかについても調査しました。ゲーム部門では、サンプル中の470のゲームアプリのうち、Kファクターは22.5%に影響を与えており、ゲーム以外の871のアプリでは33.6%に影響があると判明しました。これより、ゲーム部門のアプリでは、Kファクターの影響が少ないと言えます。実際サンプル中158のEコマース系アプリではKファクターの影響を受ける割合が多く、38.6%という結果がでました。ショッピング系ではないアプリで28.5%ほどであったことを考えると、これは高い数値だと言えます。

最後に、アプリのリリース時からのライフタイムとKファクターを保持しうる可能性、またはその影響力の強さの間には特筆すべき依存性は見られませんでした。これより、アプリの古さにかかわらず、Kファクターを保持し得ることが分かります。

テイクアウェイ

Kファクターが存在することは分かりましたが、それはマーケターにどのように関わってくるのでしょうか?

Kファクターに関わる要因を突き止めること、またその要因を可能な限り改善し最適化することは、広告経由のインストールから促される純粋なオーガニックインストール数を増加させる為に必要不可欠です。拡散力、ASO、またアプリをシェアしやすくデザインすることは、Kファクターを割り出す鍵となります。Kファクターの改善にどのように機能してくるのか、必要事項を簡単に網羅しておきましょう。

ASO(App Store Optimization)

オーガニックダウンロードにおいて優れたASOはとても重要です。ASOのランキングに大きな要因となるのはダウンロード数です。大きなインストール基盤があるということは、ユーザーが広告経由かオーガニックかに関わらず、ランキングで上位につくために役立ちます。アプリストアが一貫したトラフィックやアクティブユーザーの集中的な増加を確認すると、ランキングは上昇し順位も安定、そしてオーガニックインストールが広告経由のインストールを誘発するサイクルが生まれ、結果的に大きなKファクターの働きを引き起こすのです。

拡散力

Kファクターの恩恵を受けられるのは注目を集めるアプリです。拡散されるようなアプリはあらゆるタイプのユーザーを網羅することから利益を生み出し、オーガニックトラフィックと有料エンゲージメントを増加させます。ユーザーにわかりやすければ、迷う事なくアプリをインストールしてくれるでしょう。この現象は将来的に、リターゲティングや、リエンゲージメントなどへの障害を低くしてくれるでしょう。Kファクターの恩恵は大ヒットアプリを生み出すだけではありません。

シェア

簡単に言うと、シェアしやすく作られたアプリはKファクターの恩恵を大いに受けることができます。複数人でプレイするゲームや、ユーザー同士で費用を分割できる旅行用アプリなどは、アプリのシェアを推奨することにより、一度の広告経由のインストールから3〜4人、もしくはそれ以上のオーガニックユーザーを獲得することができます。

Kファクターの解説は以上です。アプリマーケティングブログにて、その他のトレンド情報にもご注目下さい

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