フィンガープリントを元にした計測のデフォルト設定について

Paul H. Müller

2019年2月5日

フィンガープリント情報をアトリビューション計測のデフォルト設定とする時代は終わりました。

今後Adjustでは、フィンガープリントによるアトリビューションは、その設定を有効にした場合のみに行われます。よって、新規でアプリを登録する場合、この設定はデフォルトで無効となります。キャンペーンウィザードでトラッカーURLを作成する際も、フィンガープリント設定をそれぞれ有効化していただくことが必要です。

技術的な詳細については最近リリースされた新製品情報でもご確認いただくことができますが、変更理由の詳細については、引き続きこちらの記事をご覧ください。

アトリビューションの経緯

フィンガープリントは、Adjustが初めて開発したアトリビューション計測に用いられました。2012年の開始より、iOSが唯一デバイスの識別子として提供したのは、デバイスにハードコーディングされたUDIDだけでした。当時のパブリッシャーは、これを広告のトラッキングやアトリビューションに使用することに不安を感じるほどでした。AdjustはUDID情報をアトリビューションに使用したものの、クリックに付与することができる広告媒体の数は、極めて限られていました。

フィンガープリントがそのギャプを埋めることができたおかげで、その情報無しではアトリビューションされなかったクリックとインストールも紐づけることができるようになりました。

Adjustでは、iOS のオペレーティングシステムやバージョン、IPアドレス、言語、そしてデバイスタイプに合わせてフィンガープリント情報を用いた計測を開始しましたが、識別するために必要な情報が十分に多様ではなかったため、完全なソリューションとはなりませんでした。

また、iPhoneの最新版の普及率はとても高く、ほとんどのユーザー端末にはiOSリリースの最新版がインストールされています。さらに、言語設定は英語で、同じVerizon IP を介してルーティングされる端末数が多すぎるため、適切に識別することができませんでした。よって、本当に必要とされるソリューションを提供することができませんでした。

2012年9月、AppleはiOS6のリリースと同時に、IDFA として知られる広告主向けのIDを発表しました。その1年後に、Googleはこれに追随してGoogle Play Store広告IDを発表し、2014年8月より広告媒体やアトリビューション計測会社がこれらを使用できるようになりました。

市場がこの新しいデバイスIDの導入を完全に利用できるようになったのは、Appleの発表から何年もの期間が経過した後でした。それでも今日においては、すべてのアプリ内の広告インベントリの広告IDを読んだり、Adjustがトラッキングするエンゲージメントに広告IDを付加することができるようになりました。

この進展が、フィンガープリントにおける最大の欠点の軽減に役立ちました。

iOSではフィンガープリントの種類(モデル番号や機種タイプ)が極端に少ないため、一定の時間内でどれだけアトリビューションが発生したかにより、その正確性が影響を受けます。IDFAに紐付けられるアトリビューションが多ければ多いほど、フィンガープリントと関連性のないクリックやインストールをマッチングする発生率が減少します。Adjustの全トラフィックに占めるWebベースの広告インベントリの割合が10%程度の場合においては、フィンガープリントが正確である割合は90%を超えました。

この頃は、広告IDなしで入ってきたクリックに対して、フィンガープリントをデフォルトのフォールバックとして使用することにより、正確なマッチングと違和感のないユーザーエクスペリエンスを提供することができました。

フィンガープリントを逆手にとった不正行為

しかし世の中は移り変わり、アプリ市場に対する熱狂的なトレンドが、今や数十億ドルのビジネスへと成長しました。参入する企業の数が増え、競争が激化し、モバイル広告に対して皆がこぞって資金を投入するようになったのです。

弊社の役割は、もはや広告IDの役割を十分に把握できなかった市場に対してアトリビューションを提供することではありませんでした。これに代わって問題となったのは、我々が知らないところでアトリビューションが操作され、報酬が盗み取られるという犯罪からAdjustのお客様を守ることでした。

Adjustでは、Androidで発生したアトリビューションの内、約15%がフィンガープリントに紐付けられています。iOSの場合は20%以上と、Play Storeリファラに相当する情報が入手できないためもう少し高い傾向があります。iOS 11でLimited Ad Tracking(追跡型広告の制限)を有効化したユーザーの IDFA を削除したことも要因の1つです。

残念ながら、広告 IDがなく、代わりにフィンガープリントによるクリックとマッチングされるケースが増加傾向にあります。

正当なWebベースの広告インベントリはほぼ一定ですが、アプリ内広告の広告イベントリに関しては、広告IDを実際には送信できるのに、あえて送信しないケースが増加傾向にあります。この状況は、私たちがフィンガープリントに依存せざるを得ないということを意味しています。

この不正業者は、広告IDの添付の仕方を「忘れて」しまったのでしょうか?また、その根本的な原因はどこにあるのでしょうか?

不都合な事実

その答えは単純です。忘れている訳でもなく、また偶然そうなってしまった訳でもありません。

クリックスパムは、この業界でのもっとも大きな問題の1つで、オーガニックユーザーの横取りは、Adjust が遭遇する不正行為におけるもっとも一般的なタイプとなっています。

広告IDを悪用したクリックスパムは、不正業者がランダムに選択したデバイスを攻撃します。実際に、これだけでコンバージョン率が約 0.1% 程度低下します。しかし、iOSに対するフィンガープリント情報によるクリックスパムのランダムなマッチ率は、容易に 0.5~1% に達します。

この手法は、同じIPアドレスを経由して数千のデバイスにアクセスする、モバイルのインターネットサービスプロバイダからのIPレンジをターゲットにしています。iOSのフィンガープリントの種類が少ないことも重なり、広告IDを用いたアトリビューション計測と比較して、数千のデバイスが不正クリックに紐付けられてしまう可能性が遥かに高い傾向があります。

このようなことから、クリックスパムによりキャンペーンが影響を受ける状況を劇的に減らす手段として、Adjust はフィンガープリントのデフォルト設定を無効にせざるを得ませんでした。

もちろん、フィンガープリント情報が役立つ場合もあります。例えば、配信に広告IDを使用できない際に、EメールやWebサイトからリダイレクト設定を行う場合などです。

本機能を悪用する不正業者の影響をこれ以上黙示するとはできません。

この変更に関するお問い合わせは、こちらまでお願いいたします。

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