継続率は、ユーザーの顧客生涯価値(LTV)を構成する重要な指標です。アプリを使用してもらうためには質の高いユーザー体験を作り出すことが最善ですが、高い継続率は、収益化やブランドロイヤリティの向上にも貢献します。このガイドでは、アプリの継続率をアップさせるための10の戦略とヒントをご紹介します。

継続率とは?

継続率とは、一定の期間が経過した後もアプリを使用しているユーザーの割合のことです。一般的には、アプリがインストールされた日(0日目)から1日目、7日目、30日目と計測されます。ユーザーが長く維持されているほど、収益が増加する見込みが高くなります。さらに、モバイルアプリの継続率が高いということは、ユーザー体験が有意義であるということを示しています。反対に継続率が低い場合は、アプリに問題がある可能性があります。例えば、1日目にアプリを離れるユーザー数が異常に高ければ、アプリのオンボーディングに問題があるかもしれません。

継続率とユーザー獲得

継続率とユーザー獲得は表裏一体です。大幅な成長を達成するにはより多くのユーザーを獲得しなければなりませんが、そのユーザーを維持することも重要です。どのチャネルが最も価値のあるユーザーをもたらしているかを特定することは、ユーザーにより長くアプリを利用してもらい、LTVを最大限に高めるための施策に不可欠です。

モバイルアプリの優れた継続率とは?

Adjustが実施したある調査で全アプリカテゴリーの継続率を比較したところ、1日目の継続率はAndroid、iOSともに26%、7日目はAndroidが11%、iOSが12%、30日目はAndroid、iOS共に6%と、同一の推移を示しました。一般的に、インストール初日に3分の1以上のユーザーを維持していれば、そのアプリの継続率は優れていると言われています。ただし、平均継続率はアプリカテゴリーによって異なるため、時間をかけてテストしてから評価することをおすすめします。

最も継続率の高いアプリカテゴリーは?

アプリの継続率をカテゴリー別に比較してみると、ユーザー行動やアプリの特徴によって大きく異なります。例えば、ユーザーが日常的にチェックする天気予報アプリのように、使用頻度の高いユーティリティアプリであれば、継続率も高い傾向があります。その一方、旅行アプリなら30日目の継続率が低くなる場合があります。というのも、フライトチケットを購入する目的で航空会社などの公式アプリをインストールし、旅行が終わったら、アンインストールするユーザーがいるからです。

アプリの継続率を高める方法:考慮したい10のベストプラクティス

1. できるだけ早く計測を開始する

継続率と最適化のための施策を正確に計測するには、できるだけ早くアプリの効果測定を開始することが重要です。そうすることで、影響を与えたパフォーマンスや機能を特定するために必要なデータポイントを取得することができます。

2. アプリのベータテストを実施する

特定のオーディエンスのみを対象としたモバイルアプリのベータテストを実施することで、ローンチ時のアプリ継続率を改善できます。これは、ユーザーの継続率を低下させるような問題やバグがないことを確認するためのスマートな方法です。アプリのベータテストを実施する際は、ユーザーにフィードバックを求め、それを活用してユーザー体験を最適化するようにします。このプロセスに従うことで、ローンチ当日までにアプリをできる限り最高の状態にすることができます。ベータテストのもう1つのメリットは、コアユーザーにいち早く利用してもらうことで、アプリストアでの公開前からブランドロイヤリティを高められることです。

3. アプリをソフトローンチする

アプリをまだローンチしていない場合は、アプリをソフトローンチしてA/Bテストを行い、アプリのパフォーマンスを最適化できます。ソフトローンチとは、地域を限定してリリースすることを意味します。類似する広地域でリリースする前に、モバイルアプリを最適化する方法を特定する機会を得ることができるのです。例えば、先駆けてニュージーランドでアプリをローンチすることで、英国や米国などの類似する英語圏地域におけるアプリのパフォーマンスを予測できます。ベータテストと同様にこの方法を実践することで、大規模なローンチ時のアプリ継続率を高めることができます。

4. 製品について正しく伝えるマーケティングをする

モバイルアプリのマーケティング戦略は、製品の特徴に合わせて計画することが重要です。マーケティングがどれだけ効果的であっても、ユーザー体験と約束されたものが同じでなければ高い継続率は実現できません。誤解を招く広告は、ユーザー獲得に一時的に効果を発揮するかもしれませんが、長期的にはネガティブな影響を及ぼします。それよりも、製品とマーケティングを一致させることで、初回セッションの後もアプリ使用を続ける価値の高いユーザーを獲得するほうがより効果的です。例えば、アプリの使用時に実際に表示されないグラフィックに予算を費やすより、広告にモバイルアプリのゲーム動画を表示する方が効果的です。

5. オンボーディングを最適化する

オンボーディングはユーザージャーニーの重要なステップであり、高い継続率を実現する鍵となります。ユーザー獲得に成功し、アプリを開いてもらうことができたら、初回セッションでユーザーにアプリの使い方を説明する必要があります。ユーザーオンボーディングを最適化する際は、次の点を考慮しましょう。

  • シンプルに:オンボーディングでは主要機能の説明を中心にすすめましょう。ユーザーに情報を与え過ぎないことが大切です。ユーザーがアプリを快適に操作できるように、エクスペリエンスに関わるキーインサイトを提供し、必要に応じてサポートするための追加オプションを用意しておくと効果的です。例えば、クエスチョンマークのアイコンを追加して、ユーザーが必要に応じてクリックすると詳細が表示されるようにしておくといいでしょう。
  • 視覚化する:ユーザーの注意を引いたりアプリの使い方を伝えたりするための最適な方法は、画像やアニメーションを使うことです。ユーザーができるだけ簡単にアプリを使い始められるように、魅力的なビジュアルを使うことを検討してください。
  • ユーザーが使いやすいと感じている機能を特定:広く利用されているアプリと同じ機能を搭載すれば、その仕組みを説明する必要はないかもしれません。例えば、他のアプリでもよく見かける「いいね」、「シェア」、「コメント」などの機能は、大半のユーザーにとって馴染みがあります。
  • オンボーディングの最後にCTAを促す:オンボーディングの最終ステップにCTA(行動喚起)を設置することで、継続率を高めることができます。例えば、メーリングリストへの参加やプッシュ通知の有効化を促すのもいいでしょう。オンボーディングでアプリの価値を紹介しておけば、ユーザーを継続率戦略のループへと導く絶好の機会となります。

6. アプリストアを最適化する(ASO)

ASOとは、ランキングの上位に表示されるように、アプリストアのエントリーに変更を加えることです。価値の高いユーザーにリーチして、そのアプリをインストールしたら何ができるかをわかりやすく伝えることで、継続率を向上させます。

ASOを実行するには、アプリの名前や説明、iOS用のキーワード、アイコン、スクリーンショット、動画などに重点を置きます。ランキング上位に位置する多くのアプリは、箇条書きにした説明文を加えることで、ユーザーがそのアプリでできることを明確に表示しています。ASOは、オーガニックユーザーの流入を増加させるのに効果的です。このようなユーザーは広告を目にすることなくアプリに興味を示しているため、多くの場合、長期に渡りアプリを利用するLTVの高いユーザーになる傾向があります。

有料広告によるユーザー獲得とASOを組み合わせた戦略にご興味のある方は、Moburstのゲスト投稿をご覧ください。

7. パーソナライゼーション

パーソナライゼーションは、アプリマーケターが継続率を高めるために利用できる強力なツールです。実際に、消費者の91%はパーソナライズされた提案やお勧めを提供しているブランドで買い物をする傾向が高く、米国の消費者の90%は、ブラウジング中のパーソナライゼーションに好感を持っています。パーソナライゼーションとは、ユーザーデータを利用して、「ユーザーを名前で呼ぶ」、「適切な提案をする」、「ユーザーの好みに基づいてコンテンツをカスタマイズする」などの施策が行われます。パーソナライズされた内容は時間と共に改善されるため、ユーザーがアプリに戻ってくる可能性が高くなります。

パーソナライゼーションを導入する上で重要なのは、適度なバランスを取ることです。何よりもまず、それによってユーザー体験が向上するかどうかを見極める必要があります。パーソナライゼーションの中には、ユーザーを不快にさせるものもあるため、いつ、どのように取り入れるかを注意深く検討することが重要です。

8. プッシュ通知

プッシュ通知機能により、ユーザーのデバイスにメッセージを直接送信することができます。ユーザーがプッシュ通知をオプトインする必要がありますが、このタイプのメッセージは、ユーザーをアプリに呼び戻して継続率を高める効果的な方法です。オプトイン率はアプリカテゴリーによって異なります。SNSを利用する57%のユーザーは、そのプラットフォームからのプッシュ通知を受け取ることを希望しています。次いで、ニュースアプリ(45.94%)、Eコマースアプリ(25.29%)、モバイルゲーム(19.05%)、旅行アプリ(10.08%)、ブログアプリ(9.24%)の順となっています。

9. Eメールマーケティング

Eメールマーケティングは、ブランドロイヤリティの構築やエンゲージメントの強化、長期的な継続率の向上などに有効です。価値のある利用者のメーリングリストを作成しておけば、特別割引やセールなどのプロモーションを通知して、ユーザーをアプリに呼び戻すことができます。これは企業の規模や予算に関係なく効果的な戦略であり、中小企業の80%が、価値のあるユーザーを維持するためにEメールマーケティングを活用しています。Eメールマーケティングは、製品の割引やアプリ内購入など、価値のあるオファーを提供することでユーザーを維持するためのスマートな方法でもあります。これにより、企業とオーディエンスの双方にメリットのあるシナリオを作成できます。さらに、消費者の49%は、お気に入りのブランドから定期的なプロモーションメールを受け取ることを希望しています。Eメールマーケティングの詳細はこちらのブログ(英語)をご覧ください。

10. アプリ内メッセージ

プッシュ通知と同様に、アプリ内メッセージもユーザーのエンゲージメントを維持する優れた方法と言えます。ユーザーとのコミュニケーションにアプリ内メッセージを使用しているモバイルアプリは、28日目以降の継続率が61%~74%向上しています。

ただし、複数の継続率を高める戦略を実施する場合は、ユーザーに同じ情報を何度も通知しないようにしてください。更新のたびに同じ内容のプッシュ通知とアプリ内メッセージが表示されると、ユーザーのストレスとなり、離脱やプッシュ通知のオプトアウトにつながる恐れがあります。また、アプリ内メッセージを最適化して、できる限りユーザーにとって有益なものとなるように、ユーザーの好みに基づいてユーザーをセグメント化するようにします。そうすることで、ユーザーにさらなる価値を提供し、継続率を高めることができます。

今回ご紹介した継続率戦略が役に立ったと感じられた方は、ブログ「継続率を正しく計測していますか」もぜひご覧ください。また、サブスクリプションアプリのためのユーザー獲得とリエンゲージメント戦略に関するリソースも併せてご活用ください。

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