モバイルアプリの健全性とユーザーロイヤリティを示す継続率は、エンゲージメントユーザー離脱に関するインサイトを提供する重要な指標です。アプリの成長を促進し、アプリにとって最も関連性の高いアナリティクスを活用しマスターすることが、持続可能な成功への道を切り開くために必須です。今回は、マーケターが急速に変化するモバイルマーケティング業界で成功するために、戦略的なアプリ開発とマーケティングの基盤であるアプリ指標に焦点を当てたブログシリーズをご紹介します。

このシリーズでは、成功の鍵となる重要な指標について詳しく掘り下げ、業界のベンチマークを地域やカテゴリー別に分析します。また、各指標のパフォーマンスを向上させるための実用的なベストプラクティスも解説します。

今回は、継続率(Retention rates)を見ていきましょう。

継続率とは?

継続率とは、アプリをインストールした後に、一定期間内にアプリを使用し続けるユーザーの割合を示すパフォーマンス指標です。この指標を使用することで、アプリマーケターはユーザーがアプリから離脱するタイミングや理由をより深く理解し、一定期間におけるアプリのパフォーマンスを評価することができます。アプリカテゴリーによってはパフォーマンスが高く、またユーザーケースも異なるため、ユーザー継続率の基準を各アプリごとに分析することが重要です。

高い継続率は、ユーザーがアプリのユーザー体験(UX)に満足し、アプリに価値を見い出していることを示唆します。よって、より強力なエンゲージメントを促すことで、収益化に向けて大きな可能性が生まれます。

継続率の分析は多くの場合、30日間にわたるコホート分析によって可視化され、ユーザーの離脱数と反対の関係にあります。例えば、30日後の継続率が25%の場合、離脱率は75%ということになります。

アプリの平均継続率とは?

継続率を分析する場合は、ユーザーの継続率が30日間でどう変化するかに注目します。30日間の特定の時点で継続率が急激に下がった(離脱ポイント)場合、その日数よりも長い期間ユーザーを維持できるようアプリを最適化する必要があります。たとえば、ゲームアプリのオンボーディング期間中、チュートリアルの終わりに多くのユーザーが離脱している場合、その部分を改善すべきだと判断できます。

アプリの継続率において「1日」は「24時間」を指します。つまり、ユーザーがアプリを起動した時のタイムスタンプ2つを比較して、その間に24時間以上経過しているかどうかを判断できるのです。

優れた継続率の条件

日別のパフォーマンスの概要については、Adjustの全カテゴリーを合わせた継続率の中央値をプラットフォーム別に計算しました。一般的な数値とは言え、これらの数値は、アプリの継続率を評価するためのベンチマークとして役立ちます。自社アプリの継続率を以下のデータと比較してみてください。

全体的に見て、すべてのプラットフォームとアプリカテゴリーにおける継続率は1日目に26%にまで低下します。その後7日目には13%、14日目には10%になり、30日後には7%あたりで安定します。

Androidユーザーの平均的な継続率は、1日目が24%、7日目が11%、 14日目が8%、30日目には6%です。

iOSの継続率では、1日目が27%、7日目が14%、14日目が11%と、高い傾向を示しています。30日目になると、iOSは8%の継続率を維持しており、iOSユーザーのエンゲージメント(つまり定着率)が時間とともに高まることを示しています。

一般的に、アプリインストール後にユーザーの1/3以上を維持している場合、アプリパフォーマンスが高いと考えられています。

地域別に見た継続率

地域別に見たアプリ継続率の中央値を見て、さまざまな市場のユーザーが、30日間でどのようにユーザーエンゲージメントを維持しているかを見ていきましょう。

1日目を見ると、APACとLATAMの継続率はグローバル平均の26%と一致します。しかし、ヨーロッパとMENA中東および北アフリカの継続率は24%と若干低く、最も低いのは北米の23%です。

7日目にはAPACの継続率が12%と引き続きトップとなっており、次にヨーロッパとLATAMの11%が続く結果となっています。中東・北アフリカ地域と北米はどちらも10%に減少します。

14日目も継続率は引き続き低下し、APACは9%、ヨーロッパは8%、LATAM、MENA、北米は7%になります。

30日目には、継続率はAPACとヨーロッパが6%、LATAMと北米が5%、最も低下するのはMENAの4%にとどまります。

APAC地域では、他の地域よりも優れたパフォーマンスを見せていることに注目すべきでしょう。また、MENAの平均的な継続率は30日目までに最も低下しました。

アプリカテゴリー別の継続率

以下では、世界のアプリの継続率をカテゴリー別に分析しました。このデータから、アプリインストール後にユーザーがどのように継続してアプリを使用しているかを把握できます。なお、継続率の傾向は、アプリカテゴリーによって大きく異なることにご留意ください。

  • ゲームとソーシャルアプリが業界をリード:1日目の継続率は29%と、ゲームとソーシャルアプリが圧倒的に良い結果を出しています。これらのアプリはユーザーの関心を引きつけるものであり、ユーザーの日常業務や社会的習慣に取り込みやすいことから、これは当然の結果だと言えます。
  • ヘルスフィットネスアプリはユーザーを惹きつける:このカテゴリーのアプリはパフォーマンスが高く、1日目に27%の継続率を記録しています。ユーザーがアプリをライフスタイルの変化や日々のルーチン作業に取り入れることで、ユーザーのエンゲージメントがさらに増加します。
  • フィンテックアプリの潜在能力: フィンテックアプリの1日目の平均継続率は22%です。新しいプラットフォームでファイナンスを管理する際には、多くの場合ユーザーからのコミットメントが必要となります。これが、この比較的高い数値につながっていると考えられます。
  • エンターテインメントアプリとユーティリティアプリは、継続率が安定しています。 いずれのカテゴリーも1日目にそれぞれ20%、21%と同様の継続率を示しています。
  • ショッピングアプリと旅行アプリに改善の余地:ショッピングアプリと旅行アプリの継続率はそれぞれ18%、16%と、全体的に低い傾向にあります。数値が低い場合は、購入や競争の激化など、目標がすぐに達成されることが原因である可能性があります。UXとリエンゲージメント戦略を構築することで、オプトイン率を向上させましょう。
  • フード&ドリンクアプリにはマーケティング戦略が必要:フード&ドリンクアプリの1日目の継続率は13%と低い傾向があります。消費者にさまざまな選択肢があることが、ロイヤリティの低下や継続率の低下につながる可能性があります。

地域とカテゴリー別に見た継続率の内訳

業界カテゴリー別・地域別のインストール後1日目のアプリ継続率についても分析しました。これらのデータポイントを分析することで、異なるアプリ業界のユーザー行動の傾向や興味関心についてのインサイトを得ることができます。

  • ゲームが圧倒的に良好:ゲームはすべての地域で約28〜29%の高い継続率を維持しています。継続率が最も低いのは北米の26%ですが、他のアプリカテゴリーと比較して、このカテゴリーの数値は高い傾向にあります。
  • フィットネス全体が普及:ヘルスフィットネスアプリの継続率は、APACとヨーロッパで24%と高い継続率を示しており、LATAMとMENAでわずかに減少し、北米で21%となっています。
  • ソーシャルアプリも人気:ソーシャルアプリの継続率はヨーロッパで29%と、他の地域よりも若干高いことがわかりました。APACとLATAMは1日目の継続率が25%で、北米とMENAがそれぞれ24%、23%となっています。
  • APACでのユーティリティアプリ利用率が向上:APACでユーティリティアプリの継続率が最も高いのは19%で、LATAMとMENAが17%、ヨーロッパが15%、北米が14%とそれに続く結果となりました。これは、ユーティリティアプリへの依存度が高く、APACでこれらのアプリが効果的にローカライズされていることを示しているのかもしれません。
  • フード&ドリンクは低調:このカテゴリーの継続率は最も低く、地域全体で約10〜11%となっています。継続率が最も低いのはLATAMで8%でした。地域特有の傾向と競合の有無が、このカテゴリーのユーザーの継続率に影響する可能性があります。
  • フィンテックアプリのパフォーマンスは中程度:このカテゴリーでは、1日目の継続率がMENAで18%と最も高く、次いでヨーロッパが17%、APACが15%、LATAMと北米が13%となっています。
  • エンターテイメントアプリの平均継続率:エンターテイメントアプリの1日目の継続率は15%〜19%となっています。継続率が最も高いのはLATAMの19%で、最も低いのは北米で15%でした。これは、全地域でこのアプリカテゴリーに改善の余地があることを示しています。
  • ショッピングアプリは改善が必要:このカテゴリーの1日目の継続率は11〜16%の範囲で、最も高い継続率はヨーロッパとMENAの16%、最も低いのは北米の11%です。ショッピングアプリは、ユーザーの継続率を高めるために、パーソナライゼーションとターゲットを絞ったプロモーションへの投資を増やすことをおすすめします。
  • 旅行アプリはもう一押しが必要:地域全体の継続率は12%〜15%で、最も継続率が高いのはAPACとヨーロッパの15%、最も低いのは北米で12%でした。

モバイルアプリの継続率を高めるためのベストプラクティス

上記の概要をご覧になった上で、パフォーマンスをより最適化する方法をお探しの場合は、継続率を向上させるための以下のヒントを見直されることをおすすめします。オンボーディングからメッセージングまで、インストール後ユーザーに継続してアプリを使用してもらうためのヒントをご紹介します。

最適化されたオンボーディングでユーザー体験を強化

多くのベンチマークレポートからわかるように、大半のユーザーは、インストール当日または翌日にアプリから離脱する傾向にあります。そのため、この期間中にアクションを起こすことが、ユーザーを維持する最大のチャンスとなります。アプリのオンボーディングで、最良のユーザー体験を提供しましょう。

オンボーディングは直感的に動作するように構築し、使い始めてすぐにアプリを使用するメリットを伝える必要があります。新規ユーザーのエンゲージメントを維持するためには、アプリの価値をわかりやすく明確に示すことが必須です。さらに、オンボーディングジャーニーを簡素化することで、ユーザーはアプリをさらに詳しく活用し、見逃している可能性のある機能を発見することができます。

パーソナライゼーション

位置情報からユーザーの設定まで、さまざまな方法でそれぞれのユーザーに合った独自のエクスペリエンスを作り出し、アプリへの注目をキープし続けることができます。ユーザーをコホート別にセグメント分けすることで、アプリ体験を戦略的にパーソナライズし、各コホートの行動や好みを分析して、より効果的なリターゲティングにつなげることができます。

プッシュ通知アプリ内メッセージをユーザーセグメントに送信し、アプリを利用する可能性が最も高いタイミングでユーザーに訴求することなどが効果的です。ただし、ユーザーへの通知回数が急増しないよう気をつけましょう。さらに、コンテンツをカスタマイズすることで、より多くのロイヤルユーザーを獲得することができます。「パーソナライゼーション」には2つの方法があります:

  • 静的パーソナライゼーション :プッシュ通知のユーザー名など、一定のパーソナル化が含まれます。
  • 動的パーソナライゼーション:ユーザー行動やコンバージョン履歴など、変化する要因が含まれます。

Adjust Automateで、業務の効率化と予算の効果を高めることができます。

リエンゲージメント施策のメッセージに重点を置く

多様なアプリユーザー向けにクリエイティブを最適化することで、継続率を大幅に向上させましょう。ユーザーストーリーの共有やランキングの紹介など、プラットフォームのオーディエンスにメッセージを使ってエンゲージメントを高めます。ユーザーに合わせてカスタマイズした、一貫した価値に向けたリエンゲージメントキャンペーンを開始することができます。顧客のライフサイクルをとおしてインストールから1週間以内に開始し、長期間継続することが可能です。

休眠中のユーザーには、説得力のあるリエンゲージメントが効果的です。リマーケティングキャンペーンを効果的に実施するには、非アクティブユーザーの行動、関心、好みに関するデータインサイトを活用して、メール、ソーシャルメディア、検索広告などでメッセージを発信します。

シームレスなユーザー体験を提供するための課題を特定

どんなユーザー体験にも、「ペインポイント(弱点)」が存在します。ユーザーが離脱するタイミングを特定し、改善することで、継続率を高めましょう。そのためには、継続率低下の要因となる問題を特定し、解決しなければなりません。多くのユーザーが同じところで離脱している場合は、データを分析して改善が必要な部分を明らかにします。

ABテストを実施して、ユーザーの興味関心を把握

テストは、取り組みが望ましい結果をもたらすかどうかを判断するのに効果的な方法です。具体的には、ABテストでマーケティングキャンペーンの効率を向上させ、エンゲージメントとコンバージョンを促すメッセージや機能を特定することなどです。

新しい機能を導入する際は、ABテストを実施することで、その機能に対するユーザーの反応を分析することができます。さまざまなセグメントで新機能をテストして、本格的なリリース前に機能やメッセージを改善する必要があるかどうかを把握しましょう。

ユーザー体験をゲーミフィケーションする

新規ユーザーの獲得も重要ですが、既存ユーザーの価値やロイヤリティに対してインセンティブを付与することも重要です。ここで役立つのがゲーミフィケーションです。ゲーム以外のUXにゲームのメカニクスを追加することで、ユーザーの継続率を大幅に向上できます。ゲーミフィケーションには、タスクの完了、競争、社会的認知などのユーザーの動機を活用します。ゲーミフィケーションには、チャレンジ、バッジ、ポイント、レベル、アプリ内通貨などの要素を取り入れることで、ユーザーにアプリを継続的にエンゲージしてもらうことができます。

フィードバックを通じてエンゲージメントを改善

ユーザーのアプリへのエンゲージメントと関心を維持するには、ユーザーのフィードバックに耳を傾ける必要があります。例えば、ターゲットオーディエンスにアンケートを実施し、アプリの利用体験を聞いたり、他の人にアプリをおすすめしたいかどうかを知ることができます。

もう1つの価値あるフィードバックは、 アプリストアでの評価とレビューです。Google PlayやApple App Storeなどに掲載されたレビューを活用して、アプリの改善を図りましょう。

フィードバックには、構造的な批判も含まれます。ユーザーがアプリの特定の問題を指摘する場合は、そのギャップを改善するチャンスとなります。常に改善の余地があるため、これらの問題を認識して対処することで、アプリのユーザー体験を向上させることができます。

より多くの指標を計測

継続率は、アプリにおけるユーザーエンゲージメントの概要を提供するものの、パフォーマンスの全体像を把握することはできません。ユーザーエンゲージメントを包括的に理解するには、1日あたりのアクティブユーザー数、離脱率、顧客生涯価値など、さまざまな収益関連の指標を計測・分析する必要があります。

より多くのインサイト、事例、戦略を使ってユーザーの継続率を高める方法については、Adjustのガイド「ユーザー継続率:ユーザーを効果的に維持し、アプリを成長させる方法」(英語のみ)をご覧ください。アプリの成果とユーザー行動を計測する方法については、デモをお申し込みください

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