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WWDC25 AdAttributionKitアップデート:複数のリエンゲージメントコンバージョン、アトリビューションルールのカスタム化、国コードなど
2025年6月9日にAppleの世界開発者会議(WWDC25)が開催され、iOS(バージョン26)をはじめとしたソフトウェア、テクノロジー、開発者向けツールに関するアップデートが多数発表されました。例年通り、注目の多くは基調講演で発表される新しい消費者向け機能に集まりますが、モバイルマーケティングチームにとって重要なのは、その数時間後に行われるPlatforms State of the Unionや追加セッション、各種ビデオセッションです。こうした場でAdAttributionKit やSKAdNetwork(SKAN) のアップデートが共有されるのが通例だからです。
本記事では、WWDC25の中で特にアトリビューション、アナリティクス、計測に関連するアップデート(AdAttributionKitの新機能とその仕組み)に焦点を当ててご紹介します。
AdAttributionKitとSKANの最新情報
昨年のWWDCでは、モバイルマーケティング業界は2023年に予告されていたSKAN 5に関するアップデートを心待ちにしていました。しかし実際にAppleが発表したのは、AdAttributionKitでした。SKANアトリビューションAPIの進化版(あるいは継続版)とも言えるAdAttributionKitは、SKAN 4の多くの機能を引き継ぎつつ、サードパーティおよび代替アプリストアへのサポートが強化されました。
この1年で、いくつかの追加アップデートもリリースされました。中でも注目すべきは、Apple Search Ads(ASA)がSKANバージョン1~3に統合されたことです。なお、AdAttributionKitによるインストール数の登録は、今後提供される予定です。
AdAttributionKitの新機能の詳細については、「What’s new in AdAttributionKit」と題されたAppleのセッション動画で紹介されていますが、Appleによる機能全体のフロー図とともに、本稿でも詳しく解説していきます。
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重複する(リエンゲージメント)コンバージョン期間とコンバージョンタグの計測
iOS 18.3までは、アプリが同時に保持できるリエンゲージメントコンバージョンは1件だけでした。しかし、iOS 18.4以降では、複数のリエンゲージメントを同時にactiveとして記録することが可能になりました。また、新機能を通して、「ブックマークのように(機能する)」コンバージョンタグも取得できるようになります。
Appleが紹介したユースケースは以下の通りです:あるユーザーがアプリ内割引の広告を見てクリックし、ディープリンク経由でアプリに遷移してリエンゲージメントコンバージョンが生成されます。その後、購入せずにアプリを離れ、別の商品に関する別の広告を後にクリックした場合、新たなリエンゲージメントコンバージョンが作成されます。
では、もしこのセッション中に最初の広告で紹介された商品を購入したらどうなるでしょうか?このようなケースが「重複するリエンゲージメント」となり、元のコンバージョンのコンバージョン値を「コンバージョンタグ」で更新できるようになります。
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開発者がこの重複する期間の計測を有効化(該当キーをYESに設定)すると、リエンゲージメントが発生した際、AdAttributionKitが配信するリエンゲージメントURLにコンバージョンタグが付与されます。これらは、広告表示時にAPIへ渡されるユニバーサルリンクとして処理されます(カスタムまたはStoreKitのいずれにも対応)。
コンバージョンタグとマルチ リエンゲージメントに関しては、こちらをご覧ください。
アトリビューションルールのカスタマイズが可能に
AdAttributionKitを通じたアトリビューションは、広告表示からの経過時間と広告タイプ(クリック、ビュースルー)に基づいて行われます。これらにはそれぞれ固定のアトリビューション期間が設定されており、たとえば広告がクリックされた場合は30日間、ビュースルーでは1日間です。この期間内にコンバージョンが発生した場合、その広告にクレジットが付与され、期間外でのコンバージョンは対象外となります。
今回のアップデートにより、アトリビューション期間を柔軟に設定できるようになりました。つまり、広告主がタイプやアドネットワークごとにアトリビューション期間を任意に定義できるのです。たとえば、あるネットワークでは広告のクリックを2日間、ビュースルーを1日間と設定し、別のネットワークではクリックを20日間、ビュースルーを5日間にすることも可能です。また、特定の広告タイプをネットワークごとに対象外にすることも可能です。たとえば「インプレッションによるコンバージョンは除外したい」という場合は、広告を無効化することができます。ただし、このカスタマイズはインストール広告にのみ適用でき、リエンゲージメントには対応していません。なぜなら、リエンゲージメントでは広告接触とコンバージョンが時間差なく直後に発生するため、アトリビューション期間が実質的に意味を持たないからです。
広告ネットワークが広告を配信し、それによりコンバージョンが発生すると、上述のアトリビューション期間が開き、ユーザーエンゲージメントの計測が行われます。ただし、同デバイス・同アプリに対して重複した計測期間が存在することで、「最適なコンバージョンに対して計測がなされない」という問題が生じる場合があります。この問題を解決するには、「クールダウン」の設定が必要になります。
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たとえば、ユーザーが広告をクリックしてアプリをダウンロードし、その後アプリ内課金(IAP) を実行したとします。本来であれば、このようなケースではインストール広告に対して高いユーザー価値のコンバージョンが記録されるべきです。しかし、インストール直後に同じユーザーがリエンゲージメント広告をタップしてアプリを起動した場合、そのアプリ内課金(IAP)はリエンゲージメントにアトリビュートしてしまう可能性があります。これは、広告主が意図するコンバージョンの計測方法とは異なる場合がありますが、クールダウン期間を設定することで、回避またはカスタマイズすることが可能です。
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クールダウン期間はクリックとインプレッションで任意に設定でき、同タイプのコンバージョンが発生した後に開始されます。この期間内に発生した他のコンバージョンは、アトリビューション対象から除外されます。
ポストバックに地理データを追加
AdAttributionKitが出力するポストバックには地理情報(国コードなど)が含まれておらず、ネットワークや開発者はソース識別子に依存していました。今回のアップデートにより、キャンペーンのクラウドの匿名性(crowd anonymity) が高レベルに達した場合、ポストバックに国コードが追加されるようになります。
この国コードは、App Store経由でダウンロードされたすべてのアプリに対して提供され、ユーザーのアカウント設定にあるロケーションに基づくストア情報から取得されます。代替アプリストアの場合、国コードはインストール検証トークンのペイロード内に含めるオプション項目であり、Appleによって署名・送信・検証された後、ポストバックに追加されます。
クラウドの匿名性アルゴリズムに基づき、十分な匿名性が確保されていると判断された大規模のキャンペーンにおいてのみ、国コードがポストバックに含まれるようになります。この要件が非常に厳しいため、Appleは国コード専用のクラウドの匿名性階層(Tier)を設けました。この仕組みの目的は、広告主やネットワークが従来取得できたデータの質や粒度を損なうことなく、地域データ提供において極めて高いプライバシー保護を実現することにあります。たとえば、仮に国コードが既存の階層3に含まれてしまうと、他の階層3レベルのデータの受信が困難になる可能性があるため、それを防ぐためにAppleは専用階層を設けているのです。
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新しいテスト機能とベストプラクティス
iOS 18.4以降、開発者はiOSの設定アプリから、アプリに対する開発用ポストバックを生成できるようになりました。このポストバックは、これまでとは異なる方法でテストが可能になっており、プロセス全体が大幅に簡略化されています。たとえば、Xcodeや他の配信手段を使ってアプリを実行した際に、コンバージョン値の更新を含むテストを行うことが可能です。さらに、これらのポストバックに含まれるデータ内容を開発者が直接制御できるようになったことで、データの粒度を変えたテストも柔軟に行えるようになります。
開発者モードを使ったテストに関しては、こちらをご覧ください。
その他注目すべきアップデート
Appleは今回のWWDCにて、OSの名称体系を年次ベースにすることを発表しました。これにより、次のバージョンは「iOS 19」ではなく「iOS 26」としてリリースされます。この命名規則はvisionOS 26やiPadOS 26といった形で全プラットフォームに適用される予定です。なお、Macに関しては、これまで通りの地名にまつわる名称を維持しつつも、新たな番号体系と統合され、次期リリースはmacOS Tahoe 26として提供されます。
これと関連して、Appleは新たなLiquid Glassデザインシステムを発表しました。これは、すべての「26シリーズ」OSに標準化され、マルチチャネル開発への対応を目的としています。同時に、これは2019年のiOS 13以来となるiOSのビジュアル面における初の大規模アップデートでもあります。この新しいUI環境(visionOSに基づく半透明ルック)にアプリを最適化できるよう、Appleは開発者向けに新しいアイコンデザインツール「Icon Composer」を提供する予定です。
さらに、Xcodeにも生成AIベースのアップデートが導入されます。主な新機能として、より高度な予測コード補完機能やSwift Assist向けの自然言語インタラクション機能(ChatGPTが組み込み済み)が含まれます。
AdAttributionKit、SKAN、Appleのプライバシーアップデート、そしてモバイルエコシステム全体の変化が、マーケティングやキャンペーン最適化にどのような影響を与えるのでしょうか?その詳細にご興味のある方は、Adjustの担当者までお問い合わせいただくか、以下のリンクからデモをお申し込みください。
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