Privacy Sandbox Adjust Keynote

「MAU 2024」での基調講演:Android向けプライバシーサンドボックスの可能性を探る

2024年4月、モバイルアプリ業界のイベントの中でも特に注目される「Mobile Apps Unlocked(MAU)Vegas」が、ラスベガスのカジノホテルとして有名なMGMグランドで開催されました。今年もAdjustはクライアントやパートナーとイノベーションの最新情報を共有しました。

会場のメインステージではGoogleプライバシーサンドボックスのプロダクトチームよりパネリストを迎えて、基調講演「計測の新境地:Android向けプライバシーサンドボックスの可能性をAdjustと探る」を行い、Googleプライバシーサンドボックス(英語)について深く掘り下げました。司会進行はAdjustのプロダクトマーケティング・ディレクターであるエミリー・キャッシュ(Emily Cash)が務め、内容の詰まった素晴らしいパネルディスカッションが繰り広げられました。

  • Googleプライバシーサンドボックス・グループプロダクトマネージャー ジョリーン・ヤオ(Jolyn Yao)氏
  • Googleプライバシーサンドボックス・プロダクトマネジメントディレクター アミット・ヴァリア(Amit Varia)氏
  • Adjust 最高製品責任者 ケイティ・マディング(Katie Madding)
「MAU 2024」でのAdjustの基調講演:Android向けプライバシーサンドボックスの可能性を探る

プライバシーサンドボックス:開発の軌跡と今後の展望

パネルディスカッションでは、まず、2022年2月に発表されたAndroid向けプライバシーサンドボックスの現在の開発状況について紹介されました。プライバシーサンドボックスは、キャンペーンの効果を計測し、ユーザープライバシーにおける今後の大きな変化に備えるための機能です。機能のリリースに向けてテストの実施や調整が行われており、重要なマイルストーンが達成されたとのことです。

ここ数年はGoogleは、ユーザーを始め、マーケター、パブリッシャー、アドテック企業、政策立案者など、業界の各方面と一丸となって、テストの結果や意見を取り入れながら、Androidやインターネットにおけるのプライバシーに対するソリューションの開発を業界全体で取り組んでいます。

講演では、Google プライバシーサンドボックス・プロダクトマネジメントディレクターを務めるアミット・ヴァリア(Amit Varia)氏が、2024年末までに一般向けにリリースできるようにフィードバックを反映させながら開発を進めていることを伝え、期待の声が会場に広がりました。

アミット・ヴァリア(Amit Varia)氏

Googleプライバシーサンドボックス・プロダクトマネジメントディレクター

Adjustはプライバシーサンドボックスの初期段階のテストより参加

AdjustはMMPの一社として、2022年に発表されたGoogleプライバシーサンドボックスの初期段階のテスターに参加しました。プライバシーサンドボックスの時代にクライアントを成功へ導くには、Googleと密に連携し、フィードバックや意見を挙げることが重要であるとAdjustは考えています。また、この新たなツールを使用した広告キャンペーンの計測方法をGoogleのプライバシーサンドボックスチームとともに検証したり、今後の展望を見据えてあらゆる情報を把握することに努めています。

テストを成功させるには、AdjustやGoogleプライバシーサンドボックスチーム、業界関係者など、アプリ内広告のエコシステムにおける一人ひとりが重要な役割を果たすため、あらゆるチームが参加するAndroid向けプライバシーサンドボックスの共同テストでは、各チームが直接繋がり、状況を共有し合っています。

Adjustの最高製品責任者、ケイティ・マディング(Katie Madding)は、Android向けプライバシーサンドボックスの過去2年間のテスト実施における進捗状況を、Adjustの視点から共有しました。

  • Attribution Reporting APIAttribution Reporting API:2023年10月中旬、AdjustはプライバシーサンドボックスのAttribution Reporting API(ARA)向けテスト環境をリリースしました。現在2社のクライアントにて、プライバシーサンドボックスのARAの運用テストを行っています。
    • このテストには「サンドボックス固有のシグナルの受信と転送の調査」、「Adjustが構築したSDK拡張機能のテスト」、「膨大なデータを利用するテスト」の3つの目的があります。
    • ベータテストへ参加ご希望の場合は、今すぐAdjustにお問い合わせください
アトリビューションレポート機能の仕組みを表すプロセスフロー図

サンドボックステストの今後について

サンドボックステストにおいて、Adjustでは次のような課題に直面したことを共有しました。

  • データ量:Adjustでは非常に多くのデータポイント(計測による情報)を処理しています。これをクライアントに対していかに簡潔で分かりやすく開示するか、現在、最善の方法を模索しています。
  • 技術面での複雑さ:プライバシーサンドボックスは、アプリ間の識別子に依存することなく、さまざまなユースケース向けの計測ソリューションを提供することを目的としているため、計画が非常に大掛かりで、とても複雑な機能です。
  • 改善の余地:プライバシーサンドボックスは既存のクロスアプリベースのテクノロジーに置き換わるものではなく、計測の目的の核となる部分(アプリ内イベントの計測の推進、関連広告の表示、など)をサポートする基本的な要素を、複数のサイトを横断するクロスサイト識別子なしで提供するように設計されています。しかし現時点では、広告主が通常の計測ソリューションから得られるほどのインサイトをプライバシーサンドボックスが提供できるに至っていません。つまり、自社のニーズに最適な計測データや妥当性を確保するために、今こそ、こうしたテクノロジーをサービス全体に組み込む方法を模索し始める、とてもよいタイミングです。
  • アドネットワークの対応:プライバシーサンドボックスを意図したとおりに機能させるためには、シミュレーションツールやテストデータだけでは不十分のため、さまざまなアドネットワークが容易に連携できることが重要です。各社が連携準備を進めていますが、現在のところ、Adjustがテストを開始したアドネットワークはGoogle 広告のみです。Adjustではすでに多くのインサイトやデータを取得しているため、ネットワーク各社をサポートする体制が整っています。
  • レポート重視:特定のKPIに対するレポートの出しやすさも大切です。あらゆる情報を引き出す上でデータが膨大のため、クライアントにとって分かりやすく簡素化させるために、Googleと連携して思案しています。

ケイティ・マディング

Adjust 最高製品責任者

プライバシーサンドボックスによる、パブリッシャーのキャンペーン計測への影響

Googleプライバシーサンドボックスグループ・プロダクトマネージャーのジョリーン・ヤオ(Jolyn Yao)氏は、発表当初に業界内が受けた衝撃を理解した上で、計測が今後もキャンペーンの方向性を決定する重要な鍵となると述べ、プライバシーサンドボックスが、今後キャンペーンの計測に与えられる効果を解説しました。

ジョリーン・ヤオ(Jolyn Yao)氏

Googleプライバシーサンドボックスグループ・プロダクトマネージャー

ヤオ氏は、プライバシーサンドボックスが本来持つ柔軟性、つまり、各社の計測ニーズに合わせて活用できるAPIである、ということを強調しました。

APIは、計測の主要な使用目的である「レポート」と「最適化」を非常に高いレベルでサポートします。広告主はレポートから得られたインサイトを活用することで、パブリッシャー全体の購入戦略を調整し、ユーザー行動を包括的に把握して、特定の広告枠の入札価格を微調整して最適化を図ります。

イベントレベルレポートと概要レポート:プライバシーサンドボックスの2つのレポートタイプ

マーケターが念頭に置いておくべき重要な2つのポイントは以下のとおりです。

  • データの最小化:どれほどのユーザーデータが、ビジネスにおける意思決定に実際に活用されているのでしょうか。多くのデータが蓄積される中で、一体、どの時点で自信を持った意思決定ができるようになるのでしょうか。また、分析する上で、ノイズ(不要な情報)やバイアスとなりかねないデータはあるのでしょうか。「プライバシーバイデザイン(プライバシーをあらかじめ考慮するアプローチ)」という考え方を念頭に置きながら、ビジネスニーズにおいてどのようなユーザーデータが必要不可欠なのか、なくてもよいのか、あるいは逆に支障となってしまうのかを考える必要があります。
  • 二極化するものではない:プライバシーサンドボックスは、ユーザーのプライバシーを保護すると同時に計測範囲を拡大させる新たな機会を提供するため、どちらか一方というわけではありません。Attribution Reporting API(ARA)をChromeとAndroidの両方でリリースできるため、アプリとWebを横断するシームレスなアトリビューションを提供できるようになります。これにより、現在よりもさらに質が高く、一貫性があるデータや情報の取得が可能となるでしょう。
「MAU 2024」でのAdjustの基調講演:Android向けプライバシーサンドボックスの可能性を探る
「MAU 2024」でのAdjustの基調講演:Android向けプライバシーサンドボックスの可能性を探る

アプリマーケターにとって必要な準備

プライバシーサンドボックスを効果的に利用するためにアプリマーケターにとって必要なことは何か。基調講演の締め括りとして、マディングは下記のアドバイスを共有しました。

  • エンゲージメント:現在、プライバシーサンドボックスは、必要に応じて柔軟な対応が可能の段階です。Adjustやその他のアドテック企業と連携して、テストのロードマップ(工程)や初期テストへの参加方法などの確認を通し、積極的にプライバシーサンドボックスの理解を深めることをお奨めします。ユーザーをアプリ間で計測することなく、パブリッシャーがビジネスモデルをサポートしながらユーザーに優れた体験を届けるにはどうすればよいのかを、業界全体が一丸となって再考する時期です。アトリビューション計測やオーディエンス管理のためのプライバシーを重視したソリューションがどのようなものかを把握するのに最適で貴重なタイミングに来ています。
  • 連携テスト:アドテック企業と連携テストを開始するために事前設定を行いましょう。新しいAPIのテストの実施や自社製品にデータ縮小などの機能を取り入れるために、前以って準備することをお奨めします。テストに関心をお持ちで、業界に精通したパートナーをお探しの場合は、「Publicly Declare as Privacy Sandbox」のフォーム(英語)より、開発者向けプライバシーサンドボックスのサイトに記載されたAndroid向けプライバシーサンドボックスの公開テスターになるという意思表示(申請)を行うことで参加することができます。
  • APIのテスト:アプリパブリッシャーとしてファーストパーティまたはインハウス(社内)の広告ソリューションやサービスを開発している場合、提案内容とその影響を評価してAPIのテストを実施し、プライバシーサンドボックス開発側へのフィードバックを挙げることをお奨めします。
  • 準備期間:テストを実施する上で、デバイスのリリース計画やスケジュールを定期的に確認して話し合い、見直しを行いましょう。2024年後半には、有用性を確認するための小規模な早期テストを実施することをお奨めします。
  • 最新情報を常に把握:プライバシーサンドボックスは、エコシステムとの積極的な連携を通して、市場からのフィードバックがしっかりとデザインや計画に落とし込まれ、進化しながら開発が進んでいます。プライバシーサンドボックスに関するこちらのページより、最新情報をご覧ください。

Adjustのブースやゲームイベント

「MAU Vegas」は非常に充実したイベントとなり、基調講演を始め、Adjustのブースを訪問してくださった皆様に改めて御礼申し上げます。会場ではクライアントやパートナーのほか、Adjustのイノベーションに関心を寄せてくださるモバイルマーケティング分野の方々と直接会ってお話しする機会に恵まれ、Adjustにとって非常に実りある時間となりました。

「MAU 2024」でのAdjustのブース

「MAU」開催2日目の夜、AdjustとAppLovinは、ラスベガスにあるレジャー施設、TopgolfにてVIPパーティー「HighBall」を開催しました。パターゴルフなどのゲームを楽しみながら、リラックスした雰囲気の中で業界のネットワークを築くことができた有意義な夜となりました。

「MAU 2024」でのAdjustのブース
「MAU 2024」へのAdjustからの参加者

今回の「MAU」も活気とイノベーションに満ち、実りの多いイベントとなりました。会場ではAdjustのブースにお越しくださり重ねて御礼申し上げます。業界の仲間と再会したり、新たにネットワークを拡大させることができたことを、Adjust一同、非常に嬉しく感じております。Adjustのモバイルアプリマーケティングのサポートや詳しい情報については、今すぐデモをお申し込みください。来年も皆様と「MAU」でお会いできることを楽しみにしています。

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