アプリマーケターなら知っておきたいモバイルアプリKPI
Amy Gilmour, Content Marketing Manager, Adjust, 2024年9月05日.
主要業績評価指標 (KPI) は、モバイルマーケティングの成功に不可欠であり、マーケティング戦略の中心的な要素と言えます。KPIにより、マーケターはアプリのパフォーマンスを定量的に計測でき、データに基づいた意思決定を行ってパフォーマンスを最適化することができます。アプリ全体の目的(または特定のマーケティングキャンペーンの目的)をしっかり検討することで、戦略や計測方法がより明確になります。
モバイルマーケティングの世界では、キーパフォーマンスを行うための一般的な目標として、投資収益率(ROI)の向上やアプリ内購入(IAP)を特定のしきい値に到達させるなど、より粒度の高いパフォーマンス指標を提供します。
アプリやキャンペーンのキーパフォーマンスを決定する際は、長期的なアプリの目標と、それを達成するためのユーザー行動を考慮しましょう。エンゲージメントを全体的に向上させたいですか?特にセッション率の向上を図っていますか?新規ユーザーの獲得コストを低く抑えたいですか?
一般的に、モバイルアプリの評価に最も役立つキーパフォーマンス指標は、アプリのカテゴリー(ターゲットとする市場)に紐付けられるものです。カテゴリーが異なれば、ユーザー行動とビジネスニーズも異なるため、それぞれに合う最適化が必要になります。
一部のキーパフォーマンス指標は汎用的なものですが、各アプリが個々のキーパフォーマンス指標に与える重要性は、アプリの目標、競合他社のベンチマーク、その他の個別要因によって異なります。ここからは、各カテゴリーのアプリにとって最も重要なモバイルアプリのKPIをそれぞれ見ていきましょう。
ファイナンスおよびフィンテックアプリのKPI
フィンテックアプリのユーザーはロイヤリティが高く、長期にわたって継続率 が高いことで知られています。よって、短期的な継続率の指標は、ファイナンスアプリのKPIとして重要視されていないかもしれません。アプリユーザーは、ソーシャルメディアアプリをチェックするようにバンキングやスマホ決済アプリをチェックするわけではなく、やるべきことがある場合にだけアプリを開きます。自社のフィンテックアプリのパフォーマンスを把握するには、以下のKPIを検討してください。
- 顧客獲得コスト(CAC):1人の顧客の獲得にかかる費用を理解することは、マーケティング予算の決定から、各ユーザーの価値の把握まで、ほぼすべての活動の基盤となる要素です。
- 最初のトランザクションまでの平均時間 :どのアプリにおいてもユーザーにアクションを起こしてもらうことが大切ですが、フィンテックアプリにとっては特に重要です。銀行振込の設定や、株式の購入、あるいはオンラインバンキングを行うことが目的であっても、ユーザーがこうした操作を完了するのにかかる時間を知ることでプロセスを最適化し、その時間を短縮することができます。
- 1ヶ月あたりのアクティブユーザー数(MAU):1日目から7日目の継続率に重点を置くのではなく、MAUの方が、ファイナンスアプリのユーザーがどれだけ満足し、エンゲージしているかを示すより良い指標かもしれません。ユーザーは、預金や送金、あるいは新製品の申し込みのためにアプリに戻ってきていますか?
仮想通貨アプリのKPI
ファイナンスアプリカテゴリーの一環として、デジタル通貨の購入や取り引きに使われる仮想通貨アプリには、親カテゴリーと多くの共通点があります。ユーザーにとって最も重要なのは信頼です。暗号通貨は「価格が大きく変動しやすい」ことから、アプリ内のユーザーエンゲージメントが高い傾向にあります。
- 初回トランザクションまでの平均時間:ユーザーには、単に暗号通貨アプリをインストールしてもらうだけでなく、実際に通貨を売買してもらうことが大切です。エンゲージメントの高いユーザーは離脱する可能性が低く、初回トランザクションまでの時間を早めることで、苦労の末獲得したユーザーを維持することができます。まずは無料の取引オファーを提供して、アプリを利用してもらいましょう。
- 離脱率:ファイナンスユーザーはロイヤリティが高い傾向にありますが、仮想通貨市場は注目度が高く、競争が激しい市場です。離脱率が平均よりも高い場合は、ユーザーがアプリを開いてくれるようにユーザージャーニーを微調整したり、パーソナライズ化したオファーを提供すると効果的です。
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月間アクティブユーザー数(MAU):フィンテックユーザーのエンゲージメントはそれほど高くない一方で、仮想通貨アプリはよりアクティブな傾向にあります。MAUを計測することで、ユーザー数の増減傾向や、ロイヤルユーザーがどの程度アクティブなのかを知ることができます。こうした情報があれば、ユーザー獲得や継続率を高める戦略にどれだけの時間を割くべきかを把握できます。
ユーザー獲得戦略の構築については、モバイルユーザー獲得完全ガイド(英語)をご覧ください。
ショッピング・EコマースアプリのKPI
Eコマースやショッピングアプリの成功の鍵は、満足度の高いリピーターの存在であり、さらにその顧客が経済的な余裕を持っていることです。特にZ世代の消費者にとって、ソーシャルコマースやライブショッピングなどの新しいユーザー体験が重要となる中、ユーザーの習慣やニーズを把握することがますます難しくなりました。初期の段階では、焦点を当てるべき重要なKPI(パフォーマンス指標)がいくつかあります。
- 顧客生涯価値(LTV):ユーザーはライフタイム全体でどのくらいの価値をもたらしますか?この質問に答えることで、価値の高いユーザーが誰なのか、どんな共通点があるのか、どうすればそのようなユーザーをより多く獲得できるのかを理解できます。
- ユーザーあたりのセッション数:顧客に喜んでもらい、何度も店に足を運んでもらいたいというのが、小売業者にとっての願いです。店舗に行くことは、デジタルで言えばセッションと呼ばれます。ユーザーがウィンドウショッピングをしているだけでも、何かを探している場合でも、アプリユーザーに戻ってきてもらう必要があります。もしアプリを定期的に利用していない場合は、プッシュ通知やディープリンクの実装により訴求することができます。このような戦略は、長期的にどれだけのユーザーを維持しているかを示す継続率の改善にも貢献します。
- コンバージョン率:コンバージョンはアプリごとに異なりますが、ショッピングアプリの場合は、アプリのインストールだけでなく、初回購入までを視野に入れています。他のEコマースアプリに比べてコンバージョン率が低い場合は、売上を伸ばす方法を考えてみましょう。買い物を途中で止めたことに関するプッシュ通知やメールは、戦略的に実施される割引キャンペーンやセールの通知、リエンゲージメント などと同様に有効です。
- 顧客獲得コスト(CAC):顧客獲得コストは、ユーザーの価値と密接に関係しており、このパフォーマンス指標を最適化することは、広告費用回収率(ROAS)を最大化するための鍵となります。
フードデリバリーアプリのKPI
フードデリバリーアプリはユーザーは高い購買意欲を示しており、10回の検索のうち8回は購入に至っています。これは、空腹でテイクアウトを探している人々がすぐに購入に踏み切りやすいことからも驚くべきことではありません。タイミングの良い割引オファーを使ったリエンゲージメントキャンペーンは継続率の向上に役立ちますが、アプリについてさらに多くの情報を得たり、ユーザー体験を最適化したりするために注目すべき他のパフォーマンス指標も存在します。
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アプリ応答なし(ANR): 最も避けたいのは、「お腹をすかせた」顧客が反応しないアプリにイライラして、別のアプリに移ってしまうことです。アプリのANR率が高い場合は、早急に対処する必要があります。
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離脱率:オンボーディングが完了する前に、ユーザーが離脱していませんか?それとも、注文した後にアプリの使用を止めるだけでしょうか?ユーザーがいつ、どこでアプリを終了しているのかを知ることで、ユーザージャーニーの詳細や最適化すべき箇所がわかります。
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継続率 :フードデリバリーアプリの継続率やエンゲージメント率が低いからといって、改善できないわけではありません。ユーザーがお気に入りの食べ物を求めてアプリへと戻ってくるように、または空腹になりがちな時間帯に再訪を促すようにオファーをパーソナライズ化すると、エンゲージメントを向上させることができます。プッシュ通知や位置情報の計測から、これらの戦略を最大限に活用することができます。
ユーザー継続率については、ユーザーを維持してアプリを成長させる方法(英語)をご覧ください。
ヘルス&ウェルネスアプリのKPI
ヘルスウェルネスアプリのダウンロード数は、近年急増しています。このカテゴリーにはPelotonからCalmまでさまざまな種類のアプリが含まれますが、こうしたアプリにはいくつかの共通点があります。ヘルスウェルネスアプリを成功に導くには、ユーザーにアプリを使う習慣を身につけてもらうことが大切です。マーケターや開発者にとって、ユーザー登録やサブスクリプション、収益に直結する「ユーザー登録」、「プレミアム機能」などの行動指標を特定することが重要です。
- 継続率: 目的がユーザーに瞑想をしてもらうことであれ、マラソンのトレーニングをしてもらうことであれ、継続率は重要です。ユーザーがどのくらいの頻度でアプリに戻ってきているのか、どのような機能やメッセージが一番気に入っているのかに特に注意を払い、継続的に利用してもらえるようにします。
- 離脱率: 離脱は継続の裏返しです。一定期間にユーザーを何人失っているでしょうか?自社アプリにとって何が「通常」かを理解することは重要です。離脱率が変動する時期や、各コホートのジャーニーのポイントも異なります。例えば、熱心なユーザーが年明けに登録したとしても、目標を諦めた時点で離脱する可能性があります。こうした事情を知っていれば、データを冷静に精査することができます。
- アプリ内滞在時間: ヘルス&ウェルネスアプリでは、ユーザーのエンゲージメント時間を延ばすことも重要です。ユーザーが長時間のランニングを記録している場合でも、バーチャルコーチとのやり取りをしている場合でも、ユーザーがアプリに長く滞在するほどユーザーの満足度が高くなります。
優れたアプリセッションの条件について詳しくご覧ください。
モバイルゲームアプリのKPI
ゲームアプリにはヘルス&ウェルネスアプリと多くの共通点があります。広告のパブリッシャーは、ユーザーが定期的にエンゲージすることを期待しています。ユーザーによっては、1日に1回以上、あるいは数時間連続してゲームをプレイしてくれることもあります。どのゲームカテゴリーのアプリで事業を展開しているかにもよりますが、ユーザーが定期的にプレイしてくれるかどうかは、収益化戦略にとって非常に重要な要素となります。
- エンゲージメントおよび継続率: この2つの指標は密接に関係しており、無料の広告付きゲームアプリの成功には欠かせません。ユーザーがアプリをアンインストールしないようにするだけでなく、定期的にプレイしたり、広告に関心を持ったりするきっかけを作りたいものです。毎日のリワード(動画リワード広告を通じて提供することも可能)やチャレンジの提供は、ユーザーに毎日アプリを開いてもらうための効果的な方法です。
- カスタマー生涯価値(LTV):たとえ無料のアプリであっても、ユーザーにはLTVがあります。広告とのエンゲージメントやアプリ内購入、またはサブスクリプションなど、どのような形で価値を生み出すかに関わらず、生涯価値を計算することで、ユーザー獲得(UA)戦略を構築し、広告費用回収率を最大化します。
- 1000回表示あたりの広告費用(CPM):1回のインストールにかかるコストはいくらでしょうか?これはすべてのアプリにとって重要なことですが、モバイルゲームでは、収益性の証明が数%以下になるため、特に重要です。離脱はゲームアプリにとって大きな懸念事項です。離脱率が高い場合は、ユーザー獲得のコストをできるだけ低く抑えることが重要です。
適切なパフォーマンス指標があれば、どんなアプリでも費用を最適化し、価値とスケーリング可能な成長をもたらす効果的なユーザージャーニーを構築できます。
キーパフォーマンス指標とベンチマークに関するその他のインサイトについては、モバイルアプリトレンド2024年版をご覧ください。Adjustにご興味のある方は、お気軽にデモにお申し込みください。
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