【最新】SKAdNetwork 4.0を解説:Adjustが描く2022年とその先のプライバシービジョン
先日開催された世界開発者会議(WWDC)で、AppleはSKAdNetwork APIのアップデートを発表しました。このアップデートの目的は、広告主とネットワークがユーザーのプライバシーを保護しつつ、アプリとWeb広告のパフォーマンス計測を継続できるようにすることです。WWDC 2022の内容について取り上げた前回の記事に続き、今回もこれらのアップデートがアプリマーケターへ与える影響と、市場におけるプライバシー優先の考え方を反映したAdjustの次世代ソリューション開発について説明します。
知っておきたいSKAdNetwork APIのアップデート
広告計測におけるプライバシー重視のアプローチの一環として、AppleはSKAdNetwork 4.0においてMultiple conversions(複数のコンバージョン)、Hierarchical conversion values(階層的コンバージョン値)、Hierarchical source identifiers(階層的ソース識別子)、SKAdNetwork attributions for web(Web広告向けSKAdNetworkアトリビューション)という4つの新機能を追加しました。それぞれの詳細はまだ明らかになっていませんが、ユーザープライバシー保護のための新たな機能が加わったことは、モバイルアプリマーケティング業界にとってポジティブな変化だと言えます。現時点では、広告主が取得するポストバックが以下の情報を含むことがわかっています。
Hierarchical source identifiers(階層的ソース識別子)
「Hierarchal source ID」(以前「キャンペーンID」と呼ばれたフィールド)は、インストールがどのキャンペーンにアトリビュートされたのかを特定したり、追加のアトリビューション情報を付加することができる機能です。キャンペーンの価値、広告配置、広告クリエイティブのタイプなど、アプリが定めた目標に基づいて4桁の値を設定することができます。
このフィールドはポストバックで常に最低2桁の値となっていますが、インストール数を満たした場合やキャンペーンがプライバシーのしきい値を満たした場合、最大4桁まで含められます。これにより、広告主はモバイルアプリキャンペーンでより高い柔軟性を得られるとともに、Appleのプライバシーのしきい値を満たす場合はより詳細なアトリビューション情報を取得できます。そして最も重要なのは、複数のアプリを横断する形でユーザープライバシーが保護される点です。
Hierarchical conversion values(階層的コンバージョン値)
Hierarchical conversion valueは、粒度の粗い値、またはきめ細やかな値になります。条件によっていずれかの値が使用され、十分な数のインストールが発生した場合にのみ表示されます。
- 粒度が粗い値:キャンペーンのアプリインストール回数が少ない場合、この値は広告主に限られたパフォーマンス情報しか送信しません。
- 粒度が細かい値:Appleによる追加のプライバシーのしきい値を満たす場合、広告主はより詳細なアトリビューション情報を得られます。もちろん、ユーザープライバシーは保護されます。粒度が細かい値の場合、64のconversion valueすべてが利用可能になります。
まとめると、hierarchical conversion valueは、広告主に小規模なキャンペーンで発生したコンバージョンに関する情報を提供するものです。
Multiple conversions(複数のコンバージョン)
この機能では、異なるconversion valueに対して複数のアトリビューション期間を設定することが可能なため、アプリ内行動を評価してROAS(広告費用回収率)を計算するのが容易になります。特定のコンバージョン期間(0〜2日間、3〜7日間、8〜35日間)に基づいて最大3つのポストバックを送信し、それぞれのコンバージョン期間に複数のエンゲージメントを含むことができます。
これにより、広告主は宣伝するアプリ内の経時的なユーザーエンゲージメントを効果的に評価することが可能になり、ユーザージャーニー後半のイベント計測からインサイトを得ているアプリ企業にとって有益です。さらに、フィンテックやEコマースなど、アプリインストール後7日以内に重要なコンバージョンイベントが発生することが多いカテゴリーに関しては、インストール後24時間にユーザーの質をより明確に理解することができます。
一方で、SourceAppID、SourceID、粒度の粗いconversion valueは2回目および3回目のポストバックにのみ含まれ、プライバシーのしきい値を満たす場合にのみ受け取ることができます。
SKAdNetwork attributions for web(Web広告向けSKAdNetworkアトリビューション)
SKAdNetwork 4.0により、広告主は、宣伝されているアプリのApp Storeのプロダクトページへとユーザーを誘導するWeb広告をアトリビュートできるようになります。Private Click Measurementを使用することで、広告主はWeb広告とアプリ内広告の両方をアトリビュートできます。Private Click Measurementの詳細はこちらをクリックしてください。
アプリ間でのコピー&ペーストにユーザー許可
2020年にリリースされたiOS 14では、アプリがクリップボードのコンテンツをペーストする際にユーザーにアラートを表示するバナーが導入され、ユーザーはアプリが同意なしにクリップボード上のコンテンツを読み取っている場合、それがわかるようになりました。iOS 16では、アプリ間のコピー&ペーストに対するユーザーの許可を求める仕様になっており、ユーザープライバシーがさらに強化されます。ユーザーの明示的な同意なしにアプリがクリップボードの機密データにアクセスすることを防止するのが目的です。
プライバシーと新たなソリューションに関するAdjustのビジョン
前回のiOS 15のアップデートでは、AppleはiCloud+ユーザーに対してプライベートリレーをONにするオプションを導入しました。これは、Safariを使用するiOSユーザーの行動追跡を防ぐためのものです。iOS 16ではプライベートリレーがデフォルトでONになると推測されていましたが、Appleからは依然としてそういったアップデートは発表されていません。しかし、このような変更はまさにモバイルマーケティングと広告エコシステムが目指す未来を反映しているものであり、今後もプライバシー関連のアップデートが多く導入されると考えられます。
業界が成長と進化を続け、プライバシー優先の考え方が強まる中、計測はマーケターにとって変わらず欠かせないものとなっています。Adjustチームは今後もAppleやパートナーと連携し、個別のデータポイントを基にした計測ではなく、集計データに基づいてインサイトを最適化する次世代ソリューションを提供していきます。
プライバシーを重視したAdjustの最新ソリューション
Adjustは2022年5月に新しい分析ソリューション、Datascapeをリリースしました。Datascapeは、すべてのデータを1ヶ所で閲覧・分析できる機能により、マーケターのスマートかつ迅速な意思決定をサポートするソリューションです。
さらに、AdjustはSKAdNetworkを使用してアプリ内ユーザー行動を収集するためのConversion Valueマネージャーを提供してクライアントの成長を支えてきました。このツールにより、さまざまなカテゴリーおよびビジネス/収益化モデルのアプリが個々のニーズに最適なconversion valueを活用したスキーマを作成できます。
今後注目の次世代の予測アナリティクス
今後Adjustが力を入れていく主な分野のひとつに予測アナリティクスがあります。これは、SKAdNetworkデータを利用する場合、iOSにおいてますます複雑になっています。現在の受信データは匿名化され、インストール後の最初の24時間以内のアクティビティにのみ基づいているため(ただしSKAdNetwork 4.0ではポストバック期間の更新により変更可能)、以前はカスタマージャーニーで後から特定可能であった重要なイベントも表示されなくなります。これを受け、AdjustはATT(AppTrackingTransparency)の同意ユーザーのデータと集計したデータポイントを活用し、機械学習機能を向上させて傾向を分析し、ユーザーの将来の行動やROI最大化の可能性を予測できるようにしました。2つのデータタイプを組み合わせた予測アナリティクスは、LTV(顧客生涯価値)を始めとするiOSキャンペーンのインサイトを取得・予測するのに重要となります。詳細は、ATTのベストプラクティスと実用例を紹介したWWDCのセッション、またはユーザーオプトイン確保のためのマーケター向けガイドをご覧ください。
Adjustのクライアントは各種ソリューションを活用することで、最新のプライバシー規制に準拠しつつ、キャンペーンパフォーマンスの計測とROIの最大化に欠かせないスマートな分析を行うことができます。Adjustは、絶え間なく変化するこの業界では、プライバシーアップデートに柔軟かつ素早く対応することが不可欠だと考えています。過去10年にわたり、モバイル計測業界を牽引する存在としてAdjustは業界のさまざまな変化に対応してきました。iOS 16以降の変更にもAdjustは随時対応し、今後もみなさまに必要な情報とサービスを提供してまいります。
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