ブログ iOS 14.5以降のマーケティング:はじまりから現在までを振り返る

iOS 14.5以降のマーケティング:はじまりから現在までを振り返る

はじめに

2020年6月の世界開発者会議(WWDC)でAppleが初めてiOS 14のリリースを発表してから2年が過ぎ、2020年9月16日の公開からも1年以上が経過しました。最初の発表から2021年4月のiOS 14.5のリリースにかけて、モバイルマーケティング業界は大きく変化し、ユーザープライバシーの取り扱いとモバイル広告エコシステムそのものへのアプローチの見直しが求められました。

Adjustはこうした変革の最前線に立ち、Appleやパートナー、クライアントと緊密に連携して、ポストIDFA時代への可能な限りシームレスな移行のために取り組むとともに、マーケター、開発者、広告主それぞれのニーズに応えるガイドラインやソリューションを提供してきました。モバイル計測パートナー(MMP)は、依然としてモバイルマーケターにとって欠かせない存在ですが、「計測」の定義とMMPがもたらす価値は次第に変化しました。今やアトリビューションや確定的データに限らず、集計データの複雑な分析処理にも重点が置かれています。

iOS 16のリリースが発表され、今年の世界開発者会議(WWDC)が開催(2022年6月6日〜10日)されている今、このガイドでは市場におけるプライバシー優先の考えを反映した「Adjustの次世代ソリューション」について改めて解説します。簡単に言えば、個別のデータポイントを基にする計測を離れ、集計データに基づいてインサイトを最適化するソリューションへと移行するものです。

iOS 14.5以降のマーケティングでは、SKAdNetworkAppTrackingTransparency(ATT)オプトインの確保からconversion valueスキーマの構築、ポストIDFA時代に優れたパフォーマンスを発揮するマーケティング戦略の策定など、把握しておきたいトピックが数多くあります。また、喜ばしい傾向として、オプトインの意義を理解してくれているユーザーが増え、同意率が一貫して上昇している点についても取り上げます。

業界のプライバシー優先モデルへの移行はますます進行しており、Adjustはこうした変化に対応してユーザーのプライバシーとデータ保護に取り組んでいます。このガイドでは、iOS 14.5+からiOS 16にかけての変更点と業界への影響、さらにAdjustがお客様に価値をもたらすためにどのように対応しているかに焦点を当てます。また、SKAdNetworkについて詳細に解説するとともに、総合的な分析を通してマーケターが知っておくべきポイントのすべてをお届けします。

パート 1

iOS 14の初回リリース:業界を揺るがした変更点とは

iOS 14.5がリリースされるまで、Appleはそれぞれのデバイスにリセット可能な一意の識別子を付与することで、デバイスにダウンロードされているすべてのアプリがその識別子にアクセスできるようにしていました。広告計測を制限するオプションはAppleデバイスの設定画面にありましたが、ほとんどのユーザーはそれについて知らなかったか、あるいは気にしていませんでした。広告識別子(IDFA)と呼ばれるこのIDを使用することで、マーケターはクリック数を計測してインストール数と比較することができ、モバイル計測パートナー(MMP)はこれらをアトリビュートすることが可能でした。ユニークデバイスID(UDID)から始まったIDの使用は2008年より行われ、2012年にIDFAに切り替わりました。

それからというもの、モバイルエコシステムは成長と進化を続けています。以前と違うのは、広告によるトラッキングについての知識をユーザーが持つようになったことです。データプライバシーをはじめ、データがどのようにアクセスされ管理されているかに関する懸念は、今後も引き続きユーザー(および立法者)にとっての大きな関心事です。また、このような懸念を受けて登場したEU一般データ保護規則(GDPR)やカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)のような規制では、該当管轄区におけるデータプライバシーを尊重したデータ処理方法が定められています。

こうした変化を伴いながらアプリ業界が成長を続ける中、アプリがIDFAにアクセスするにはポップアップを表示してユーザーの同意を得る必要があるという「WWDC 2020」でのAppleの発表を受けたモバイルマーケティング業界の反応は、非常に厳しいものでしたが、その影響の重大さは、当初予測されていたほど壊滅的ではありませんでした。ユーザープライバシーはこれまでも業界の第一優先項目として扱われたものの、アトリビューションとモバイル計測に対する私たちのアプローチが本質的に変わったと言えるでしょう。

ちなみに、ATT(App Tracking Transparency)は2020年に最初に発表されたものの、実際に施行されたのは2021年4月のiOS14.5リリースにおいてでした。

ATTの導入により、多くのアプリやアプリマーケターにとってのアトリビューションのあり方が大きく変化し、今までのユーザー獲得の計測方法は信頼に足らないものになりました。結果として、現在iOSで使用できるアトリビューションと広告計測メソッドは、ユーザーの同意を得てIDFAにアクセスするATT frameworkとSKAdNetworkの2つのみとなったのです。ユーザーから同意が得られた場合、これらのユーザーはiOS 14.5リリース前と同じ方法で計測・アトリビュートされます。しかし、ユーザーが同意しない場合はSKAdNetworkの使用が不可欠となり、ユーザー情報の収集・処理に対するまったく新しい考え方とアプローチが必要になります。

パート 2

新たなプライバシーポリシーがマーケターと業界全体に与える影響

業界全体で見ると、これらの変更点は、ユーザープライバシー重視のエコシステムへ現在進行形で移行するプロセスの一環であることがわかります。Appleは、プライバシーは基本的人権であり、同社の製品はこの考えに基づいて設計されていると述べています。Adjustはこのフレームワークを全力で支持し、Apple、クライアント、業界と連携してユーザープライバシーを守るための取り組みを行うとともに、ユーザーの自身のデータに関する決定権を尊重しています。

しかし、プライバシー優先のポリシーは、ユーザー獲得(UA)やアトリビューション、またはキャンペーンパフォーマンスに関するデータの精度や正確さが低下する可能性を意味します。これは、広告主がユーザーレベルのデータやキャンペーン指標についての詳細な情報を得ることが難しくなるためです。IDFAを使用したユーザー獲得では、マーケターは正確なキャンペーンデータに基づいて成果を可視化することで、予算を投入するチャネルやパフォーマンスの最適化に関する意思決定を行います。通常使用されるKPIは、0日目/1日目の継続率、ユーザーのLTV、ROI、ROASなどの特定の指標です。この方法を採用しているマーケターの多くは、非常に少ない予算でキャンペーンを運用しており、スケールの拡大といってもわずか数パーセントにすぎません。一方で、SKAdNetworkでは上記のKPIがサポートされていないため、このレベルのインサイトを得ることができません。そのため、以前はモバイルアプリのパフォーマンスマーケティングにおいて焦点を当てるべきチャネルを把握することが比較的簡単だったものが複雑になり、ポストIDFA時代においてUAマネージャーがより重要になるという点が注目されるようになりました。

高いオプトイン率を獲得していれば、キャンペーンごとのKPIをしっかりと把握し、慣れ親しんだツールや手法をすべて活用できるため、より効率的に最適化ができます。また、オプトイン率が高いほど、同意していないユーザーのデータを確定的に処理するためのデータが取得できます。

SKAdNetworkで計測しているその他のインベントリは、計測・管理がより複雑です。では、これがアプリ内広告やアプリ内購入、サブスクリプションという最も一般的な収益化モデル3つにどのような影響を与えるかを見ていきましょう。

  • アプリ内広告
    アプリ内広告で主に使用されるのは、コンテクスチュアル広告とターゲティング広告の2つです。コンテクスチュアル広告(非ターゲティング広告)は対象とするユーザーがそこまで絞られていない一方で、ターゲティング広告はIDFAに基づいて特定のユーザーに表示されます。より多くの広告費用がかかるものの、コンバージョン率も高く、一般的に人気の広告タイプです。iOS 14.5以降、ユーザーがオプトインしない場合はIDFAが取得できないため、ターゲティング広告は表示できません。トラッキングからオプトアウトした後、ユーザーに以前より多くの広告が表示されるようになるのはこのためです。コンテクスチュアルターゲティングを活用できないことによる収益の減少分を補うために、多くのパブリッシャーはよりたくさんの広告を表示しています。
  • アプリ内購入とサブスクリプション
    ゲームアプリ内でのゴールドやコインの購入をはじめ、ヘルス&フィットネスアプリや仕事効率化アプリでプレミアム機能を利用したり、サブスクリプションに登録するなど、ユーザーはさまざまなアプリで製品やサービスに課金しています。ここでは、iOS 14.5以降の変更点は収益に直接影響しないものの、オプトアウトしたユーザーのアトリビューションができないことにより、広告主はキャンペーンの成果を計測したり、LTVとパフォーマンスの高いユーザーの流入元を把握したりすることが難しくなります。

とはいえ、iOSでは引き続き広告マーケティングが行われており、今後もなくなることはありません。マーケティングを取り巻く状況が変わっても、獲得できるユーザーは常に存在します。これが、AdjustがATTとSKAdNetworkをサポートし、キャンペーンの最適化と、アクションにつながる指標を重視したソリューションを提供している理由です。Adjustは、クライアントが引き続き成長に向けた取り組みに集中できるようサポートしていきます。

プライバシーとデータ保護はモバイル広告業界の中心にあるものです。Adjustは広告主に対し、ATT frameworkとSKAdNetwork frameworkを組み合わせて、同意に基づいたユーザーレベルのデータをできる限り多く取得し、ユーザー獲得、アトリビューション、計測に対する包括的なアプローチをとることをおすすめします。

パート 3

AppTrackingTransparency、ユーザー同意、オプトイン

前述したとおり、iOS 14.5以降のアトリビューション計測とキャンペーン計測において悩みの種となるのが、IDFAを取得できない点です。AppleのATT(App Tracking Transparency)は、ユーザーがトラッキングに同意(オプトイン)した場合に、アドターゲティングと計測を可能にするフレームワークです。より多くのユーザーが同意すればするほど、効率的に計測できるデータのプールが大きくなります。さらに、同意したユーザーにはターゲティング広告が表示され、そのデータをconversion value、予測アナリティクス、SKAdNetworkキャンペーンの戦略に活かすことができます。

ポストiOS 14で正確なデータを取得するには、強力なオプトイン戦略が必要です。ユーザーの同意を得ることだけに優先的に取り組んでも上手くいくとは限りませんが、重要なのは確かです。オプトイン率が高いと、アトリビューションが受ける影響を最小限に抑えることができるほか、競争優位性を確保できます。同意するユーザーが多いほど良いのはもちろん、オプトイン率やオプトインユーザーの割合が比較的低い場合でも成功への手がかりとなり得ます。

ユーザーのATTオプトイン率が高くなればなるほど、マーケターはより多くの確定的データを受け取ることができます。これらのデータは、Adjustのモデリング専門家が開発・改良する機械学習アルゴリズムのロジック改善にも役立っています。機械学習アルゴリズムのロジック改良は、SKAdNetworkと同意ユーザーの集計データから成長機会を予測するのに役立つpLTV(予測顧客生涯価値)などの予測指標KPIを使用したいと考えているチームにとって肝心な要素です。また、受け取る確定的データの量が多ければ多いほど、pLTVのスコアは優れたものになります。

オプトイン率の向上と同意フローの構築、さらに全体的なUX戦略の一環として効果的なオプトインを設計するにあたり、重要なポイントがいくつかあります。以下に、ATTポップアップへのユーザーのレスポンスに大きな影響を与える変数を紹介します。

  • タイミング: はじめに特定かつ定義する必要があるのは、オプトインリクエストを表示する具体的なタイミングです。通常は、オンボーディングフローの中でプロンプトを表示するのが最も効果的だということがわかっています。
  • メッセージング: ATT frameworkプロンプトの前にプリ パーミッション プロンプトを表示することで、ユーザーはAppleのポップアップを受け入れやすくなります。2〜3行の短いテキストで、オプトインすることのメリットを強調しましょう。また、ATTプロンプトの1つ目のテキストは変更できないものの、2つ目のテキストはアプリに合わせてカスタマイズすることを強くおすすめします。データプライバシーに関するあらゆる懸念を払拭し、オプトインするべき理由を伝えるためのチャンスとして活用してください。
  • サイズ: 通常、ユーザーはモーダルウィンドウではなく、フルスクリーンのプリ パーミッション プロンプトに反応します。操作の邪魔だと感じやすいモーダルウィンドウとは違い、プリ パーミッション プロンプトはよりシームレスなユーザー体験を提供するためです。
  • ボタンの配置: 行動喚起(CTA)ボタンの配置を変えるだけでも、ATT同意率の向上に効果があります。シンプルなテキストが書かれたボタンを横に並べましょう。「同意する」オプションを右側に配置すると最も効果的です。

完全に最適化されたオプトイン戦略の構築に加えて、オプトインを含む全体的なUX戦略を定義し、繰り返しテストを行うことも重要です。いつどこでどのように同意プロンプトを表示するかに関するUXアプローチを設計・実装しただけで終わりではありません。Adjustが、ABテストやランダム化比較試験などを行ってテストとトライアルを繰り返すことを重要視しているのはこのためです。

パート 4

iOS 14.5以降のマーケティングとSKAdNetwork

オプトインしないユーザーに対して、マーケターは、SDK機能とAPIコールを組み合わせたAppleのSKAdNetworkを、アプリのインストールや再インストールのアトリビューションを行うためのソリューションとして使用できます。Appleはプライバシーを重視した基本的なアトリビューションを提供することを目指しており、広告主はSKAdNetworkを無料で使用できます。また、Appleのプライバシーガイドラインに則って設計されているため、ユーザーの同意は必要ありません。SKAdNetworkからのアトリビューション情報は、デバイスからAppleへ、そしてアドネットワーク、開発者、Adjustをはじめとするモバイル計測パートナー(MMP)へと送られます。クライアントは社内でSKAdNetworkを実装するか、Adjustの実装サポートをご利用いただけます。ただし、Adjustと連携している場合でもアトリビューションを行うのはAppleである点にご注意ください。Adjustが行うのは、データの集計です。

SKAdNetworkは、24時間のタイマーとともに下流の指標の6ビットで構成されたスペースを提供します。これは0〜63の間の数字となります(またはバイナリーの000000〜111111の間)。これは「Conversion value」とも呼ばれ、バイナリーで表現可能なあらゆる値に割り当てることができるほか、どのイベントを含めるかはアプリが決定できます。Conversion valueがアプリ内で定義された6ビットのコードに更新されるたびに、タイマーがさらに24時間延長されます。このconversion value期間の有効期限が切れると、次のアトリビューションの24時間がトリガーされます。この仕組みには、インストールの時間を分かりにくくすることで、イベントのトリガーを個別のユーザーに紐づけできないようにするという考え方があります。その後、データはSKAdNetworkによって集計された状態で共有されます。きめ細かいユーザーレベルのデータは含まれません。

もう少し簡単に言うと、conversion valueは0〜63の間の数字で、ビットロジックを使用して最大6つのイベントを計測するのに使用されます。それぞれのconversion valueは特定の条件に紐付けられており、解凍するとレポートのための有意義なKPIが得られます。

このシステムを最大限活用するには、広告主とマーケターは最初の24時間を重要視する必要があります。あらゆるデータを活用してユーザー行動の全体像をはっきりさせることで、予測を立てたりセグメントを特定したりできます。重要なのはユーザーを獲得することだけでなく、最初の24時間のユーザー行動から、その後のユーザーの動きを把握することです。多くのアプリは、重要なイベントのコードを完全に書き直し、戦略を練り直す必要があるでしょう。なぜなら、これまで最大7日分のイベントを計測してきたとしたら、SKAdNetworkではそれができないからです。

SKAdNetworkを使用したマーケティングが成功するかどうかは、conversion value戦略をどう構築するかに左右されます。次のパートでは、クライアントがconversion valueスキーム(イベントベースと値ベースの両方)を理解し、構築するためにAdjustがどのようなサポートを提供しているかを説明し、マーケターと開発者がアプリにとってより適切なソリューションを特定する方法を紹介します。

パート5

iOS 16と最新のアップデート

iOS 14からiOS 14.5の発表とATTのリリースは、iOSでのアトリビューションとポストインストールのイベント計測に大きな変化をもたらしました。2021年9月にリリースされたiOS 15は、iOS 14ほどの衝撃は業界に与えなかったとはいえ、さらなるユーザーのプライバシー強化を目指すAppleによって重要な変更点と新機能が導入されました。

リリース時点では、SKAdNetworkで取得したポストバックのコピー(アプリインストールが発生する際のアトリビューションコール)はアドネットワークだけでなく、開発者も受け取ることができます。モバイルアプリ業界はこの変革を歓迎。インストールからインストール後までのデータにアクセスできるため、開発者がより透明性の高いデータを得られるとして好意的に受け止められました。

iOS 15のアップデートにおいて、モバイル広告主の視点から見て最も関心度の高い変更のひとつがプライベートリレーです。SafariでWebを閲覧するiOSユーザーのプライバシー保護を目的に設計されたプライベートリレーは、Appleのサーバーを介してすべてのネットワークトラフィックをリダイレクトし、ユーザーのIPアドレスを非表示にします。つまり、ユーザーを追跡してユーザープロフィールを作成することはできません。AppleがどこかのポイントでプライベートリレーをデフォルトでONにする可能性があると言われています。仮にそうなった場合、すべてのSDKトラフィックがプライベートリレーを介してルーティングされるため、ユーザーとキャンペーンパフォーマンスに関するインサイトを得る仕組みがより複雑になります。今後もAdjustは、Appleのアップデートを注視し、成長を促進しながらもプライバシー優先のソリューションに関する最新情報をいち早くお届けできるよう、取り組んで参ります。

また、iOS 15でリリースされた「メールプライバシー保護」機能では、Appleの「Mail」アプリユーザーはIPアドレスと位置情報を非表示にしたり、メール開封のトラッキングを匿名化したりできます。これらのオプションがONになっている場合、マーケターはメール開封などの情報にアクセスできなくなります。プライバシー関連のもう1つの新機能「メールを非公開」では、ユーザーはオンラインフォームの入力時に自動生成されるアドレスで、自分のメールアドレスを非表示にするかマスクすることができます。

さらに、UA戦略とキャンペーンパフォーマンスの向上を目的としたiOS 15の新機能には、カスタムプロダクトページとプロダクトページの最適化があります。マーケターと開発者はアプリストアでカスタムページを作成でき、最大35のユーザーセグメント向けにターゲティング・最適化したバージョンをテストし、その結果を関連するUAキャンペーンに紐付けることができます。

パート6

マーケティングの変化に対応するAdjustソリューション

Adjustは、iOS 14.5以降の世界で、クライアントがデータ主導の意思決定を行えるようにサポートすることを目標に掲げています。弊社が目指すのは、クライアントがSKAdNetworkのマーケティング戦略とiOS全般への対応を総合的に理解し、自信を持って取り組めるようにサポートすることです。iOS 14.5以降のエコシステムにおいて、Adjustが提供する3方面からのアプローチにより、クライアントとパートナーはエンドユーザーのプライバシーを守りながら、強力なユーザーレベルのデータを引き続き活用できます。

2020年7月に新たなプライバシーポリシーが発表されて以降、Adjustはプライバシー優先の思考とガイドラインに基づき、クライアントへの影響を最小限に抑え、ビジネスを強化するための取り組みを続けてきました。Adjustが現在クライアントと構築・テストを進めているコンバージョンモデル、conversion valueソリューション、そして包括的なSKAdNetworkソリューションにより、継続的な成長を維持、促進するのに役立つローデータと集計データにアクセスできます。これを達成する手助けとなるのが、以下の3つの柱です。

  1. Convert:ユーザー同意を最大化
    正確なデータを取得するには、第一に強力なオプトイン戦略が必要です。オプトインのベストプラクティスを基にユーザーのATT同意率を最大化し、アトリビューションへの影響を最小限に抑えるとともに、AppTrackingTransparency frameworkで以前と同じようにユーザーレベルのデータを受け取って競争上の優位性を確保しましょう。
  2. Compute:アクションにつながるデータポイントを算出
    Adjustのコンバーションモデルは、同意したユーザーのデータポイントを計算し、同意しなかったユーザーのデータのパフォーマンスを正確に予測します。Adjustのソリューションはオプトインしたユーザーからの確定的データポイントを取得・活用して、データセットとユーザー層全体のパフォーマンスを向上させます。
  3. Collect:透明性のあるインサイトを収集
    無料でご利用いただける上、高い柔軟性を備えたAdjustのSKAdNetworkソリューションにより、収集したデータの用途について透明性を確保できます。マーケターは、DatascapeのSKAdNetwork管理画面やその他のツールによって、グラフでデータを可視化する方法をカスタマイズできます。

ポストiOS 14.5のマーケティングを成功させる鍵となるのが、ユーザーの同意率を最大限に高めるための戦略を立てることです。これにより、アトリビューションへの影響を最小限に抑えると同時に、長期戦略の構築と予算の割り当てがしやすくなります。同意したユーザーの確定的データがあれば、今までどおり自信を持ってマーケティングの意思決定ができます。また、同意するユーザーが多いほど良いのはもちろん、オプトイン率が比較的低い場合でも成功への手がかりとなり得ます。Adjustが強力なオプトイン戦略の重要性を強調するのはこのためです。収集可能なデータポイントは、同意しなかったユーザーのパフォーマンス結果を計測する上で欠かせません。

予測に使用されるモデルの機能と精度は、そのモデルに与えるデータと同等です。匿名化された少ない集計データポイントしかモデルに与えない場合、定義されたユーザーレベルのデータを与えた場合よりもモデルの精度は本質的に下がります。

iOS 14.5以降に対応するAdjustのソリューションは、ご契約中のプランにすべて無料で含まれています。また、ATTに同意しなかった(オプトアウトした)ユーザーに対してコストは発生しません。Adjustが提供するSKAdNetworkのサポートをすべてご利用いただくためには、最新のAdjust SDKがアプリに実装されていることが必須となります。最新のアップデートには、Apple Search Adsのアトリビューションのための新しいAdService Frameworkのサポートが含まれています。透明性を重視する考え方に基づき、Adjust SDKは常にオープンソースSDKとして公開されています。こちらのGitHubページよりご覧ください。

パート7

Adjustのソリューション:Conversion valueスキーマと柔軟性を提供する機能

Adjustは、conversion valueを活用した以下4つのモデル・メソッドを提供しています。

  • コンバージョンイベント: 個別のSKAdNetworkイベントを6つの使用可能なビットそれぞれに紐づけることで、どのイベントがどの組み合わせでトリガーされたかについて最大限の透明性が得られます。
  • 収益: 利用可能な64のconversion valueをすべて活用することにより、希望する収益タイプの条件を個々のconversion valueにマッピングできます。
  • アドバンスト設定: イベント、広告収益、購入データをマッピングして、ユーザーがインストール後にアプリをどのように操作するかについて、より詳細なインサイトを得ることが可能になります。また、高度にカスタマイズされた組み合わせを作成することで、利用可能な64のconversion valueをすべて活用できます。
  • CSVアップロード: 自社ツールでconversion valueを設定し、CSVとしてアップロードします。

簡単に言うと、「6つのコンバージョンイベント」のconversion valueスキーマでは、6つの異なるイベントを特定のconversion valueに紐付けることができます。これにより、SKAdNetworkデータセット内のインストール後の主要APIを完全に把握することが可能になります。以下の例では、ユーザーが「登録」し、「アプリ内購入」をして、「チュートリアルを完了」しています。各イベントに対応するビットは、1つひとつのアクションの後に更新され、すべてのイベントを計測するconversion valueを返しています。

「収益」および「アドバンスト設定」のスキーマはこれとは異なり、SKAdNetworkコンバーションポストバックで提供される64の値すべてを活用することで、conversion valueを完全に管理できます。この方法では、単にイベントのバイナリーステータス(完了または未完了)を読み取るのではなく、Adjustバックエンドは設定された範囲のイベントとインストール後の収益イベントを分析できます。これを基に、アプリ側のconversion valueが増えていくという仕組みです。クライアントは、イベント数、セッション数、アプリ内収益、広告収益、またはこれらを組み合わせたものを計測できます。アプリ固有のconversion value設定、または単一のconversion valueそれぞれに対して定義されたルールは、計測された行動に対して検証されて一致すると、アプリ側で関連するconversion valueの更新がトリガーされます。また、Adjustは単一のconversion valueレベルでさまざまな計測タイプを提供しています。これにより一般的に知られているconversion valueモデルを構築するだけでなく、アプリのニーズやユーザーのインストール後の行動に合わせて、非常に高度な設定を行うことができます。

SKAdNetworkデータのレポートでどちらのconversion valueソリューションを選択するかにかかわらず、AdjustはそれぞれのSKAdNetworkポストバックを取得し、そのconversion valueをイベントに変換し直して、管理画面上で有意義なわかりやすい指標として示します。

まとめ

iOS 16のリリースと今後

Appleの新しいプライバシーポリシーとiOS 14.5以降のリリースがもたらした変更点は、業界を大きく揺るがしてきましたが、ユーザー獲得やアトリビューションにおいては、多くの人が予想したほど深刻な影響を受けていません。業界リーダーとして、Adjustはこの動きを、iOSとApple、そしてエコシステム全体が進化し続けているサインとして捉えています。Adjustはパートナーとクライアントと緊密に連携し、今後も変化や新機能にいち早く対応していきます。

iOS 14.5以降のマーケティングとSKAdNetworkに対応するソリューションをクライアントに提供し、マーケターが自信を持ってデータ主導の意思決定ができるようサポートするというAdjustのアプローチと、ユーザープライバシーとデータの透明性に関する考え方は当初から変わりません。この理念は、エンドユーザーのプライバシーを守りつつ、強力なユーザーレベルのデータを引き続き活用していくことを重視しています。

今後、計測は機械学習によって得られた集計データを活用し、高い信頼度と透明性のある方法で行われるようになるでしょう。Adjustは、プライバシーがこの業界の根底にあることを理解しています。イノベーションが進歩するにつれて、ユーザープライバシーに関する仕様と技術的要件も同様に変化します。Adjust製品・ソリューションの中核には「ユーザーと顧客の利益」があり、iOS 16のリリースに際しても、この姿勢は決して変わることはありません。

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