SKAdNetwork(SKAN)とは

用語集 SKAdNetwork(SKAN)とは

SKAdNetworkとは

SKAdNetwork(SKAN)は、iOSで実施される広告キャンペーン向けにAppleが提供する、プライバシーを重視したアトリビューション・計測ソリューションです。SKAdNetworkの原型は、2018年5月、プライバシーを保護しつつアトリビューションを行えるオプションのAPIとして導入されました。しかし、2021年4月、iOS 14.5のリリースに伴ってAppTrackingTransparency framework(ATT)が登場したことにより、ユーザーはAppleの広告ID(IDFA)を介したユーザーレベルのデータの共有にオプトインし、同意することが求められるようになりました。そのため、SKAdNetwork(当時のSKAdNetwork 2)は、オプトインしていないユーザーを広告主がアトリビュートするための唯一の方法となったのです。

AppleのSKAdNetworkの仕組み

今回で4回目のイテレーションとなるSKAN 4は、簡単に言えば、iOSで広告キャンペーンを行うためのもうひとつの方法です。Appleはプライバシーを重視しアトリビューションを提供することを目指しており、広告主はSKAN 4を無料で使用できます。また、SKAN 4はAppleのプライバシーガイドラインに完全に則っているため、ユーザーの同意は必要ありません。実際には、SKANからのアトリビューションデータは、デバイスからAppleへ、そして広告ネットワーク、開発者、モバイル計測パートナー(MMP)へと送られます。

SKANは自社で実装することができますが、Adjustでもお客様を対象に実装のサポートをしています。お客様がiOSでキャンペーンの最適化を成功させ、成長を促進し続けられるように、受け取ったデータを最大限に活用できるようサポートします。

SKAN 3、そしてSKAN 4における計測期間1の1つの目ポストバック(詳細は以下参照)では、SKANは6ビットの下流の指標、つまり0〜63の数値(より具体的にはバイナリで000000〜111111)のためのスペースを提供します。この数値は、 conversion value またはSKAN 4の粒度の細かいconversion valueとして知られており、アプリで計測したいイベントまたは一連のイベントに割り当てることができます。

SKAN 3では計測期間は24時間、SKAN 4の1つ目のポストバックでは最大48時間で、情報を含むポストバックはSKAN 3ではconversion valueが最後に更新されてから最低24時間後、SKAN 4では24~48時間後にランダムに送信されます。このタイマーの目的は、インストールが行われた時間を難読化することで、イベントトリガーを個々のユーザーに紐付けできなくすることです。受信したポストバックにはconversion valueが含まれ、ユーザーレベルのデータやデバイスのデータは全く含まれません。

SKAdNetworkの計測における課題

従来のアトリビューション手法や、ATTのオプトインユーザーのiOSアトリビューションと比較すると、SKAdNetworkは計測に大きな困難と課題をもたらします。特に複雑なのは、SKANのポストバックで受け取ったデータから、正確でアクションにつながるインサイトを推定する方法を学ぶことです。簡単に言うと、これを行う上での主な問題点は以下のとおりです。

  • 全体的に精度が低い: SKANを使用したユーザー獲得(UA)、アトリビューション、キャンペーンパフォーマンスの計測は、広告主がユーザーレベルのデータや指標をあまり(または全く)確認することができないため、どれも著しく困難になります。IDFAによるUAと計測は非常に正確であり、マーケターがパフォーマンスを可視化し、非常に少ない予算でキャンペーンを運用することを可能にする一方で、SKANアトリビューションでは、マーケターは振り出しに戻って、集計データと予測分析に焦点を当てた新しいアトリビューション戦略を構築することになります。予測分析なしでは、ROILTVを本当の意味で計測することはできません。その理由は単純で、SKANのアトリビューションデータが限られているからです。
  • データ受信の遅延: ポストバックの遅延により、キャンペーンや予算配分の最適化を迅速に行うことができなくなります。SKAN 3では、ポストバックの遅延はタイマーが作動してから24時間後、SKAN 4では、計測期間1の終了後または各期間でlockWindowが適用された時点から24~48時間後、計測期間2と3ではこれらの時点のいずれかから24~144時間後です。
  • リエンゲージメントの計測が不可能: デバイスレベルまたはユーザーレベルのデータが収集・共有されないため、リエンゲージメントの計測やアトリビューションができなくなります。
  • Conversion valueを使用したマーケティング: SKAN 3では、広告主は0~63の6ビットの下流指標に基づいた1つのconversion valueで1つのポストバックを受け取ります。SKAN4では、3つの計測期間があり、そのうちの1つ目の期間には、SKAN3と同じconversion valueのコンセプト(現在は「粒度の細かいconversion value」と呼ばれる)または粒度の粗いconversion value(高・中・低)を含めることができます。計測期間2と3には細かい値を含めることはできませんが、粗い値を含めることができます。マーケターは、戦略的ビジョンと中核となるKPIを、アプリ内イベントとconversion valueにマッピング可能な収益範囲にリンクさせる方法を学ぶことが不可欠です。なぜなら、これがSKANデータからインサイトを推定し、iOSで持続的な成長を促進する唯一の方法だからです。

SKAN 3とSKAN 4でconversion valueがどのように機能するのか、またiOSアプリマーケティングのあらゆるレベルやステージでconversion valueをどのように活用できるかについては、SKAdNetworkをインハウスで管理するためのソリューションであるAdjust Conversion Hubをご覧ください。Conversion valueを論理的かつ戦略的にマッピングすることで、キャンペーン計測を高度に最適化し、成長につなげるための強力なツールとして活用することができます。

次の図は、0〜63のconversion value(粒度の細かい値)スキームが6ビットにマッピングされる際にどのように機能するかを視覚的に説明したものです。

SKAdNetwork 4.0(SKAN 4)のアップデートと変更点

2022年10月にiOS 16.1と同時にリリースされたSKAN 4では、iOSキャンペーンのアトリビューションと計測のための新機能が多数追加されました。
以下にその一部を紹介します。

  1. 計測期間とポストバックが1つから3つに: SKAN3が24時間の計測期間に基づく1つのポストバックを提供するのに対し、SKAN4は3つの計測期間(0~48時間、3~7日、8~35日)に基づく3つのポストバックを提供します。1つ目の計測期間では、タイマーが作動してから24時間〜48時間の間にポストバックが送信されます。一方、2つ目の期間では、ポストバックを24時間〜144時間遅延させることができます。
  1. 粒度の粗いconversion valueの登場: SKAN4では、SKAN3でおなじみの0~63のconversion value(現在は「粒度の細かい値」と呼ばれる)に加えて、粒度の粗いconversion valueを受け取れるようになりました。粒度の粗いconversion valueは、低・中・高に割り当て可能で、3つの計測期間のいずれにおいても受け取ることができます。粒度の細かい値は1つ目の期間でのみ受け取ることができます。しかし、プライバシーのしきい値の条件または粒度の細かい値が満たされない場合は、粒度の粗い値を受け取る可能性があります。理論的には、これによりnull値を受け取る可能性が低下します。
  2. 新しいクラウドの匿名性階層: これらの新しい階層によって、ボリュームの少ないキャンペーンでも、粒度の粗い値という形でアトリビューション情報を受け取ることが可能になります。階層1、階層2、階層3に割り当てられたインストールは、3つのポストバックをすべて受け取る可能性が高いものの、2つ目と3つ目には粒度の粗い値しか含めることができません。階層0に割り当てられたキャンペーンは1つ目のポストバックを受け取るのみで、最低限の情報しか得られなくなります。

クラウドの匿名性が高ければ、粒度の細かい値を受け取る可能性があり、匿名性が中程度であれば、粒度の粗い値を受け取る可能性があり、匿名性が低ければ、conversion valueがnullになるかマスクされる可能性が高くなります。

  1. キャンペーンID→ソースIDへ: SKAN 3のキャンペーンIDは「ソースID」に名称が変更され、階層的に機能するようになりました。キャンペーンIDには2桁の数字しか含まれておらず、最大100のオプションの計測が可能であるのに対し、ソースIDには4桁を含むことができ、最大10,000のオプションがあります。これらの数字を活用して、キャンペーンパラメーター(地域など)を追加し、さらなるインサイトを得ることが可能です。Conversion valueと同様に、ソースIDはクラウドの匿名性とリンクしており、キャンペーンに割り当てられた匿名性が高ければ高いほど、より多くの桁の数字を受け取ることになります。匿名性が高い場合は4桁すべて、中程度の場合は3桁、低い場合は2桁を受け取ることができます。
  1. lockWindowと柔軟な計測期間の長さ: SKAN 4で導入された新機能の1つであるlockWindowでは、広告主は3つの計測期間の任意の時点で「ロック」をかけることができます。例えば、1つ目の期間は最大48時間に設定できます。1つの計測期間につき1回しかポストバックを受け取ることができないため、広告主によっては24時間といった早い時間帯にロックをかけることがあるかもしれません。なぜなら、計測対象である重要なイベントがその時間帯に行われないと価値がないことが分かっているからです。この場合、ポストバックのタイマーを48時間ではなく、24時間〜48時間の間に設定することができ、より早くポストバックを受け取ることが可能になります。1つの計測期間につき、1つのlockWindowを適用できます。以下の図では、lockWindowが7日間にわたる計測期間2の5日目頃に適用されています。
  1. Webからアプリへのアトリビューション: マーケターはこれまで、iOSキャンペーンでWebからアプリへのアトリビューションを行うには、ATTフレームワークに頼らざるを得ませんでした。しかし、SKAN 4以降、アプリからSafariへのSKAdNetworkアトリビューションが可能になりました。

Adjustのソリューションで、SKAdNetwork 3とSKAdNetwork 4における強力なアトリビューションを実現

(SKANキャンペーンを効果的に最適化する方法の他に)クライアントからAdjustによく寄せられる質問の1つは、SKAN 3からSKAN 4に移行する方法とタイミング、さらに両方を同時に使用することが可能かどうかです。SKAN 3とSKAN 4は同時に使用することができますが、Adjustは、できるだけ早くSKAN 4でテストと計測を開始することをおすすめします。パブリッシャーがSKAN 4のシグネチャー広告に署名している限り、SKAN 4のポストバックを受け取ることができます。SKAN 3とSKAN 4の両方で署名している場合は、両方を受け取ることになります。

SKAN 4の計測機能を最大限活用するには、2022年11月にAdjustがリリースした業界初のSKAN 4対応SDKをインストールする必要があります。このSDKがないと、粒度の細かい値しか受け取ることができなくなり、SKAN 4の重要な機能である粒度の粗いconversion valueとlockWindowを使用できなくなります。その次のステップは、SKAN 4用にconversion valueを設定し、3つの計測期間すべてに対応できるようにすることです。これにより、データシグナルを活用し、インサイトを獲得して、戦略的な可能性を最大限に引き出すことが可能になるとともに、すべてをキャンペーン最適化のためのアクションに変えることができます。

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