近年、米国のスポーツベッティング業界はこれまでにない変革を遂げています。これを後押ししているのが急速に拡大している合法的なベッティング市場と、スポーツベッティング モバイルアプリの台頭です。現在、業界の生涯総収益は300億米ドルを超えており、業界の成長が衰える兆しはありません。
スポーツベッティングの合法化を進める州が増える中、事業者間の競争はさらに激化しています。他社に差をつけるため、多くのスポーツベッティングアプリがマーケティングに多額の投資を行なっており、テレビやデジタルデバイス、ラジオの各チャネルに数百万ドルもの資金を注ぎ込み、広告を展開しています。
しかし、この活況の陰に、業界全体が抱えるマーケティングの課題が潜んでいます。顧客獲得コストが高額で広告が飽和状態にもかかわらず、スポーツベッティングアプリのマーケターは、オムニチャネルのマーケティングミックスを使いこなしながら収益を出すというプレッシャーに直面しており、複雑な環境への対応を余儀なくされています。しかも広告宣伝への厳格な規制に対応しながら、州によってマーケティング戦略を変える必要があるため、さらに複雑さが増すのです。
このような困難な環境で成功を収めるには、様々な課題に対応できる能力が必要です。このブログでは、以下に関するインサイトと戦略をデータと共にご紹介します。
- 問題を解消して、ユーザー獲得の取り組みを最適化する方法
- 一貫性のあるクロスチャネル キャンペーンの実施方法をマスターする方法
- オフシーズンや主要イベントのない時期に、ユーザーのエンゲージメントを維持する方法
それでは、活発なスポーツベッティング市場で成功するための実践的な手法と業界自体が抱える課題、それを成長の機会に変える方法について詳しく見ていきましょう。
ベッティングブームの基本データ
Adjustのデータによると、米国における2023年のカジノ/ベッティングアプリのユーザーエンゲージメント数は、2月12日に開催されたスーパーボウルの前後が最高となり、1月16日の週と1月23日の週の両方で2023年の週平均を24%上回りました。つまり、スーパーボウルの約1週間後にセッション数が急増したことになります。また、1月23日の週と1月30日の週でも週平均を8%上回りました。
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興味深いことに、アプリ内滞在時間は特定のスポーツイベント中ではなく、クリスマスシーズンにピークを迎えています。2023年12月25日の週、米国のカジノ/ベッティングアプリのアプリ滞在時間は平均を5%上回り、過去最高を記録しました。
2024年は特にインストール数が急増しています。1月の第1週目に急激に増え始め、2024年度のこれまでの週平均を35%上回りました。1月8日の週は30%増を維持し、1月15日の週には35%増に到達しました。
2024年のスーパーボウル直前の週では、2023年と同様に、セッション数が平均を6〜8%上回る結果となりました。これは、スポーツベッティングを合法化する州が増えたことが、スポーツベッティング アプリのユーザー獲得(User Acquisition)にプラスの影響となったことを示唆しています。2023年に、オハイオ、マサチューセッツ、ケンタッキー、メイン、フロリダなどの主要な州が市場に参入しました。バーモント州とノースカロライナ州でも、合法化されたスポーツベッティングが2024年までに開始されています。
アプリマーケターと開発者は、このような新規ユーザーのエンゲージメントを効果的に促進し、アプリを継続して利用してもらう必要があります。まずは現在実施中のユーザー獲得キャンペーンを最適化して、オーガニックユーザーの流入を妨げないようにします。それから、これらのユーザーを維持する方法を検討します。
スーパーボウル2023とスーパーボウル2024のブログ記事 (英語)で、モバイルアプリのインサイトをご覧ください。
正しいデータから有効なチャネルを特定
何が有効なのかをただ推測する代わりに、データを詳細に分析して、バイアスの入っていない事実を特定する必要があります。アトリビューションバイアスが発生するのは、有料広告プラットフォームまたはアドネットワークが計測プロバイダーとして機能しており、トラフィックやコンバージョンを他のソースではなく、自社にアトリビュートするように誘導している場合です。このような利益相反によってキャンペーン指標に歪みが生じると、本当に成功をもたらしているチャネルや戦略はどれなのか、判断することが困難となります。
例えば、中立的なアトリビューションパートナーが存在しなければ市場内でバイアスが働き、広告なしでアプリをインストールする可能性があったユーザーに対し、広告が貢献したと誤った判断が下されるかもしれません。同様に、ユーザーが最後にクリックした場所を重視する「ラストクリック」バイアスでは、コンバージョンプロセスで重要な役割を果たしたユーザー行動を無視し、ユーザージャーニーの最後のタッチポイントを過大評価してしまいます。
このような落とし穴を避けるには、Adjustのようなサードパーティモバイル計測パートナー(MMP)を使用することをお勧めします。モバイル計測パートナーは、クリーンで偏りのないアトリビューションデータを提供します。これにより、正確で包括的なインサイトに基づいた意思決定が可能になります。まずアトリビューションデータを分析し、どのチャネルからどのようなオーディエンスが流入しているのかを確認しましょう。1人のユーザーがコンバージョンに至るまでに、いくつの広告に触れたでしょうか。好きなスポーツイベントが終わり、次回のイベントが始まるまでに離脱したユーザーは、通常どのチャネルを利用してアプリを再インストールするのでしょうか。これについては後に解説します。
次に、ブランド認知度の向上からインストールまでのプロセス、ベッティング、その他のアプリ内購入(IAP)について、チャネルがどのように連携しているのかを理解し、全体像を把握します。一部のチャネルは、特定のスポーツとより効果的に連携できるかもしれません。例えば、2023年のNFLシーズン前にYouTube TVがNFL Sunday Ticketの放映権を獲得しており、アメフトファンにリーチするための主要チャネルとなっています。
またコネクテッドTV(CTV)では、テレビ広告の魅力と正確なデジタルターゲティングを組み合わせた形式で、幅広いオーディエンスに配信できます。コネクテッドTV広告は、商品購入を考えているユーザーのブランド認知度を高めることに役立ちます。
コネクテッドTVの価値はそれだけにとどまりません。特にAIなどの高度な技術と組み合わせれば、堅牢なパフォーマンス機能を提供できるようになります。 YouTubeはGoogle AIを使用して広告の表示時間と頻度を最適化しており、視聴者の行動に基づいて最適なタイミングで広告を配信します。これにより、煩わしさが軽減されてエンゲージメントの可能性が高まりますが、これは重要なゲームプレイ中にストリーミングの中断が許されないスポーツベッティングアプリにとって必須となる要素です。
さらに、コネクテッドTVで広告フォーマット数が増えれば、ユーザーが広告情報を携帯電話などの2つ目のデバイスに送信できるようになり、商品やサービスを認知してから行動に移すことがシームレスに可能となります。つまり、視聴者はテレビでスポーツを視聴しながら、スマートフォンでアプリの詳細を確認できるのです。
主要なユーザー特性を特定してスマートなターゲティングを実施
ユーザー獲得予算を有効に利用するには、価値をもたらすユーザーを惹きつけることが重要です。まず、顧客生涯価値(LTV)が高い ユーザーデータを分析します。また、どのようにエンゲージメント に至るのか、どのようにアプリを使用するのかを知っておく必要があります。
それには、次のようなユーザー行動のパターンを見つけます。
- 特定のスポーツへの関心
- 好まれるエンゲージメントの時間帯
- 特定のプロモーションに対するレスポンス
- シングルベット、パーレー、ライブイン プレイベッティングなどのユーザーの好み
このようなユーザーの特徴を見極めることで、類似ユーザーを惹きつけるための詳細なターゲットオーディエンスを設定し、戦略を策定できます。その後、ターゲットオーディエンスをセグメント化して、対象ユーザーに最適な、カスタマイズされたマーケティング活動を展開します。モバイル計測パートナーと連携することで、ユーザー獲得、キャンペーン分析、最適化のプロセス全体を通して使用できる信頼性の高いデータが得られるのです。AdjustのDatascapeは、すべてのデータを1ヶ所に集約して見やすく可視化し、必要に応じてローデータを提供するため、ユーザーは自信を持って迅速に意思決定を下すことができます。また、健全なアトリビューションによって、どのチャネルが最も価値のあるユーザーを提供していて、より多くのユーザーを獲得するためにはどこに予算を割り当てるべきかを常に把握できるようになります。
一貫したクロスチャネルキャンペーンでユーザーを惹きつける
先に触れましたが、まず、無料で獲得したオーガニックユーザーに広告費が支払われてないかどうかを確認することが重要です。これはインクリメンタリティテストで簡単に実施できます。AdjustのAIを活用したインクリメンタリティ ソリューションのInSightでは、市場に合わせてカスタマイズされた合成テストグループとキャンペーンを比較します。その結果によって、実施中のペイドキャンペーンが本当に価値があるのか、オーガニックユーザーとなるはずのユーザーを獲得しているだけなのかを正確に判断することができます。
次に、価値を増幅させることを目的とした複数のユーザー獲得キャンペーンを最適化します。これらのキャンペーンを改善する場合、次のような重要なポイントを考慮します。
- 最も価値の高いユーザーの特徴と行動は何か
- ファネルの上部では、どのチャネルが効果的か
- コンバージョンに効果的なチャネルはどれか
- キャンペーンにおいて、クロスチャネルで一貫性のあるストーリーをどのように伝えられるか
これらを検討することで、適切なユーザーが適切な チャネルでターゲティングされるため、マーケターは効率的かつ効果的な、投資利益率(ROI)の高いキャンペーンを構築できるようになります。
エンドツーエンドの調和を保持
クロスチャネルの一貫性を達成するには、すべてのプラットフォームで統一されたストーリーを伝えることが重要です。複数チャネルで存在感を示すことだけが重要なのではありません。ユーザーが広告を認識してから、検討およびコンバージョンに至るまで、シームレスなユーザー体験を提供することも重要なのです。各タッチポイントは最後のタッチポイントを強化し、ユーザーがファネル内でスムーズに移行できるよう支援しなければなりません。これを実現するには、複数のチャネルを横断して、メッセージやクリエイティブ、タイミングを連携する必要があります。つまり、ユーザーがコネクテッドTVで広告を見たり、ソーシャルメディアの投稿にエンゲージしたり、検索広告をクリックしたりするたびに、常にインストールへ導くメッセージが表示されるということです。
エンゲージメントと継続率: オフシーズンのセッション継続
スポーツベッティングアプリでは、ユーザーの離脱率が高くなる傾向があります。これは、好みのスポーツイベント後にユーザーの興味が失われ、アプリを完全にアンインストールすることがあるためです。しかし、戦術的なエンゲージメント戦略を導入すれば、マーケターは継続的にユーザーのインタラクションを促し、ユーザーはアプリの価値を感じ続けるようになります。
この目的は、過度なギャンブルを推奨するなど非倫理的な行為に頼ることなく、ユーザーに関連性のあるコンテンツや、ベッティングユーザーの共感を得られるエクスペリエンスを提供することです。これに関する2つの重要な戦略がパーソナライゼーションとゲーミフィケーションです。
パーソナライゼーションの力
プッシュ通知 は、ユーザーをリエンゲージメントするための強力なツールです。しかし、パーソナライゼーションの施策はアラートにとどまらず、より没入感があり魅力的な体験を提供する方向に実施されるべきです。スポーツベッティングアプリは、ユーザーの興味関心、ベッティング行動、ユーザー属性に基づいてユーザーをセグメント化することで、複数のタッチポイントにまたがってターゲティングを絞ったユーザー体験を提供できます。
例えば、ユーザーのベッティングの好みに合わせてアプリ内メッセージをパーソナライズし、ユーザーがアプリを起動した際に、お気に入りのスポーツやチームに関連する特別なオファーやコンテンツを表示させることができます。Eメールキャンペーン を利用すれば、ユーザーに表示されるイベントや限定プロモーションなどをベッティング履歴に合わせてカスタマイズすることが可能です。
ゲーミフィケーションでエンゲージメントをレベルアップ
スポーツベッティングアプリは、ユーザージャーニー全体にゲーミフィケーションの要素を取り入れることで、エンゲージメントを大幅に向上させることができます。ゲーミフィケーションとは、ポイント、バッジ、順位表、チャレンジなどのゲームに似た要素を、アプリなどゲーム以外の用途を持つものに実装することを指します。ゲーミフィケーションの目的は、ユーザー体験をよりインタラクティブで楽しいものにすることです。競争や目標達成、好奇心を刺激されるなどの自然な動機付けによって、ユーザーはより積極的にアプリを利用するようになります。ここで最も重要なのは、思慮深くかつ倫理的であり続けることです。ユーザーを不健康なギャンブル習慣や依存関係に陥らせることが目的ではありません。
スポーツベッティングアプリにゲーミフィケーションを倫理的に適用する事例をいくつか紹介します。
- スピン トゥ ウィンゲーム: スピン トゥ ウィンのようなゲームのベッティング要素を取り除き、ゲームのエンターテイメント性とトークンなどの報酬を提供します。獲得したトークンは、限定コンテンツへのアクセス、広告スキップ、お気に入りチームのスキンでアプリの外観や操作性をパーソナライズ、仮想イベントでの割引購入などに利用できます。
- デイリーチャレンジとクエスト: 仮想スポーツのシミュレーションやスポーツコンテンツエンゲージメントなど、ベッティング以外のタスクを導入して、アクティビティを完了するためにユーザーが定期的にアプリを利用するよう誘導します。ポイントやバッジ、その他の金銭を伴わない報酬を提供して、継続的な参加を促します。
- ランキング表: ゲーム結果の予測や、スポーツに関する豆知識の質問に答えるなど、ベッティング以外の課題にチャレンジしてもらい、進捗状況をユーザーが把握できる順位表を作成します。これにより、ユーザーは競争意識とコミュニティへの帰属意識が高まり、ランキング向上のために定期的にエンゲージするようになります。
- 目標達成バッジ: 異なるスポーツを探索したユーザー、ギャンブルに関する教育モジュールを終了したユーザー、またはアンケートに回答したユーザーにバッジを付与します。アンケート回答はユーザーを理解することにも役立ちます。プロフィールにバッジを表示することでユーザーは達成感を感じ、継続的なインタラクションが促進されます。
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時代を先取りするための3つの鍵
- オプトインに向けてオンボーディングを最適化: iOSのオンボーディングにおいて、App Tracking Transparency(ATT)経由でユーザーの同意を得ることは、真にパーソナライズされたユーザージャーニーを構築し、効果的なリターゲティングとリエンゲージメントを行う上で非常に重要となります。現在、AdAttributionKitはリエンゲージメントのアトリビューションを提供していますが、IDFA経由でユーザーが同意済みのファーストパーティーデータは粒度が高いだけでなく、次世代計測ソリューションを推進する機械学習やAI技術への情報提供にも活用できるものです。パーソナライズ化されたサービスを受けたり、広告表示を減らしたり、アプリ体験を向上するなど、オプトインのメリットを明確に説明する優れた設計のプリパーミッション プロンプトを実装することで、オプトイン率を大幅に向上できます。詳細については、iOSのオプトインの確保とプロンプト設計のヒントとコツを併せてご覧ください。
- 自動化で作業負担を削減: モバイルマーケティング オートメーションツールで定常タスクを自動化すれば、削減できた時間を戦略的な意思決定に費やすことができます。Adjust Automateを使用して、入札価格と予算の調整およびマルチチャネルデータの集計を自動化することで、チームはキャンペーンの改善やクリエイティブの開発など、重要な作業に集中できるようになります。
- モバイルアドフラウドを事前に防止: 広告に関する不正請求を防ぐには、堅牢な不正防止対策が欠かせません。Adjustの不正防止機能は、不正なインストールをリアルタイムで拒否し、データを正確かつ実用的な状態に維持できます。クリーンなデータを活用すれば、キャンペーンのパフォーマンスを正しく分析することが可能です。また、マーケティング予算を効果的に活用して、不正アクティビティの代わりに本物のエンゲージメントとユーザー獲得に注力できるようになります。
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スポーツベッティング業界は新たな市場で拡張をつづけており、成長の機会が広がっています。データに基づいたインサイトを活用し、ユーザー中心のアプローチに焦点を当てることで、スポーツベッティングアプリは障害を克服するだけでなく、競争の激しい市場で成功を収めることができるでしょう。重要なのは、市場の進化に俊敏に対応し、増加するユーザーベースの需要に対応するために戦略を継続的に見直すことです。
スポーツベッティングアプリの可能性を最大限活用するため、製品デモにお申込みください。Adjustのソリューションによって複雑な問題に対処し、アプリの可能性を広げることができます。
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