ウォールドガーデン | Walled garden

ウォールドガーデン | Walled garden

ウォールドガーデンとは

ウォールドガーデンとは、パブリッシャーまたはテクノロジープロバイダーがハードウェア、アプリケーション、コンテンツ、ユーザーデータへのアクセスを制御する閉鎖的なプラットフォームです。この環境では、広告の購入や配信、計測、レポートに至るまで、あらゆる広告活動が特定のプラットフォームのエコシステム内で行われます。

広告主はキャンペーンの運用に、プラットフォーム独自の製品、サービス、テクノロジーを使用しなければなりません。この仕組みでは、特定のユーザーやデバイスに紐づけなくてもキャンペーンの重要なインサイトが提供されますが、広告主がパフォーマンスを総合的かつ複数のプラットフォームを横断して測定することが制限されます。

ウォールドガーデンが存在する理由

ウォールドガーデンは、Google、Meta、Amazonなどの大手テクノロジー企業が、広告主にアクセス料を請求することで、膨大な量のファーストパーティーデータを収益化する戦略として登場したものです。この3社が生み出す広告収益の合計額は、他の広告テクノロジー企業すべての収益を合わせたものを上回ります。このような閉じた環境により、各企業は多額の広告費用を獲得し、消費者のプライバシーを保護しながら規制にも対応しています。また、すべてのやり取りをエコシステム内で管理することで、一貫性のある制御されたユーザー体験を維持することができます。ウォールドガーデンの設定や運用には大きな負担がかかるため、実際に導入できるのは主に大規模ブランドに限られます。

ウォールドガーデンの例

ウォールドガーデンの例をいくつかご紹介します。

Meta

2023年、Meta(旧Facebook)は、1ヶ月あたりのアクティブユーザー数(MAU)が39億8000万人という膨大なユーザーベースを背景に、1,310億ドルを超える広告収益を獲得しました。Metaは、「いいね」やシェア、投稿など、プラットフォーム上のリアクションを通じて幅広いユーザーデータを収集しています。広告主はアドターゲティングに、Metaのデータ管理プラットフォーム(DMP)デマンドサイドプラットフォーム(DSP)、およびダイナミッククリエイティブ最適化(DCO)を使用できますが、ローデータ自体にアクセスすることはできません。Metaは、誰に対して広告を見せるのか、データをどのように使用するのかを制御しています。企業はFacebook上でターゲットを定めた広告キャンペーンを実施できますが、そのユーザーデータを他のプラットフォームにエクスポートすることはできません。

Google

世界の検索エンジン市場で92%のシェアを占め、約18億人のGmailユーザーを抱えるGoogleは、2023年に2,378億6,000万ドルの広告収益を上げ、世界最大級のデジタル広告企業の一つとなりました。Googleは、検索エンジン、YouTube、Gmail、その他のサービスを通じてデータを収集しています。広告主はGoogle 広告を利用して、ユーザーの検索履歴、動画閲覧数、その他のデータポイントに基づいてターゲティングを行うことができます。ただし、これらのデータはGoogleのエコシステム内にとどまり、外部にエクスポートすることはできません。さらに、Googleは独自のブラウザー(Chrome)とオペレーティングシステム(Android)も開発・提供しており、自社エコシステムへの囲い込みをさらに強めています。

Amazon

2023年、Amazonの広告収益は469億ドルに上り、Amazonプライム会員数が2億3,000万人を超えたことが報告されました。Amazonは、購入履歴や閲覧行動を含むユーザー活動に関するデータを独自のEコマースサイトで収集しています。ブランドはAmazon広告を利用して、これらのユーザー活動に基づいて購買者をターゲティングできますが、データの利用はAmazonのエコシステム内に留まります。たとえば、スポーツ用品ブランドが以前にAmazonでスポーツ用品を購入したユーザーに広告を表示することは可能ですが、Amazonのエコシステムの外で購買者のローデータにアクセスすることはできません。

Apple

2023年、Appleはウォールドガーデンと厳格なApp Store環境を維持することで、全世界で65億1,000万ドルもの広告収益を生み出しました。Appleは、ハードウェア(iPhone、iPad、Mac)とソフトウェア(iOS、iPadOS、macOS)の両方を設計することでシームレスなユーザー体験を確保しています。App Tracking Transparency(ATT)などの機能によってクロスプラットフォームのトラッキングが一部制限され、ユーザーデータはAppleのエコシステム内に留まっており、サードパーティとの共有は最小限となっています。デベロッパーは厳格なガイドラインに従う必要があることから、アプリの種類やコンテンツが制限される結果となっています。また、デベロッパーは販売およびアプリ内購入に対して手数料を支払う必要があります。

ウォールドガーデンの例:Meta、Google、Amazon

ウォールドガーデンのメリットとデメリット

広告主やパブリッシャーにとって、ウォールドガーデンにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。まず、メリットについて詳しく見ていきましょう。

  1. 豊富なデータ: ウォールドガーデンは膨大な量のファーストパーティーデータを収集し、ユーザーの行動、好み、属性に関する詳細なインサイトを広告主に提供します。これにより、精度の高いターゲティングが可能となり、ターゲットオーディエンスに響く、ユーザーとの関連性の高いパーソナライズされた広告キャンペーンを実施できます。
  2. ユーザープライバシーを保護: ウォールドガーデンは、閉ざされたエコシステム内にユーザーデータを留めることで、個人情報がサードパーティと共有されるのを防ぎ、ユーザーのプライバシーを保護します。これらのプラットフォームは、GDPRやCCPAといった厳格なプライバシー法や規制に準拠しており、ユーザーと広告主の双方に安全な環境を提供します。
  3. 正確な計測: ウォールドガーデンでは、すべてのデータ収集と分析が管理された環境内で行われるため、正確で信頼性の高いキャンペーンパフォーマンス指標を獲得できます。キャンペーン効果を計測するための包括的なレポートツールにより、広告主は最適化を容易に行い、大きな成果につながげることができます。
  4. クロスデバイス計測:ウォールドガーデンでは、ユーザーがスマートフォン、タブレット、デスクトップなど複数のデバイスをログインしたまま利用すると、デバイスをまたいでユーザー行動を計測できます。これにより、広告主は一貫性のあるユーザーエンゲージメント戦略を実現し、ユーザージャーニー全体を把握することが可能になります。

ウォールドガーデンを利用する際の課題は以下のとおりです。

  1. データ制限と連携の課題: 広告主はウォールドガーデンからローデータをエクスポートできないため、他のプラットフォームでの活用や個別の分析が制約されます。複数のチャネルにまたがるユーザー行動を包括的に把握することが難しくなり、分析においては、偏った見解しか得られない可能性があります。ウォールドガーデンは高精度なターゲティングで広告を実装する一方、キャンペーンのリーチ、透明性、連携が制限されます。
  2. 複雑性: ウォールドガーデンから提供される匿名化された集計データは、分析に専用のスキルやツールが必要になることも多く、複雑で時間がかかます。また、閉鎖したエコシステム内でキャンペーンを設定・維持するには多くのリソースを必要となるため、特に技術的な知識が豊富でない小規模な広告主にとって大きな負担となります。
  3. 依存性: 広告主はウォールドガーデン専用のツール、アルゴリズム、レポートに依存するため、データやキャンペーンの成果を制御できなくなります。プラットフォームのポリシーやアルゴリズムの変更は、戦略やその効果に直接影響を与えますが、広告主はこのような外部の変化に抗うことができません。
  4. 競争力とイノベーションの制限: 閉ざされたエコシステムは、サードパーティのデベロッパーによる競合製品やサービスの創出が制限される可能性があります。参入の障壁が高すぎることから、小規模または新興企業の場合、どんなに革新的なサービスを提供する企業であっても市場への参入が困難です。

ウォールドガーデンとAdjust

Adjustは、ウォールドガーデンの課題を克服するためのツールと戦略を広告主に提供しています。Adjustは以下のことをサポートします。

  • ウォールドガーデンとの連携: Adjustでは、Meta、Google、Appleなど主要なウォールドガーデンと連携するAPIを提供しています。Adjustはこれらのプラットフォームとパートナー関係にあるため、それぞれのデータポリシーに従いながら、コンバーションデータやキャンペーンのパフォーマンス指標を受け取ることができます。
  • 集計データ処理: Adjustはウォールドガーデンから集計された匿名データを処理し、インサイトやパフォーマンス指標を提供します。Adjustのダッシュボードでは情報をまとめて表示できる管理画面が提供されており、広告主は複数チャネルのパフォーマンス指標を比較、分析することができます。
  • KAdNetworkのサポート: Adjustは、iOSのアトリビューションと計測に不可欠なAppleのSKAdNetwork(SKAN)をサポートしています。Adjustのソリューションにより、広告主はConversion valueスキーマを簡単に設定および管理し、SKANが提供する集計データを活用してキャンペーンの分析や最適化を効率的に行うことができます。
  • プライバシーとコンプライアンス: Adjustは、GDPRやCCPAのような主要プライバシー規制に対し、すべてのデータ処理が確実に準拠されるようにします。
  • マルチタッチ アトリビューション:Adjustを利用すれば、ウォールドガーデンに制約があっても広告主は複数のタッチポイントにわたってユーザージャーニーを計測できます。アトリビューション期間はレポートのパラメーターに合わせてカスタマイズできるため、正確な計測が可能となります。
  • 不正防止:Adjustの不正防止機能は、アドフラウドを特定して防止し、ウォールドガーデンを含むすべてのソースから受け取るデータの信頼性と有用性を確実なものにします。
  • データの充実と分析: ウォールドガーデンではローデータへのアクセスが制限されますが、AdjustのDatascapeは複数のソースからデータを1ヶ所に集約するソリューションを提供します。これにより、アプリの比較やカスタム指標、詳細な分析が可能となり、ユーザー行動やキャンペーンのパフォーマンスを包括的に把握できるようになります。さらに、Adjustのコホート分析ツールでは、詳細なローデータがなくても、時間経過に伴うユーザーグループのパフォーマンスを測定できます。

ウォールドガーデンの未来

ウォールドガーデンは、いくつかの重要な要因によって変化する可能性があります。たとえば、AmazonやMetaは広告主に対し、より多くのユーザー行動に関するインサイトを提供しようとしています。これは、Cookieを使わず、ユーザーの同意を得る仕組みに基づくものであり、今後有益になる可能性があります。

欧州委員会(EC)のデジタルマーケティング法(DMA)やデジタルサービス法(DSA)などの規制による圧力も、AppleやGoogleなどのプラットフォームに変化を促しています。デジタルマーケティング法は市場の独占と反競争的なビジネス慣行を制限することを目的とするもので、デジタルサービス法(DSA)はユーザープライバシー保護の強化と未成年者の保護のほか、人種、性別、民族など、慎重な取り扱いが必要なデータに基づく広告を制限するものです。

AIの進歩により、ウォールドガーデンは新機能の開発やユーザー体験の改善を通じて、ユーザーを自社エコシステム内に留めることが可能になります。これらの改善には、ユーザー体験のパーソナライズ化、広告ターゲティングの最適化、コンテンツ推薦の精緻化などが含まれ、プラットフォームをより魅力的で価値あるものにします。しかし、広告主やパブリッシャーが価値を見出せない場合、他の選択肢を模索することになるでしょう。このトレンドの顕著な例が、ヘッダービディングの台頭です。これはプログラマティック広告のメディアバイイングプロセスの一種で、パブリッシャーが広告サーバーへコールする前に、複数のアドエクスチェンジに対して自社の広告インベントリをオークションにかけることができます。これにより競争と透明性が高まり、パブリッシャーはより良い価格で広告枠を販売できるようになります。ヘッダービディングでは、パブリッシャーが制約の多いウォールドガーデン環境を回避し、広告枠をより効率的に収益化して、より自由に管理することが可能となります。

プライバシー規制の強化、透明性、ユーザーの同意に重点を置けば、ウォールドガーデンがより柔軟に物事に対処するようになり、さらに協調的な広告業界の形成につながるでしょう。

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