ブログ 中国発アプリの国外におけるパフォーマンス

中国発アプリの国外におけるパフォーマンス

アプリパフォーマンスの評価基準としてよく使われるのは、国内での実績です。そのためアプリのマーケターは拠点を置く市場を重視する傾向がありますが、それは海外市場にてより大きく成長する機会を見過ごすことにも繋がります。今回はその中でも中国に注目したいと思います。ただし、中国のマーケットではなく、中国で開発されたアプリが海外市場でどのようなパフォーマンスを発揮しているか、またどのアプリがどこで人気が出ているかまでをご紹介したいと思います。

3つの重要なポイント

  • インドでは中国のアプリが大人気!実は中国発のアプリが海外諸国の中で最も多くインストールされているのはインドです。2番目はインドネシア、3番目は米国です。
  • アプリ自体のシェアの上位3ヶ国は、米国、日本、インドネシアです。
  • カテゴリー別に分析すると、インドではユーティリティおよびエンターテインメントアプリのインストール数が最も多くなっています。インドネシア、米国、フィリピンではゲームアプリの人気が高く、米国はアプリ内課金が最も多いとされています。

調査方法

この調査は、中国国内よりも国外で多くインストールされたアプリのコホートを作成してフィルタリングしたことを除き、モバイルベンチマークと同じ方法で実施しました。サンプルの1,897のアプリのうち、1,205のアプリが中国国内よりも国外でより多くインストールされていることがわかりました。このコホートからデータを収集および平均化し、以下の図表を作成しました。iOSとAndroidのアプリの組み合わせから情報を取り出しています。

Adjustのデータチームは、中国発アプリの中でゲーム、ユーティリティおよびエンターテインメントのカテゴリーが海外で最も高いパフォーマンスを出しているということが判明したため、本レポートではこれらのカテゴリーに注目することにしました。

これら3つのカテゴリーにおいてインストールシェアにおける上位10ヶ国を調査しました。その後、上位10ヶ国に対して以下の点を算出しました。

  • 30日目における平均継続率
  • 最初の30日間でのユーザーあたりの平均セッション数
  • 最初の30日間でのユーザーあたりの平均イベント数
  • 最初の30日間でのユーザーあたりの平均トランザクション数

地理的な観点:全体的なパフォーマンス

それでは分布について見ていきましょう。当社サンプルのうち中国国内市場で利用可能なすべてのアプリから、アプリの分布ごとに上位5ヶ国を以下に示しています。特定の国で利用可能なアプリの数をパーセンテージで示しています。以下の表の中で、94.6%とは中国国内で利用可能なすべてのアプリのうち94.6%が特定の国(この場合は米国)で利用可能であることを意味します。つまり、中国発アプリのうち5.4%が米国では利用できないということになります。

利用可能な中国発のアプリのパーセンテージ

米国

94.6%

日本

77.9%

インド

77.5%

フィリピン

77.1%

英国

76.4%

当社のサンプルによると、94.6%のアプリが米国で利用可能だと言うことがわかります。利用可能な中国発アプリの国別シェアは、日本、インド、フィリピンが続いていますが、米国と比べてシェアはかなり低くなっています。これら3ヶ国では、アクセス可能な中国発アプリのパーセンテージはほぼ同じで、それぞれの分布の差は1%未満です。

つまり、当社のサンプルデータのうち4分の3以上が中国国外の上位数ヶ国で利用可能なことが分かりました。更にここから詳細について掘り下げていきましょう。利用可能な中国発アプリの中で実際にインストールシェアが最も高いのはどの国でしょうか。

中国発アプリの国外でのインストールのパーセンテージ

インド

10.0%

インドネシア

9.2%

米国

8.8%

ブラジル

7.9%

フィリピン

4.8%

この表は、中国発アプリの国外でのインストール全体の10%がインドで行われていることを示します。中国発アプリはいくつかの市場で躍進していますが、インストールは世界全体に広範囲に及んでいます。そのうち、2桁のシェアがあるのはインドのみです。中国発アプリの国外でのインストール全体において、インドのシェアに次いで9.2%を占めるのはインドネシアです。インドネシアにおける中国民族の人口が多いこと(インドネシアの総人口の23%)が一つの理由だと考えられますが、これは表の他の国にも当てはまると言えるでしょう。ここからは、以前から優れたパフォーマンスをあげているアプリのカテゴリーごとに、インストール数について詳しく分析していきます。

カテゴリーごとのインストールシェア

インストール数は極めて重要なメトリックであるため、最も人気の高い3つのカテゴリーを別々に分析したときに、中国発アプリのインストール数の国別のシェアがどのように変化したかを調査しました。中国国外でインストールされたすべての中国発ゲームアプリで、所定の30日間にわたって最もシェアが高かった国は次のとおりです。

インドネシアが圧倒的に一位となり、他の国と比べてはるかに多くの中国発アプリがインストールされています。近隣のタイとフィリピンも多くの中国民族が人口を占めており、アプリのダウンロード数も多く、それぞれ8%と7%と続いています。米国もインストール数合計の12%近くと2番目の多さであり、見過ごすことができません。米国のゲームユーザーは選択肢が多すぎる状態であり、_しかも、_ゲームユーザー数の比率を上回る数のゲーム開発会社がユーザーの注目を引こうと競い合っていることを考えれば、十分健闘していると言えます。MightySignal社によると、iOSだけでも200,000以上の独自のゲームメーカーがあり、これは25,000の独自のゲームメーカーがある中国での数の10倍にあたります。

中国発ユーティリティアプリの国外でのインストール数全体の13%近くがインドで行われています。ブラジル、米国がインドに近い数値で続いています。最後に、インドは中国発エンターテインメントアプリのインストール数でも1位になっています。ブラジル、米国、インドネシアの3ヶ国はすべて、これまで紹介したリスト内に2回以上入っています。ここからは、当社の国別のデータセットから見出した傾向について、もう少し詳しく見ていきます。

注目すべき動向

ゲーム分野では、上位に何度も同じ国が入ります。インドネシアが、インストール数、維持率、全体でのセッション数とイベント数のシェアで最も高いパフォーマンスを示しています。フィリピンもほとんどすべてのリストで上位近くに入っています。ミャンマーではインストール数は大きなシェアを占めていませんが、この地域のユーザーは他の国から群を抜く30日目における維持率を含めて、その他のパフォーマンスメトリックでは一貫して2位につけています。次に、これらの地域を米国およびロシアと比べて分析してみましょう。

インストールのパーセンテージ

30日目における維持率

ユーザーごとの平均セッション数

ユーザーごとの平均イベント数

ユーザーごとの平均収益イベント数

インドネ シア

15.20%

16.58%

84.10

18.68

0.026

米国

11.69%

8.69%

74.21

10.09

0.078

フィリピン

8.23%

13.25%

77.66

16.25

0.027

ミャンマー

3.92%

16.22%

83.64

18.05

0.024

ロシア

3.80%

5.43%

81.13

10.54

0.047

米国は一貫したインストール数を保持し、メトリックにおいてすべての国の中で上位3ヶ国に入っています。しかし、米国がリスト内の他の国と同じくらいのセッション数を返したり、イベント数をトリガーしたりしていないことから、米国のユーザーは相対的にそれほど長くゲームをしない傾向があります。これは、米国のアプリユーザーは新しいアプリをチェックするだけで、実際に継続利用はしていないということを示します。

中国のゲーム開発会社が、パフォーマンスと収益イベントの重要度に応じて、インドネシアを将来の国際的成長が積極的に見込めるパフォーマンスの高い市場であると捉えることは間違いではありません。バーティカルとして見ると、ミャンマーのパフォーマンスメトリックからミャンマーも興味深い市場として考慮できますが、(インドネシア同様)この地域では実際のトランザクション数が多くありません(30日間でのユーザーごとの収益イベント発生数はわずか0.02で、ドイツのパフォーマンスの半分)。高い維持率と低い収益パフォーマンスを考慮すると、これらの地域は収益化を広告収入に頼るフリーミアムモデルのゲームに非常に適しています。

高収益に関しては、米国は収益イベントの表で2番目に高く、パフォーマンスメトリックは低いものの(30日目における維持率が8%)、無料ゲームの場合は米国が総収益という観点から最も適した市場であると考えられます。このことは、エンターテインメントのパフォーマンスにも及びます。米国は、トランザクションが発生する唯一の大きな市場です。また、米国のユーザーは最も長期にわたって継続し、最もイベント数をトリガーしています(前述のとおり)。

ロシアでのインストール数は多くはなく、インドネシアとフィリピンのような市場より維持率も低いものの、アプリをダウンロードしたユーザーのアプリ内での購入率は高いことから、中国のアプリ開発会社は他の国よりもロシアのユーザーを獲得することに注力すべきであることを示しています。

インストールのパーセンテージ

30日目における維持率

ユーザーごとの平均セッション数

ユーザーごとの平均イベント数

ユーザーごとの平均収益イベント数

インド

16.95%

3.04%

41.66

3.81

0

米国

6.81%

3.71%

57.37

3.35

0.02

インドネシア

6.74%

データなし

44.30

3.84

0

ベトナム

2.96%

3.06%

42.65

3.89

0

ロシア

2.00%

2.50%

45.76

3.78

0.01

エンターテイメントカテゴリーについてさらに詳しく説明すると、インドはインストール数が最も多いものの、インストール後のパフォーマンスに関しては、他の市場のメトリックとは大きく異なります。インドネシア、ベトナム、ロシアは、全範囲において異なるパフォーマンスメトリックになっています。セッション数に対してイベント数が多い場合もあれば、その逆もあります。これは興味深い調査結果であり、中国製アプリはさまざまな国際的市場に目を向け、製品に最も適したかたちを模索するために世界中で実験を行っているという事実を裏付けます。

最も重要なポイント

米国は収益を見込める投資先ではありますが、ユーザー獲得コストは他の国を上回ります。パフォーマンスに関してはインドネシアとインドは両方とも興味深い市場であり、ユーザーがアプリと繋がっている一方で、収益に関しては低い数値であることは、その地域でアプリを発売しているとはいえ、アプリ開発会社にとっては関心度が限られていることを意味します。とはいえ、アプリを初めて発売する場合、米国とロシアのような高い収益の上がる市場で発売する前にソフトローンチからA/Bテストまでのテストを行う場所として、その地域でのパフォーマンスが高いという強みも併せて考えれば、インドネシアは最適と言えるでしょう。

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